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ファーストステップ司法書士34「お金はあの人に払ってね!【債権譲渡】」

AはBから100万円を借りていますが,ある日,貸主であるBが「君に100万円を払ってもらう権利はCに渡したから,お金はCに払ってくれ」と言われました。果たしてAは誰に100万円を支払えばいいのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【466条】
 ①債権は,譲り渡すことができる。ただし,その性質がこれを許さないときは,この限りでない。

【1】意義

債権譲渡とは,債権をその同一性を維持しながら,そのまま移転させることを目的とする契約を言います(466条以下)。例えば,お金を借りた場合,借主は,お金を貸してくれた人(貸主)にお金を返すのが普通です。上記の事例で言えば,原則として借主であるAは貸主であるBに対してお金を支払わなければならないわけです。しかし,BがCに自分の債権(Aに対する貸金返還請求権)を譲渡した場合,債権者はBからCに変わります。これによって債務者のAは新たな債権者のCにお金を支払わなければならなくなります(※1)。しかし,債権者が変わってしまうと給付内容(債務者の債務の内容)が,がらっと変わってしまうような債権は,譲渡することができません(466条1項但書)。例えば,画家に肖像画を描いてもらう債権がこれに当たります。
※1 債権の譲受人が債務者に債権譲渡の効果を主張するには,譲渡人から債務者に対する通知又は債務者から譲渡人または譲受人に対する承諾が必要になります(467条1項)。上記の事例で言うと,CがAに100万円を自分に払うように主張するには,BからAに対しての通知またはAからBかCに対する承諾があったことが必要になります。つまり,この通知または承諾があるまでAは今までどおりBに100万円を支払えばよいということになります。

【2】趣旨

債権譲渡の目的は,投下資本の流動化にあります。例えば,上記の事例で,Aが2月1日に100万円を借りて,お金を返す期限を4月1日と定めたとします。3月にBがどうしても現金80万円が必要になってしまった場合,この債権を売ることによって,3月の時点で80万円を手にすることができ,そしてCは4月1日になれば,100万円を回収することができるのです。債権者が変わると給付内容が変わってしまう債権が譲渡できないのは,その債権が同一性を維持できないからです(※2)。
※2 債権譲渡は,債権を,同一性を維持したまま移転させるものであり,同一性が維持できないと,その債権は譲渡することができないのです。

【3】解答

BはCに,Aに対して持っている貸金返還請求権という債権を譲渡したので,AはCに100万円を返すことになります(466条1項本文)。,Aに対して持っている貸金返還請求権という債権を譲渡したので,AはCに100万円を返すことになります(466条1項本文)。

★やってみよう!★
【過去問 平成11年第5問1】
☑ AのBに対する債権をCが譲り受けようとする場合に,Aの有する債権が,BにAの肖像画を描かせることを内容とするものである場合,Cは,債権を取得することができない。
➠○ 債権者が変わってしまうと給付内容(債務者の債務の内容)が,がらっと変わってしまうような債権は,譲渡することができません。

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