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【SF小説】 母なる秘密 3-3

【あらすじ】
高校三年生の林英治は、幼い頃に父が他界し、母の美絵子と二人で暮らしていた。ある日、母の言動に立て続けに異変を感じた英治は、何者かが母になりすましているのではないか、と疑念を抱く。その正体を追った先で、英治は驚愕の真実に辿り着く。

「は?」

 と、英治は思わず間抜けな声を漏らした。

「あんた、何言ってんだ」

「真実を伝えたまでさ。僕たちは違う星からやってきた。未知の生命体は君の方なんだ」

「ふざけないでくれ。さすがに馬鹿げてる」 

「理解できないのも無理ないが、時間もない。見てもらった方が早い」

 亮平はジャケットの内側に右手を突っ込み、左脇の辺りをまさぐった後、左の鎖骨を二度叩いた。

 突然、亮平の顔に青黒い痣がいくつも現れた。いや、痣が現れているのではない。もともとある薄橙色の肌が、雪が溶けるように消えていき、その下にある青黒い皮膚が表出しているのだ。

 そして、鼻先が潰れ、唇はごつごつと分厚く変化した。眼光は獣のように鋭くなり、白目だった部分には赤みが差した。髪の毛は、頭の中に埋もれて消えた。ジャケットの袖からも、青黒い皮膚に覆われた手が伸びている。

 亮平がその姿になるまで、実際には一秒もかからなかったが、英治には百代に近く感じられた。ヒト、、との圧倒的な存在感の差に、瞬きすらできなかった。

 その後、亮平の吐いた息で爆風に吹かれたような錯覚に襲われ、英治は腰を抜かしてしまった。

「大丈夫か?」

 と、亮平が顔を覗き込んできた。その声は先ほどより野太く重厚になっている。

「まあ、初めはそうなるよな」

 おそらく苦笑した後、亮平は右の鎖骨を三度叩いた。

 すると、先ほどの過程を遡り、人間らしい肌に覆われ、彼はもとの姿に戻った。

「驚かせてすまない。これで信じてもらえたかな」

 先ほどの彼の姿が、特殊メイクの類いだったとは思えない。そもそも、Xをただならぬ存在だと疑った時点で、宇宙人にしろ怪物にしろ、いることは覚悟していたはずだ。

 英治はゆっくりと息を整え、傍らの板を支えに立ち上がった。

「つまり……あんたは何たら星人で、変身ができるってことか」

「モルフの民だ。僕だけじゃなく、君も。それは信じないのか」

「当たり前だ。NEXTのやつも母さんに変身してたんだから、あんたもその仲間だと考えるのが自然だろ。やっぱり、宇宙人っていうのは嘘で、ここまでがNEXTの企みなのか。それとも、NEXTって組織が嘘で、他のやつらも宇宙人なのか」

「NEXTの変身技術は、モルフのテクノロジーを盗んだものだ。モルフのものには、遠く及ばない。やはり、すべてを信じてもらうには、ことの発端まで遡るしかないか……」

 亮平が呆れたようにため息をついた。


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