ファーストステップ司法書士16「忙しくてできない!そんなときは他人に頼ろう!【代理】」
AはCの持っている土地を買いたいと思っていますが,忙しくて契約している時間がありません。そんなとき友人のBがやってきました。AはBに頼んでCとの土地の売買契約を代わりにしてきてもらうことができるでしょうか?
☑ 参考条文 ☑
【99条】
①代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は,本人に対して直接にその効力を生ずる。
②前項の規定は,第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
【100条】
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,自己のためにしたものとみなす。ただし,相手方が,代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときは,前条第1項の規定を準用する。
【1】意義
代理とは,一言で言えば「代わりにやってもらうこと」です。代理制度を使えば,本人が直接に法律行為を行っていなくても,他人が行ったことについての法律効果を本人に帰属させることができます(99条)(※1)。代理人が相手方と代理行為を行う際は,自分はあくまで代理人であり,本人のために代理行為をすることを相手方に示さなければなりません。これを顕名といいます。代理行為を行う際にこの顕名がなされなかった場合,原則としてその代理人がした意思表示は,代理人自身のためにしたものとみなされますが(100条本文),例外として,相手方が代理行為であることを知っていた〔悪意〕あるいは周囲の事情から代理行為であることを知ることができたときは〔有過失〕,本人に相手方と代理人の間の法律行為の効果が帰属します(100条但書)。
※1 上記の事例でいうと,AがCとの売買契約の締結を友人であるBに任せた場合,実際にCと契約したのはBであるにもかかわらず,売買契約の効果はAに帰属します。つまり,契約が成立するのはAC間であり,BC間ではありません。結果,AはCに土地を引き渡すように要求できる反面,お金をCに支払わなければなりません。
【2】趣旨
民法では,人は自らの意思のみに拘束されるのが原則です。しかし,上記の事例のように,他人の意思表示によって成立した契約が本人に効果として帰属することを認めないと,多くの取引を行う人にとって不便です。そこで認められたのがこの代理という制度です。そして,顕名は相手方に法律行為の効果の帰属先を知らせる趣旨でされるところ,相手方が効果の帰属先(本人)を知っているような場合には,本人との間で契約を成立させても問題ないので,代理行為として直接本人に効果が帰属することを認めることとしました。
【3】解答
Aは友人のBに代理人としてCと売買契約を締結してもらい,AC間で売買契約を成立させることができます。その際には,BはAの代理人であることをCに示さなければなりません(99条1項)。
★やってみよう!★
【過去問 平成18年第4問】
☑ 代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をなした場合であっても,相手方がその本人のためにすることを知っていたときには,その意思表示は直接本人に対して効力を生ずる。
➠○ 顕名なき代理行為で相手方が悪意・有過失なら直接本人に効果が帰属します。
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