ファーストステップ司法書士6「物権と債権とは?【民法入門②】」
【1】物と人との関係
(1)意義
Aという人がいて,自分の財産の甲建物や乙自動車を所有していると考えてください。民法の規定から言えば,Aは甲建物と乙自動車の所有権を有していることになります。
人の物に対する関係で最も典型的なものは「所有権」ですが,所有権以外にも様々な権利が存在します(e.g.地上権,抵当権)。このような「人と物との関係」を定めるのが,民法の「物権」という分野です。
(2)不動産と動産
民法では,土地と建物が不動産とされ,それ以外の物(例:カメラ,本)は動産とされています(86条1項,2項)。また,土地と建物はそれぞれ別個独立の不動産として扱われます(e.g.土地を売却しても,その土地上にある建物を売却したことにはならない)。
【2】人と人との関係
(1)意義
AとBという人がいて,AがBの甲自動車を買うという合意(売買契約)をしたと考えてください。この場合,AB間で,売買契約が成立することにより,AはBに対して一定の権利(自動車を引き渡してもらう権利:自動車の引渡債権)を取得します。逆に,BはAに対して一定の権利(代金支払債権)を取得します。このような「人と人との関係」を定めるのが,民法の「債権」という分野です。
(2)債権・債務とは
債権とは,権利を有する者〔債権者〕が義務を負う者〔債務者〕に対して一定の給付(例:金銭の支払)を請求する権利をいいます。
「債権」と「債務」は表裏一体の関係にあるので,「債権」があればそれに対応した「債務」があり,「債権者」がいればそれに対応した「債務者」がいることになります(※1)。
※1 例えば,AがBにお金を貸している場合,AはBに対して貸金返還請求権,つまり「貸したお金を返してよ」という債権を有しています。一方,要求される人の義務を「債務」といい,これを負う者を債務者といいます。
【3】債権の担保
(1)総説
ア 債権者平等の原則
1人の債務者に対して債権者が複数いる場合,すべての債権者は平等の関係に立ちます〔債権者平等の原則〕。
例えば,Aが200万円の貸金債権を,Bが100万円の貸金債権を,Cに対して持っていたとしても(割合は2:1),債務者Cの財産が150万円しかなかったとしたら,それぞれの債権が発生した順番に関係なく按分比例で分配されるため,Aは100万円,Bは50万円しか,Cから回収することができません。
イ 担保の意義
このように,債権を有していても債務者から全額を回収できるとは限りません。そこで債権者はいざというときに確実にお金を払ってもらえるようにしたいと考えます。そこで債権者平等の原則の例外として認められたのが「担保」の制度です。
(2)担保の種類
ア 物的担保
物的担保とは,債務者または第三者(物上保証人)の「物」を債権担保の目的とすることをいい,これが担保物権に当たります(e.g.抵当権,質権)。すなわち,担保物権とは,債権の担保を目的とする物権をいいます。
イ 人的担保
人的担保とは,第三者を,つまり「人」を債権担保の目的とすることをいいます(e.g.保証人,連帯保証人)。
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