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上司マネジメントのススメ

先日、勤務先で新マネージャーの研修をする機会がありました。社長、本部長(わたし含む)で、今期新たにマネージャーに昇格したメンバーに対して、マネージャーの心構えや役割についてそれぞれが話をしました。

わたしは、何の話をしようかなと考えたときに、ここ1〜2年で必要性を強く感じていた「上司マネジメント」をテーマに取り上げることにしました。

せっかくなので、研修で話した内容をまとめておきます。

上司マネジメントとは

マネージャーになると、部下のマネジメントは一所懸命がんばりますが、上司との関わり方にまではなかなか目が向かないことが多いと思います。しかし、マネージャー(中間管理職)になると、プレイヤーだった頃とは違う上司との関わり方=上司マネジメントが求められると思っています。

わたしがここでお伝えしたい上司マネジメントは、上司を自分の思い通りに動かそうということではありません。上司マネジメントとは、上司のパフォーマンスを最大化する、ということです。

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優秀なプレイヤーは自分のパフォーマンスを最大化するために、うまく上司を使います。一方で、マネージャーには、上司のパフォーマンスを最大化することで組織全体の利益を向上させることを意識してほしいという話をしました。個人の利益<組織の全体最適を考えるのがマネージャーに求められる視点だからです。

なぜ上司マネジメントをする必要があるのか

社長がその最たるものですが、組織の中で、立場が上になればなるほど、日々、さまざまな意思決定を求められます。あの人たちの主な仕事は「決断すること」といっても過言ではありません。しかもシビアな意思決定が大半で、一歩間違った決断をしてしまえば、組織がおかしな方向に行ってしまうことさえあります。

だからこそ、自分より上の人間、上司には、その意思決定に集中してもらうことが組織全体の利益につながると考えるようになりました。意思決定に集中できる環境づくりや、スピーディに意思決定ができるよう準備・調整をしていくのは中間管理職に求められる役割だと思います。

そして、もう一点は、つまらなそうに、もしくは、つらそうに仕事をしている上司には良い組織はつくれないという理由。イライラや不機嫌など、上司がもっている空気感は周囲に伝わります。上司を気持ちよく仕事をさせるというこは、職場の雰囲気を良いものにして、良い組織づくりに貢献するということにつながっていきます。

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上司のパフォーマンスを最大化するために中間管理職ができること

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特に私が意識をしている点は、上記の3点です。1つ1つは、そんなに大したことではありませんが、上司の視座(立場)で考えるということが重要なポイントかなと思います。もちろん、その立場になったことがないからわからないと思うかもしれませんが、それでも考える。そして、考え続ける。いつもの自分の視点より高いところから見ることで視野は自然と広がります。

そして、この3点の根底にあることは、「上司も人間である」ということです。わたし自身、自分がプレイヤーだった頃は、上司を鋼だと思っていました。何があってもブレないし、いつも自信満々で決断しているし、何を言われても何が起きても動じない。そう見えていた気がしますが、そんなことはなく、何かを決断するときに尻込みすることもあれば、弱音を吐きたくなるときもあります。上司もふつうの不完全な人間なんだということは、自分自身が上司という立場になってみて、はじめて腹落ちしました。

1)上司の苦手なことを率先してやる
なんでもできるように見える上司にも苦手なことはあります。人の顔や名前を覚えたりするのが苦手な人、性格的に明るく振る舞うことが苦手な人…。その苦手を克服させるのではなく(たぶんそれは無理難題)、その役回りを率先して自分がやってしまえばいいのです。苦手なことから解放されたら、上司は気持ちよく働けるはずです。

2)上司の行動の先を行く
上司の後をついていくのではプレイヤーと同じなので、とにかく先を行く。ずっと上司の行動を見ていると、次にこの人は何をどう考えるのか、どう行動するか、というのが少しずつ見えてくるようになります。だから、少し先回りして準備や調整をしたり、必要なところに手当をしておくと、より上司は働きやすくなります。

3)上司の弱さに迎合しない(感情に同調しない)
繰り返しになりますが、上司も不完全な人間です。弱音を吐いたり、尻込みすることもあります。後退することが悪いわけではないのですが、それが組織にとって良いと判断としての後退なのか、はたまた人間的な弱さからくるものなのかということは、中間管理職は冷静に見極めるべきです。上司の弱さに迎合するのではなく、原理原則や自分自身の倫理観、またはビジョンやミッションから外れた決断ではないかを見極め、万が一、上司が誤った判断をしようとしていたら、断固反対する強さも必要です。

上司のパフォーマンスを最大化する、ということは、決して上司から好かれることでも、気に入られることでもありません。わたしは、入社後、(ほかに人材がいなかったという時代的な幸運もあって)順調に出世をしたように見られることが多く、「あなたは上司や社長のお気に入りだから」とやっかみを言われたことが幾度となくあります(笑)でも好かれようと思ったことは一度もないし、上司が間違っていると思えば平気で叱り飛ばす勢いで向かっていくので、むしろうるさいと思われているくらいだと思います。


上に立つ人間は孤独です。中間管理職は、上司にとって「伴走者」「女房役」「パートナー」であるべきだと思っています。マネージャーになった以上は、上司の権力を上手に使うということではなく、組織全体がより良い方向にいくために上司のパフォーマンスを最大化するということを、ぜひ考えてほしいなと思います。

参考図書紹介:
参謀の思考法ートップに信頼されるプロフェッショナルの条件

自分が中間管理職になって数年、部下のマネジメントには自分なりに自信がもてるようになった頃、上司マネジメントの重要性に目を向けることができるようになりました。上司に求めるだけだと、なんだか上手くいかないな〜と思うことが何度かあってようやく気づけたというか。わたし自身もはじめからできていたわけではありません。

そこから1〜2年くらいいろいろと考えていて、いつか言語化したいなと思っていたのですが、マネージャー研修の講師を任されて、改めて考える機会を得ることができました。

自分の考えをまとめるにあたり、何か参考になる本はないかなと探していたところ出会ったのが、ブリヂストン元CEOの荒川詔四さん著作の「参謀の思考法ートップに信頼されるプロフェッショナルの条件」という書籍です。

荒川さんが社長秘書時代の経験をベースに書かれていて、「参謀」という言葉が、とても腑に落ちました。私が考えていた上司マネジメントは、たしかにこういうことだと目の前が開けた気持ちにさえなりました。

ちなみに、わたしの上司たちは、(バチクソにクセは強いけど)とても仕事ができる優秀な人ばかりでした。これはとても幸運なことで、だからこそ、上司のパフォーマンスを最大化することの重要性に気づけたのだと思います。でもこの参謀の思考法という著書には、そうではない上司との付き合い方についても言及されていますので、ぜひご参考ください。


わたし自身は、参謀で終わるのか、それとも参謀をもてるようになるのか…。うーん、どうかなーと思いながらもできれば後者を目指したいです。


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