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絵にかいた餅にしない!事業成長に資する事業計画作成

このnoteを書こうと思った背景

これまで10社以上の会社(主にスタートアップ)の事業計画を見てきましたが、その内容は驚くほど千差万別です。基本、スプレッドシートでゼロベースで作ってる人が多かったですが、「ここまでやるか!」と、とても素晴らしい形で事業計画を作成、社内浸透し、日頃の業務の指針となっている会社もあれば、残念なことに絵にかいた餅のようになっている会社もありました。

また、そもそも事業計画作成に慣れている人がいない場合、作成自体に時間がかかってしまい、本来時間を割くべき業務が後回しになってしまうということも見られます。

私はこれまで、事業のPL責任を負う立場として事業計画を作成する機会に恵まれました(通算8年度分くらい)。その経験をもとに、ノウハウやちょっとしたフォーマットを提供することで、複数の企業から喜んでもらえたため、一部だけでもnoteで共有することによって、さらに多くの企業の役に立つことができればいいなぁと思ったのが背景です。

事業計画作成の目的

まず、前提として、事業計画を作成する目的は何でしょうか。事業計画を作るきっかけとしては、おそらく誰かへの共有・報告が多いでしょう。「あくまで社外への報告用で、形だけ整えればいいんだよ」みたいなノリで作成することもあろうかと思います。しかし、「共有のため、報告のため」だけに、あれだけの労力をかけるのはもったいないですよね。ここでは、「事業成長に貢献すること」を目的とします。

事業成長に資する事業計画のポイント

  • 数値を支える仮説があること

  • 仮説の議論がしやすいこと

  • アクションプランにつながること

数値を支える仮説があること

多くのスタートアップにおかれましては、年率100%以上の成長率を計画していることも珍しくないと思います。そのような成長前提の受注目標が設定されている中、下記のようなことはないでしょうか?

 ・何の根拠もなく(気合で)、毎月増加する受注、商談、リード数
 ・何の根拠もなく(気合で)、毎月改善されていく受注率、商談化率
 ・何の根拠もなく(気合で)、毎月高まっていく受注単価

前提として、数字を変えるためには行動を変えなくてはいけません。もちろん、外部環境の変化も数字に影響を与えるので、それはそれで織り込みつつも、事業を進めていく上で最も重要なのは行動だと考えています。

例えば、受注率を高めるのであれば、「商談内容の質を高める」、「商談のクオリフィケーションの基準を厳格化する」などの打ち手が考えられるでしょう。

で、こう書くと、そりゃそうやって感じなんですが、事業計画に向き合うとそういう考えが飛んじゃうことが多いと思います。数値だけいじって、あとで社内外に共有したときに、「これって、どうやって実現するんですか?」と質問されて、「あ、えっと・・・」みたいな。

特に、期末にかけこみで翌期の計画つくるときなんかは、「来月から単価あがることになってるんですが、どうやってやるんですか?」→「あ、えっと・・・」、何も言えねぇみたいになっちゃいます。

なので、数値の変化がある背景には、行動の変化、打ち手があって然るべきで、セットで考えることをおススメしますという話です。で、これは、数値と行動、どっちが起点となってもいいと思ってます。

どういうことかと言うと、

  • 来年度末までにMRR2倍にしないといけない。単価と顧客数でみると、それぞれXX円とXX社にしないといけない。そのために、打てる手は・・・

  • 営業の課題が明確に見えてきた。商談スクリプトの見直しをすれば、XXXの失注理由がXX%程度削減できるだろうから、結果、受注率がXX%改善するだろう。

のように、「数値が先にあって打ち手を考える」と、「打ち手が見えていて数値に反映する」、どちらがあってもいいと思うのです。そして、これは一方通行で終わるのではなく、何度もいったりきたりします。私はこれを「定量と定性の行き来」と呼んでいます(グロービスの授業からの受け売りです。先生ありがとうございます)。

仮説の議論がしやすいこと

数値と仮説をセットで考えて、事業計画第一稿ができたとします。その後におこなうのは、経営陣(会社によってはマネージャーも)での議論でしょう。

その際に、まず繰り広げられるのは下記ではないでしょうか

  • えっと、それって計算式どうなってるの?
    →エクセルの計算式を1つ1つ見る

  • え、なんでその数値なの?
    →1つ1つ数値の根拠を説明する

作成した側からすると、正直、面倒くさい時間です。しかも、経営陣によっては普段数字に触れていないメンバーがいる場合、全員が数字に強いわけではないと思います。結果、スムーズに理解されずにイライラが溢れる時間になり、1時間のMTG時間があっという間に過ぎ去ることも少なくないと思います。

この時間とイライラをなくすために、普通に作成すると計算式に埋もれてしまう数値(ここでは「変数」と呼びます)と、その仮説を切り出して記載することをおススメします。

参考までに私が過去に運用し、実際に何社かに提供したフォーマットは下記のようなイメージです(実際は個社ごとに項目からガラッと変えます)。

事業計画の変数だけ抜き出したシート(例)


さらに議論が進むと、仮説自体の見直しが入ります。例えば、

  • XX月にリリースされる機能によって、値上げをし新規受注単価アップを見込んでいたが、値上げをしないことになったので受注率向上に寄与することになるだろう

  • XX月に競合が参入することが分かり、コンペ案件が増えることが予想されるため受注率が下がるだろう

また、複数パターンのシミュレーションもしたくなるのが事業計画の会議ってもんだと思います。

  • さすがにその単価アップは無理だろう。XXXX円までの上り幅にした場合、MRR目標達成のために必要な新規受注社数はどうなる?

