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ファーストステップ司法書士47「愛がなくても結婚できるの?【婚姻】」

A男はB女と結婚しようと思い,A男とB女とで婚姻届を出しました。しかし,実はこの婚姻は子に嫡出子の身分を与えるためだけにしようとしているものでした。この結婚は認められ,A男とB女の間に婚姻関係は成立するのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【739条】

 ①婚姻は,戸籍法…の定めるところにより届け出ることによって,その効力を生ずる。
【742条】
 婚姻は,次に掲げる場合に限り,無効とする。
 [一]当事者間に婚姻をする意思がないとき。
☑ 用語解説 ☑
『 嫡出子 』
・・・婚姻関係にある男女の間に生まれた子のこと。

【1】意義

婚姻とは,日常語で言う結婚を指します。婚姻が成立すると,その効果として,夫婦で同じ苗字を称したり(氏の共同)同居し,互いに協力し扶助する義務(同居・協力・扶助義務)が生じたりします。婚姻の成立には,①婚姻届の提出(739条)②婚姻意思の合致(742条1号参照)③婚姻障害の不存在(731~737条参照),の3つが必要となります(※1)。②の婚姻意思の合致とは,その意思の内容が単に「婚姻届を出そう」という意思〔形式的意思〕では足りず,「婚姻して夫婦で共同生活を送ろう」という意思〔実質的意思〕が必要になります(最判昭44.10.31)。ですから,単に「国籍を取得するためだけに婚姻しよう」だったり,「子に嫡出子の身分を与えるために婚姻しよう」という意思では,実質的意思がなく,742条1号の「当事者間に婚姻をする意思がないとき」に当たるので,無効となります。
※1 ③の婚姻障害は次のとおりです。婚姻を成立させるにはこれらを全てクリアしなければなりません。
 ① 婚姻適齢
 ② 重婚の禁止
 ③ 近親婚の禁止
 ④ 再婚禁止期間
 ⑤ 未成年者の婚姻についての父母の同意

【2】趣旨

婚姻は事実上の夫婦関係を,法律が後に認めることによって成立するものなので,夫婦関係の事実が存在しなければ,それを認めるわけにはいきません。ですから,婚姻意思には実質的意思を必要としています。

【3】解答

AとBは,子に嫡出子の身分を与えるためだけに婚姻しようとしているので,社会通念上婚姻とみられる夫婦共同生活を送る意思〔実質的意思〕がないので,この婚姻は無効であり,成立しません(最判昭44.10.31,742条1号)。

★やってみよう!★
【過去問 平成3年第9問ア】
☑ 婚姻の届出をすることについて意思の合致はあるが,社会通念上夫婦と認められる関係を創設することについて意思の合致がない場合には,その婚姻は無効である。
➠○ 婚姻成立に必要となる「婚姻意思の合致」の婚姻意思は,社会通念上婚姻とみられる夫婦共同生活を送る意思(実質的意思)であることが必要です。

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