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ファーストステップ司法書士19「あなたのその権利,消えます。【消滅時効】」

AはBに100万円を借りていました。Bも100万円を返してもらえることを知っていながら催促もしなかったため,Aはずっと返さないまま,支払期限から5年が経ちました。Aは今も100万円を支払う必要があるのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【166条】
 ①債権は,次に掲げる場合には,時効によって消滅する。
 [一]債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
 [二]権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
【152条】
 ①時効は,権利の承認があったときは,その時から新たにその進行を始める。

【1】意義

消滅時効とは,法律上権利を行使することができるにもかかわらず,権利者が権利を行使しない状態が一定期間継続した場合に,その権利を消滅させる制度です。債権は,権利行使できることを知った時から5年間を経過,または権利行使できる時から10年間を経過することで消滅時効にかかります(166条1項)。上記の事例で言うと,貸主であるBは100万円を返してもらえることを知りながら,支払期限からAに対する支払請求権を行使できたのに,5年間それをほったらかしにしていたわけですから,Aは消滅時効を主張することで,100万円を支払わなくてよくなります。しかし,債権者・債務者がその債権が存在することを前提とする行動を起こすことで,消滅時効のカウントを「0」に戻すことができますそれが「時効の更新」です。例えば,債務者が5年経過する前に,「あのお金はちゃんと支払います」というように,債権の存在を認めれば〔承認〕,それまでに進行してきた時効のカウントは「0」になり,そこからまた消滅時効のカウントが始まります(152条1項)。

【2】趣旨

時効の趣旨は「永続した事実状態の尊重」にあります。上記の事例で言えば,5年間続いている,Aが100万円支払う債務を負っていないかのような事実状態を尊重して,法律上も債務を負っていない扱いにするのが消滅時効です。ですから,時効のカウントの途中でAが債務を承認するなど,継続していた事実に反するような事実が生じた場合,それまでの時効期間の経過を無意味なものとしました。

【3】解答

原則として,Aは消滅時効により貸金返還債務が消滅したことを主張できますが(166条),債務を承認していた場合,時効の更新の効力が生じるので,そこから再度必要な期間を経過しないとAは消滅時効を主張することができません(152条1項)。

★やってみよう!★
【過去問 平成15年第7問エ】
☑ 時効の更新事由が生じた場合には,それまでに経過した期間は,法律上は無意味なものとなり,時効の更新事由が終了した時から,新たに時効期間が進行する。
➠○ 時効の更新事由が生じると,それまでの消滅時効のカウントが「0」になり,その時から新たな時効期間がスタートすることになります。

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