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喋る飼い主、喋る猫。


猫を迎えて、よく喋るようになった。

元々あまり言葉数が多いほうではなく、一人で家にいる時なんかは一切声を出さない日もある程だった。
しかし、猫を迎えた瞬間、自分でも驚くほどに一人で喋るようになった。
そんなお喋りな下僕と、それに答えてくれる優しい愛猫の話を綴ろうと思う。


事あるごとに、猫に話しかける。
朝は「おはよう」から始まり、続いて「うわあ、今日も可愛いね」と息をするように褒める。
大体毎朝同じ時間に、私の枕元に猫がやってくるのだが、寒い時はお布団の中に潜ってきたり、暑い夏の日はそのまま私の顔にちょっかいをかけ出す。
そんな姿が愛おしくて、朝から「可愛い」を連呼してしまうのだ。

ベッドから起き上がり、猫のご飯の準備。
「お腹空きました?ご飯もうちょっと待っててね」といそいそと支度。

その間も足元ですりすりしてくれたり、ゴロンとお腹を出して甘えてくれる猫に対し、20〜30回ほど「可愛い」を投げかける。

猫、なんだか嬉しそう。
可愛いという言葉に喜んでいるのか、ご飯を貰えるから喜んでいるかはさておいて。

ご飯の準備を終え、今日のお天気チェック。
晴れていれば「今日お天気いいね。嬉しいねえ」、曇っていれば「今日雨降ると思う?」と話しかける。

雨が降るかどうかなんて知ったこっちゃない猫は、隣でじっと私の顔を見つめてくる。
「やっぱり傘持って行こうか」と最終的には自己解決するのだが、猫に話しかける事はもはや日常なので、止めることは出来ない。


そんな私の独り言に、猫はちゃんと相槌を打ってくれる。
人間のように「うん、そうだね」とは言わないものの、いつも私の言葉の後に「にゃあ」と鳴いてくれるのである。

そんな姿が可愛くて、またもや怒涛の「可愛いね、いい子だね」のアタック。
猫の事になると頭脳レベルが低下してしまうので、言葉のボキャブラリーも少なくなってしまうのだ。

そんな風に、
下僕が喋る→猫が相槌→下僕、大歓喜
を繰り返しているので、鳴くと喜んでもらえると学習したのか、猫もよく喋る(鳴く)ようになってしまった。

要求がある時はもちろん、甘えてくる時、お昼寝から起きた時、ご飯を食べ終わった時、おトイレが終わった時…何かを合図したい時などに必ず鳴くのだ。

私が仕事や作業をしている際に、ちょん、と隣に来て「うにににゃ、うわん」と何かを喋っている事もある。
お互い何を喋っているかは分からないものの、何となく気持ちは伝わってくる。
きっと、気持ちのキャッチボールはちゃんと出来ているのだ。


夜。ベッドに入ると猫がお腹の上に登ってくる。
頭を撫でながら、「今日も傍に居てくれてありがとうね、大好きだよ」と伝える。
猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら、小さく「にゃあ」と伝えてくれる。

たったそれだけの事だけれど、たまらなく幸せだ。
きっとこの瞬間、会話が出来ている。
だって、猫の気持ちは伝わっているし、私の気持ちもきっと猫に届いていると思う。

言葉はとても素敵なものだ。
でも、もし言葉が通じないのであれば、気持ちや心で対話する事だって、不可能ではないはず。

これからもきっと、毎日猫に話しかけるだろう。
猫のご機嫌な「にゃあ」が聴ければ、この上なく幸福なのだ。

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