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【SF小説】 母なる秘密 3-2

【あらすじ】
高校三年生の林英治は、幼い頃に父が他界し、母の美絵子と二人で暮らしていた。ある日、母の言動に立て続けに異変を感じた英治は、何者かが母になりすましているのではないか、と疑念を抱く。その正体を追った先で、英治は驚愕の真実に辿り着く。

「英治くん、落ち着け」

 と、新田が手のひらで英治を制した。

「危害を加えるつもりはない」

「……どういうことだ」

「これから、君の拘束を解く」

 英治が呆気に取られていると、その左手首に巻かれたバンドを新田が緩め始めた。

 バンドの結束が解け、英治の左前腕が自由になった。手首には、しめつけられた跡が轍のように残っていた。

 休むことなく、新田は他のバンドも緩めていく。

「あんた……俺の味方なのか」

「ああ。監視カメラに不具合を起こさせたのも僕だ。システム課に潜っておいて正解だった。そう簡単には復旧できないよ」

「どうして俺を助けるんだ。そもそも、あいつらは何者なんだ」

「彼らは、NEXTという政府直属の研究機関だ。ここは、その研究施設の一つ。僕はある目的のため、新田という職員になりすまし、ここに潜入している。もとの名は、飯沼亮平という」

 新田――飯沼亮平が、英治の上半身に巻かれたバンドをはずし終えた。彼は屈み、引き続き英治の拘束を解いていく。

「NEXTってのは、一体、何の研究をしてるんだ?」

「通常兵器、化学兵器、その他もろもろ……。他国との軍事競争で優位に立つための、あらゆる研究を行っている。この施設は、未知の生命体やエネルギーについての研究を担当している。国民が知らないだけで、何十年も前から存在している組織だ」

 普段なら一蹴しているような陰謀論だが、今さらあり得ない話だとは思わなかった。何より、今の英治には、亮平を信じる外に選択肢がなかった。

 ようやく見えた光明を逃すまい、と英治は彼に疑問をぶつけ続ける。

「そんなやつらに、どうして狙われなきゃいけない。母さんの金庫に何が入ってるっていうんだ。それに、母さんに変身するやつまでいた。変装なんてレベルじゃない。体が丸ごと変わったような。いくら秘密の組織でも、そんな技術があるか。それこそ、未知の生命体みたいじゃないか」

「彼らはただの人間だよ。君に真実を話そう」

 最後のバンドがはずれた。英治は自由に動けるようになったが、亮平の言葉をじっと待った。

 彼が立ち上がり、英治と向き合う。

「君と君の両親、そして僕も。僕たちはモルフという星の生き物。この星からすれば、地球外生命体。つまり、宇宙人だ」


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