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ファーストステップ司法書士40「お金を貸すときはここに注意!【消費貸借】」

Aは友人Bに頼まれて,100万円を貸しました。支払期日は定めませんでしたが,その後,Aは急にお金が必要になったので,Bに100万円を返してほしいと言いました。Bはすぐに100万円を返さなければならないのでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【587条】
 消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。
【587条の2】
 書面でする消費貸借は,…約することによって,その効力を生ずる。
【589条】
 ①貸主は,特約がなければ,借主に対して利息を請求することができない。
【591条】
 ①当事者が返還の時期を定めなかったときは,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
 ②借主は,返還の時期の定めの有無にかかわらず,いつでも返還をすることができる。

【1】意義

消費貸借契約とは,借りた物と同じ種類の物を返還する契約をいいます(587条)。つまり,借りた物を消費して,代わりの物を返すのが消費貸借契約です。消費貸借契約の典型例はお金の貸し借りである金銭消費貸借ですが,お金ではなくても,お米などの代わりのあるものであれば,消費貸借契約の目的とすることができます(※1)。消費貸借契約は,基本的には,貸借の合意だけでは成立せず,これに加えて,借主が金銭等を受け取ることによって成立するとされています(587条)。ただし,当事者の貸借の合意によってのみ成立させることも,貸借の合意を書面でするのであれば可能です(587条の2)。また,消費貸借契約の際,返還時期が定められていた場合,当然,借主はその時期までにお金を返さなければなりません。一方,返還時期が定められていなかった場合,「10日後までにお金を返してください」といったように,貸主が相当期間を定めて催告しなければならず,その時から相当期間が経過するまでお金を返してもらうことはできません(591条1項)(※2)。
※1 上記の事例だと,Bは借りたお金を消費して,それとは別のお金を返すことになります。厳密に言うと「借りたお金を返す」というわけではありませんよね。このことから“消費”貸借というネーミングがされています。なお,以下金銭消費貸借を前提として説明していきます。
※2 借主は,返還の時期の定めの有無にかかわらず,いつでも返還をすることができます(591条2項)。早く返してもらう分には,貸主も困らないからです。

【2】趣旨

当事者の合意のみで消費貸借契約が成立するとなると,貸主は「無利息でお金を貸す」といった安易な口約束にも拘束されることになります(※3)。このような軽率な契約の成立を防ぐため,口約束での消費貸借は消費貸借の合意が書面でされている場合に限って成立が認められています。また,返還時期を定めない消費貸借契約で,貸主に突然お金を返してほしいといわれても,突然で借主はお金を用意できません。そこで借主保護のために相当期間という返還猶予の時間を与えたのです。
※3 貸主は特約がなければ借主に利息の支払を請求することはできません(589条1項)。すなわち,消費貸借は原則として無利息とされています。

【3】解答

上記の事例では返還時期の定めがないため,BはAの相当期間を定めた催告があった時から相当期間が経過した後にお金を返せばよいことになります(591条1項)。

★やってみよう!★
【過去問 平成11年第6問エ】
☑ 消費貸借契約において,当事者が返還の時期を定めなかった場合において,貸主が返還を請求したときは,借主はその請求された時に返還しなければならない。
➠× 返還時期が定められなかった場合,借主は相当の期間を定めた催告の時から相当期間が経過するまでお金を返す必要はありません。

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