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リーダーとメンバーの関わり方、三態

日曜日の朝に、X(旧Twitter)で「本を囲んだ語り部屋」というスペースがあり、そこの四人のスピーカーの一人をやらせていただいています。
毎週に違う本を一冊取り上げてその本の要約(の要約)を紹介してから、それぞれが内容で気になったところや感想をシェアしあう緩い語り場になっていて、日曜の朝の楽しみになっています。

そのスペースで、よくテーマに上がってくるのが「コミュニティとかチームをどのように作ってゆくか」なのですが、過去1ヶ月ぐらいの間に幾つかの本を取り上げて語り合う中で共通のパターンのようなものがいくつかあることに気づきました。

ちなみに、スペースの中で取り上げた本で、関係してくるのは以下の4冊です。

これらの本の中で出てくるコミュニティやチームの話からの語らいで考えさせられたのは、コミュニティやチームなどの人の集まりをどのように立ち上げ、立ち上げたリーダーはどのようにメンバーに関わり、そしてメンバーの自立性を引き出してゆくことができるか…ということだったように思います。

そして、話し合ってるうちに、リーダー(あるいはコミュニティの発起人)とメンバーの間の関わり方には少なくとも三つの形態がありそうだと気づきました。
一つずつ見てゆきましょう。

ハブ&スポーク型

ハブ&スポーク(Hub and Spoke)という言葉は、車輪の構造において、回転する軸にあたるハブと軸から外周(リム)に伸びてゆく支軸のことを「スポーク」呼ぶことから、同じような中心から伸びる放射状に伸びて中心点と周りが繋がっている状態をさしています。(言葉で説明するのは難しいので、上の図を見てもらった方がいいかも)

ハブに当たるところにリーダーが居て、スポークの先にいるのがメンバーという構造になります。
この時のリーダーは、一人一人とつながっていて、個別に働きかけたり面倒を見たりということをしてゆきます。

One on oneミーティングが中心のやりとりをしている組織ってこんな感じになるのではないでしょうか。パンデミックで在宅勤務になって、それぞれが顔を合わせることがなくなってからの組織では、このようなハブ&スポーク構造が顕著になっていったのではないかと思います。
もちろん、リーダーは自分とだけやり取りするのではなく、横のつながりを支援することも同時に行います。
「あ、その件だったら、○○さんとこの間話した時に聞いたから、彼女に聞いてみるといいんじゃないかな」
みたいに、ね。

コミュニティにおいても、最初の立ち上げ時は、発起人がメンバー一人一人と丁寧にやり取りをしてゆく段階があるように見えています。
メンバーそれぞれを理解し、どんな思いでそこにいるのか、何をしてゆきたいと思っているのかなどを聞きながら、自然な流れで役割が作られていったりするでしょう。

この型の良いところは、リーダーのコントロールが効きやすいところにありますが、一方でメンバーがリーダーに依存してしまい自主性が損なわれてゆくことになるので、あまり長いこと続けるものではないかなと思います。
メンバーの成長を促す意味では別の型に移行した方が良い場合もあるでしょう。

放牧型

放牧型は、文字通りメンバーにある程度の自由と裁量を与えて、自分たちやりたいことをやってもらうスタイルです。
リーダーは、メンバーがやりたいことができるように支援することはあっても、いちいち指示をしたり、報告を求めることはしません

ただ「放牧」と言っても、ある程度の領域は区切りますし、してはいけないことはルールとしてしっかり定めます。
チームやコミュニティの枠組みを作って、外側から全体を見守ってゆくスタイルであり、別の言葉では「サーバント・リーダーシップ(Servant Leadership)」と呼ぶこともあります。

研究所やラボラトリー型の組織やクリエイティブ系のコミュニティ、スタートアップ型の企業は、この形が多いように思います。
また、コミュニティにおいては発起人が、初期メンバーと一緒にガイドラインやルールのようなものを大まかに決めた後は、この型の関わり方にシフトし、それぞれの活動は自由にしながらもコミュニティという場自体を存続させるための枠組みの維持と強化、コミュニティ外とのやりとりをしてゆくことになるでしょう。

