部活動顧問の断り方②勤務時間内しかやりません!! 《2020.8.23加筆修正》
①部活動の「職務命令」は可能であるが・・・
◯まず、「職務命令」によって部活動顧問を強要することは可能なのかということですが、結論から言うと可能です。
◯上記のサイトが詳細に記載してくれていますが、
教育委員会が定める学校管理運営規則の多くは,校長が教員に部活動指導業務を校務として分掌させることができると規定しています。
②「超勤4項目」に部活動指導は含まれていない
◯たとえば、東京都教育委員会を例に挙げると、
「校長は、所属職員に部活動の指導業務を校務として分掌させることができる。」
と規定しています。
◯しかし、校長の職務権限が適用されるのは、当然、勤務時間内に限ります。ここが一つ目のポイントです。
◯そして、もう一つのポイントは、校長には部活動に伴う残業を強制する職務権限はないということです。
◯たしかに校長には、勤務時間を超過して残業を命じる権限が与えられています。それを「超勤4項目」といいますが、
◯この超勤4項目とは、
①校外実習 ②学校行事 ③職員会議 ④非常災害
などに必要な業務の4つです。
◯つまり、部活動の指導による残業命令は、「超勤4項目」に該当しないのです。
◯このことから、部活動指導は教員が自発的に行っている業務(つまり、《労働時間》と認められていない!!恐ろしい!!!)という位置づけになっているのです。
③部活動顧問は強制残業が前提の最初から壊れた制度
◯教員の一般的な勤務時間は16時45分までです。だから、理屈でいうと、16時45分までは職務命令の発令によって部活動業務に従事させることが可能なのですが、それ以上の強制はできません。
◯しかし、部活動というのはどこの学校でもたいてい16時頃から開始され、18時から18時30分頃まで活動するのが一般的です。
◯一方で、教員の勤務時間はたいてい16時45分頃です。つまり部活動顧問を引き受けると必然的に最低でも1時間15分~1時間45分程度の残業を避けられないわけです。
◯周知の通り、教員に残業代はつきませんから、無償の労働=ボランティア(教員が自発的に行っている業務)ということになるわけです。
◯また、部活動終了時刻とともにただちに退勤できるわけではありません。生徒を校門の外に送り出し、運動部活動の顧問などは着替えなどして一息ついてから退勤すると18時30分~19時00分頃になります。
◯これはあくまで最速の例ですが、最速で退勤しても1時間45分(100分)~2時間15分(135分)は残業していることになります。
◯この記事を書いている2020年6月を例に、部活動業務による残業時間がどれくらいになるかを単純に計算してみます。
◯平日の勤務日数は22日間で、毎週水曜日を部活動の休息日とすると、活動日数は18日間です。すると、
18時30分に退勤した場合・・・18日✕105分=1890分=31.5時間の残業
19時00分に退勤した場合・・・18日✕135分=2430分=40.5時間の残業
◯以上のように、部活動の顧問業務を引き受けるということは、どんなに早く退勤しても月に30時間~40時間程度の残業は避けられないということになります。
◯繰り返しますが、部活動の顧問を引き受けただけでこうなるのです。
◯この事実だけでも、前回の記事(部活動顧問の断り方①~「教職調整額」で顧問強要を論理づけることはできない)で書いたように、↓↓↓
「1週間の残業時間」の平均が1時間48分であった半世紀前の状況をもとに算出された「教職調整額」を理論的な拠り所として部活動顧問を強要できると考えるのはあまりに愚かな拡大解釈であり、不見識だということがわかるはずです。部活動は最初から壊れた制度なのです。
◯また、多くの場合、部活動の指導を終えたらすぐに退勤できるというわけではありません。翌日の授業準備、教材研究、分掌業務、欠席者への家庭連絡、行事や面談の期間ならその準備もあるでしょうし、その他細かいことまで列挙していたら枚挙に暇がありませんが、部活動後に何かひとつでも仕事を始めると、20時や21時退勤などというのは珍しいことでも何でもないのです。
◯再び同じ条件で同じ計算をしてみると、
20時00分に退勤した場合→18日✕195分/1日=3510分=58.5時間/月の残業
(1週あたり14.625時間の残業)
21時00分に退勤した場合→18日✕255分/1日=4590分=76.5時間/月の残業
(1週あたり19.125時間/週の残業)
◯文部科学省が2016年(平成28年)度に集計して公表した「教員勤務実態調査」では、週60時間を超えて勤務している教員、すなわち週に20時間以上残業している教員は、小学校で33.5%、中学校では57.7%でした。週に20時間の残業というのは、21時退勤が平均的な生活ということを意味します。
◯20時や21時退勤などというのは珍しいことでも何でもないと書きましたが、まさに現場感覚に基づいた労働実態が調査結果に反映されているわけです。
◯しかし、これはあくまで部活動のない平日は定時で退勤したと仮定した場合の計算ですので、実態は推して知るべしでしょう。ここに土日の部活動や大会引率など含めると、時間外労働が100時間を超える月も珍しいことではありません。
◯すでに述べたように、教員には残業代がつきません。しかし、土日の部活動や大会引率には「特殊勤務手当」というものがつきます。
◯ただし、ここには交通費も含まれている(=交通費は別途支給ではない。つまり自腹ともいえる)ため、部活動の種類によっては交通費と昼食代で赤字になるというケースもあります。
◯なお、部活動の改革が実現していないにもかかわらず、すでに段階的に手当の引き下げが実施されました。こういうのは早いわけですね)
④勇気を出して「勤務時間内しかやりません」の一言を
◯では、望まない部活動を強要された場合、どのような戦い方ができるか。
「勤務時間内しかやりません」
◯この一言だけでかまいません。「勤務時間内しかやらない」ということは、16時から16時45分までの45分間だけしか活動しないということですが、ミーティングや解散の時間を考慮すると、16時30分には活動を終える必要があるでしょう。つまり、実質的には30分間しか活動できなくなります。
◯しかし、教員というのはもともと責任感が強いので、また実際にそんな強硬姿勢を貫いたら、生徒・保護者からの強い非難にさらされることは明らかですから、そういうことを実際に行動に移す勇気のある教員はいない。結局、涙をのんで諦めざるを得ない。そうやって現に「ブラック部活動」となってここまできたわけです。
◯しかし、そこをもう腹をくくって実行に移すしかないのです。あるいは本当に実行に移しかねないと思わせることで、相手を焦らせるしかない。どちらかといえば現実的には後者が目的です。そのことによって部活動顧問の強要から身を守るしかない。こちらが一筋縄ではいかない相手だと思わせるしかない。やっかいな相手だとあえて思われることによって距離を取るのです。残念ながら我々にはそれしか方法はないのです。
◯戦うということは勇気がいります。でも、その勇気を出して一歩踏み出してみることでしか何も変わらないのです。みなさんの勇気ある一歩を応援しています。
◯「勤務時間内しかやりません」をもっと論理的に、そして法的に根拠を固めて校長と戦いたい方は、より詳しい記事をこちらに書かせていただきましたので、コチラを↓↓↓ *より自信と勇気をもって臨めるはずです!
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