  • 新規リード、そんなに取れないでしょう。単価どこまであげればトップライン守れるかな?単価が無理なら受注率はどのくらい改善すればいい?

こんなとき、計算式の中に変数が埋まっていると、修正するのが大変です。なので、上記キャプチャのように切り出した変数を参照する形で、別シートに事業計画を作成することをおススメします。議論の中で、変数を一か所変更するだけで、数値が一気に変わりますので、とても楽ですし、議論の流れをとめることも少なくなります(もちろん、修正内容によってはパッとはいきません)。

アクションプランにつながること

事業計画は、そこに在るだけで事業成長に貢献するものではありません。ずっと事業最前線でやってきた身としてこだわりがあるのが、事業成長のためには「行動」が欠かせないということです。どんなに良い仮説、戦略を語れることができても、実行に移せなければ事業成長に貢献しません。

今回、このnoteは「効率的に事業成長に資する事業計画の作り方」と題しています。つまり、事業計画と行動をちゃんとつなげることが大事ということが言いたいのです。あたりまえだと言われそうですが、ちゃんと実践されていることが当たり前ではないのも事実かなと思っています。数字が、額に飾った絵みたいになっていて、株主定例MTGのときに駆け込みで、その場しのぎの説明を考えるみたいなこともなきにしもあらずなのかなと(大きな声では言えませんが)。

また、「施策を打って数値が変化する」というのは言葉で見るとシンプルなのですが、実践するときの難所の1つがリードタイムです。ここで言うリードタイムは2つあると思っています。

  • 施策を実施するための準備にかかるリードタイム

  • 施策を実施してから数値に反映される(効果が出る)までのリードタイム

なので、上記2つのリードタイムを踏まえると、とある数値改善をするためには相応の期間をもって準備開始する必要があるんですよね。

これの何が難しいって、事業最前線にいると共感いただけると思うんですが、日々色んなことが起きたり、目前の目標が足りなかったりしますよね。カオスが普通の状態になる。そんなカオスの中、先々のことを考える時間や脳内メモリが取りにくいですよね。目線が短期短期になってしまいがち。

そういった短期の部分は別の人に任せられるようになるといいんですが、採用と育成に期待してても時間が相応にかかるため、悠長なことを言っていられないのも事実で。ここでおススメしたいのが、事業計画に紐づいて一緒にアクションプランも作りましょうということです。ポイントは、事業計画作成で設定した変数を意識することです。

例えば、下記のようなフォーマットです。

四半期ごとのアクションプラン

最上段に定量的な改善目標を置き、その下からテーマごとにアクションプランを記載するイメージです。あまり細かい粒度では書けないので、アクションプランというより、ロードマップという感じでしょうか。

事業計画作成のプロセスでしっかりと仮説をたてていれば、ここのアクションプランもスムーズにたてることができるでしょう。さすがに、3カ年計画の場合に、3年分を四半期ごとにアクションを考えるのはきついと思うので、初年度は四半期ごとに作って、次年度以降は年度ごとの大きい粒度で考えておくのがちょうど良い塩梅なのかなぁと思っています。

最後に

私はずっと会社に所属する形で働いてきましたが、2022年3月に起業して、SaaS企業を中心に複数企業の支援をしています。自身の経験もそうですし、支援している中でも感じるのが、事業を前に進めていくことは本当に厳しい仕事だと思っています。日々様々な問題が勃発(ホント笑うしかない問題も出ちゃう)し、解決すべき課題が山ほどあるように感じられ、カオスの渦の中にいるような感覚に陥っていく。。。

カオスの中にあって、落ち着いて中長期視点で物事を考えるのはなかなか難しいものです。事業計画を作成するときには、嫌が応でも中長期的な視点で考えざるを得ません。それを、帳尻合わせの数字を作るだけではなく、仮説を作り、アクションプランまで考えてみませんかというのがお伝えしたいことでした!

今後について

起業したのを機に、ちょこちょこnoteやtwitterなどで発信していきたいと考えていますので、よろしければフォローいただけると励みになります^^

https://twitter.com/hisa_Saasport

Meetyも始めてみたので、私と話してみてもよいかな?という方は是非お願いしますmm


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