この型の良いところは、メンバーの自由度が高くメンバー間も自由な交流ができるので、アイディアが交わされて触発されてイノベーションが起こりやすくなることでしょう。
しかしながら、それはメンバーの意欲が高い時であり、意欲の低い人ばかりだとこの型はサボる人ばかり出てくるばかりか、何も新しいものが生まれない状態になります。

圧力釜型

圧力釜型では、リーダーや発起人はグループの外にいます。
リーダーがメンバーを集め、メンバーたちに集まった目的やミッションを提示すると、そのあとはメンバー同士が自分たちでどうにかしてゆくことになります。

集まったメンバーは、自分たちで考えて目的をどうやって叶えるか、ミッションをどうやって遂行するのかを考えてゆきますけれど、そこに対してリーダーからの指示もアドバイスは一切ありません。
但し、情報提供はします。それは、期限であったり、グループの外の声(フィードバック)であったりとか…
これらは全て、プレッシャー(圧)になります。

また、メンバーたちのモチベーションを引き上げるために、チームビルディングをしたり、活動の進捗を褒め称えたりします。
これによって、やる気(熱)をあげてゆくことになります。

集められたメンバー、それはリーダーが選んだ人たちなので優秀ですし多様性もあるでしょう。そこに圧と熱を加えると化学反応が起きて、爆発的なアウトプットが出てくることになります。

古くはGEがリーダーシップ教育で取り入れていた「ワークアウト」がまさにこれなのですが、短期プロジェクトで成果を出す時には、この型が向いていると考えられます。
短期ですがものすごく濃密な体験になりますので、メンバー同士の結束とネットワークが強固なものになりますし、非構成のグループの中での協力体制を作ってゆく過程はリーダーシップの醸成にも大いに役立ちます。
ただ、これはかなりインテンシブなので、あまりダラダラさせない方が良いでしょう。できれば2週間程度、長くても3ヶ月のプロジェクト向きです。

以前、書かせてもらった以下のnoteで「共創の場」について考えてみました。

ここで出てくるキャンプ理論は、放牧型から圧力釜型に移ってゆくようなケースではないかと、今振り返ってみて思います。

これからの組織

大企業のような大きな組織から、NPOや、趣味の集まりのコミュニティまで、人の集まりやグループには様々な形がありますけれど、パンデミックの後に出来上がったリモートで人同士がつながり合える関係性は、人と人との関わり方の形を大きく変えつつあり、組織という言葉自体も意味が変わってきていると私は思っています。

人と人とが「濃く強く、しかし狭く」繋がっている状態であった過去から、「広く浅く、そして緩く」繋がっては離れていくような傾向は、今後ますます強まってゆくと思います。

ハブ&スポーク型は、伝統的な企業や危機管理が必要な状況下において機能する形態だと思いますけれど、書いてみたように組織の立ち上げ時にもこれが必要であることもあるでしょう。

おそらくですが、これら3つの型の間を流動的に動いてゆくことが必要なのだろうと思います。
どのような時に型を変える必要があるのか?
型を変える時は、メンバーとどのようにコミュニケーションを取ってゆくのか?
私自身にも答えはありません。

今、私は社内でコミュニティ型組織を立ち上げるという実験をしています。
コミュニティの立ち上げの時には、私自身が発起人としてハブ&スポーク型で、メンバーとの信頼関係を作りつつ、コミュニティの方向性やガイドラインを共に作って行きました。

そこからしばらく経って放牧型に移行してきました。今はメンバーが自主的に自分たちのやりたい活動を考えてモチベーション高く動いてくれています。
多分、この先、会社からアウトプットを求められた時(企業の中でのコミュニティなのであたりまですが)には圧力釜型にしてゆくことになると思います。
無論、一時的にですけれど、ね。

発起人やリーダーには、立ち上げた時の「想い」や「拘り」もあると思います。それをメンバーに浸透させつつ、途中から次第に外に出て行って、メンバーに委ねてゆく…
ひょっとしたら、それが最も難しいかもしれません。言い方を変えると、型を変えることができないのはリーダーや発起人に気持ちの問題の方が大きいかもしれないということでもありますね。

だとすると考え方としては、「自分」が残るのではなく「自分の想い」のみが残り、それが他者によって代行されてゆくのだ、ということのようです。
そう、何も生えていない土地に種を蒔いてゆくように、ですね。

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