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ファーストステップ司法書士26「自分の土地をグレードアップさせよう!【地役権】」

Aは農家で,甲土地で野菜を栽培していますが,隣の乙土地から川の水を引かせてもらいたいと思っています。Aは乙土地のどのような権利を設定してもらうべきでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【280条】
 地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自分の土地の便益に供する権利を有する。…
【281条】
 ①地役権は,要役地…の所有権に従たるものとして,その所有権とともに移転し,又は他の権利の目的となるものとする。ただし,設定行為に別段の定めがあるときは,この限りではない。

【1】意義

地役権とは,ある土地〔要役地〕の利用価値を高めるために,他人の土地〔承役地〕を利用する権利をいいます(280条)。上記の事例のような,田畑に水を引くための引水地役権や,他人の土地を通してもらうための通行地役権などがあります。他人の土地を利用するという点では地上権と同じですが,あくまで土地の利用価値を高めるために,他人の土地を利用する権利であることがポイントです。要役地とは,地役権の設定によって他の土地を利用することによって利用価値が上がる土地のことであり,承役地とは地役権の設定によって制限を受ける土地をいいます(※1)(※2)。地役権者が要役地の所有権を譲渡した場合,これに伴って要役地の譲受人は,地役権を取得します(281条1項本文)。これを随伴性といいます。ただし,地役権設定契約でこれを認めない別段の定めがなされていたときは,要役地が譲渡されても,譲受人は地役権を取得しません(同条1項但書)(※3)。
※1 役に立てと“要”求するのが要役地,役に立つことを“承”るのが承役地です。上記の事例では,甲土地は,乙土地への地役権の設定により,乙土地から川の水を引かせてもらうことで便利になり,利用価値が上がるので要役地に当たります。一方,乙土地は,地役権の設定で,乙土地の利用が制限されているので,承役地に当たります。
※2 通行地役権は,囲繞地通行権と似ていますが,囲繞地通行権は所有権に基づいて当然に発生するのに対して,通行地役権は契約に基づいて設定されるという違いがあります。
※3 上記の事例で言うと,地役権設定契約の時に,「Aが他人に甲土地の所有権を譲渡しても,地役権は移転しない」という定めがされている場合は,AがCに甲土地の所有権を譲渡しても,Cは地役権を取得しません。

【2】趣旨

地役権は,承役地を利用することによって要役地の利用価値を高めることを目的としています。このようにあくまで地役権は要役地の利用価値を高めるための権利なので,要役地の所有権にくっつくものであることから,要役地の譲渡に伴って地役権も移転するとしています。

【3】解答

AはBと地役権設定契約をして,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする引水地役権を取得し,これによって乙土地から川の水を引くことができます(280条)。

★やってみよう!★
【過去問 平成16年第10問3】
☑ 地役権は,要役地の所有権に対して随伴性を有する。しかし,設定行為で別段の定めをすれば,要役地の所有権と共に移転しないものとすることも可能である。
➠○ 地役権者が要役地の所有権を譲渡した場合,これに伴って要役地の譲受人は,地役権を取得しますが(281条1項本文),地役権設定契約で別段の定めがされていた場合は,この限りではありません(同条1項但書)。

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