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研究する

前を歩く人の背中に「夏休み特別教室」と書いてある。
その下に星座が描かれていて、科学館のイベント記念のTシャツだろうか。この男性は職員さんか、子どもを連れて行ったお父さんか。

夏休みの宿題に自由研究というものがある。そのだいたいを工作系のそれで乗り切ってきたように思う。中学校では秋の文化祭前が提出期限だった。道祖神についての民俗学的考察を発表した同級生がいた。
私はと言えば、さすがに工作から脱してはいたものの、ゴッホのことを書いたりしていた。画家のゴッホがその頃好きだった。道祖神の秀才は興味の先を調べ分析し、こちらは画集や書簡集を開いてうっとりする。じつに子どもっぽい。研究ということができない質なのかも知れないと、稚き自らを顧みる。


今もし小学生なら、ウーバーイーツの配達員さんのリュックのことを調べるのはどうだろう。宅配バイクの荷台とどちらが揺れないか。あのリュックをママチャリの後ろの荷台に乗せているのを見たことあるけれど、あれはどうなのか。
非接触型の体温計の仕組み。ほんとに計れてる?そう思うよね。
エレベーターに6名ずつしか乗せずに百貨店の来客をどうさばくのが効率的か。

便利な時代だから、わからないことがあればすぐにグーグルさんに聞けばよい。いまの子どもたちはどうしているのだろう。先生たちは?

中学生ならジョンズ・ホプキンス大学について調べる。聞き覚えあるでしょう、ニュースでCOVID-19の感染者数を言う時、必ずこの大学名が枕詞となってついてくる。検索してみると、アメリカの私立大学だ。1月末に公開されたこの大学のダッシュボードには、日に10億ものアクセスがあるという。各国のメディアが、あるいは保健機関があてにしている。どうやって感染者数を常に把握しているのか。

ジョンズ・ホプキンス大学のCOVID-19ダッシュボードは、主要メンバー5名と協力者が運営している、とあるサイトには書かれている。同チームは、国境も時差もまたいで活動しているらしい。メンバーが各国にいることで、24時間体制で集計の更新ができるという。あとはAIの力。たぶんね。研究おわり。

このウィルスには季節性があるともいう。
第2波というものがきた時、わたくし達が闘う相手は誰なのだろう。街が止まれば、仕事を失う人がいる。いのちと経済、いのちが大切なのに経済を止めると困るひとが出るのはなぜ?グーグルさんにもきっとわからない。



梅雨の晴れ間。
空気が乾いてほっとする。呼吸がしやすい。
街路樹の木陰がきれいだ。
夕食を作りながら、もしかしたら今がいちばん幸せなのかも知れないと思ったりする。

あのピッとやる体温計で温度以外も測れたらいいのに。さくらんぼの糖度とかさ。ピッこれは甘い、これは酸い。ピッあの人は真剣、この人はそうでもない。


夜まで晴れが続けば、今夜は星が見られるだろうか。星か。
はくちょう座こと座へびつかい座。Tシャツの星座を辿って行ったその先に、夏がある。

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