磯川大地

いわしくらぶ店主

磯川大地

いわしくらぶ店主

記事一覧

続・生き方はふたつある

前編をまだ読んでいない方はまずはこちらからどうぞ。 「目標はもたずに、ひたすら目の前にあることに一所懸命取り組む。すると自ずと道が開けてくる、という考え方もある…

磯川大地
1か月前
2

生き方はふたつある

「生き方は大きく分けてふたつある」 本屋での丁稚奉公時代、お客さんのなかに「日本でいちばん納税してる」おっちゃんがいた。当時はまだ長者番付(高額納税者)が公開さ…

磯川大地
4か月前
8

呪い

ちゃんと読み物にしないといけない。そんな意識がどこかにあったのかもしれない。僕はいつもパソコンを開いたまま文章がかけずにいた。パソコンの右隣に置かれたカフェラテ…

磯川大地
4か月前
3

お茶のこと

毎日文章を書くのが楽しい。 仕事をはじめる1時間前に自分の店にやってきてノートパソコンを開いてから、その横に水の入ったコップと灰皿をおいて、タバコに火をつける。…

磯川大地
5か月前
7

店を家にする

いわしくらぶを「店」から「家」にした。 とは言ってもここに寝泊まりするわけじゃない。自分のなかでの認識を変えただけだ。「店だから〇〇しなきゃ」みたいな固定概念に…

磯川大地
5か月前
21

祭りばやし

いわしくらぶのオープン前に店の準備をしていると、窓の外から祭囃子が聞こえてきた。今日も空は晴れていて背の高い街路樹の葉と葉のあいだがきらきらと光ってみえる。 ド…

磯川大地
5か月前
5

筆ならし

なんだか最近どうも文章を書き始めたほうがいい気がしてやっと手をつけはじめた。「文章でも書いてみたら」という友だちもいるし、占いでも「文筆を仕事にするのが吉」と書…

磯川大地
5か月前
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布団屋さんになってはいけません

※10年以上前に聞いた小咄(こばなし)です。 「きみは何屋さんになりたいの?」 「わかりません。だけど、商人(あきんど)にはなりたいです」 「ハハハ。そうか、い…

磯川大地
3年前
459

続・生き方はふたつある

前編をまだ読んでいない方はまずはこちらからどうぞ。

「目標はもたずに、ひたすら目の前にあることに一所懸命取り組む。すると自ずと道が開けてくる、という考え方もあるんだよ」

「そうなんですか。でも、なんかそれじゃあ不安に思っちゃいそうです」

「ハハハ、そうだよな」

そう言っておっちゃんは一瞬、目を細めて窓の外を睨んだ。

「だけどな、逆に考えてごらん。今の自分が立てられる目標なんてたかが知れて

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生き方はふたつある

「生き方は大きく分けてふたつある」

本屋での丁稚奉公時代、お客さんのなかに「日本でいちばん納税してる」おっちゃんがいた。当時はまだ長者番付(高額納税者)が公開されていたのだ。おっちゃんは10年以上つねに日本の長者番付トップ10に名を連ねていた。

身長はそんなに高くなくて、お腹もすこしでてるんだけど、なぜかかっこよく見えた。いつも黒のポロシャツに黒のスラックス、黒々とした髪をオールバックでビシッ

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呪い

ちゃんと読み物にしないといけない。そんな意識がどこかにあったのかもしれない。僕はいつもパソコンを開いたまま文章がかけずにいた。パソコンの右隣に置かれたカフェラテだけが減っていく(左隣の灰皿にも吸い殻が溜まっていく)。ちゃんと読み物にしないといけない。それは呪いだ。誰もそんなものを求めていないのだ。自分が勝手にそう思っているだけ。本当は自分だってそんなものは求めていないくて、ただ書くことだけを求めて

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お茶のこと

毎日文章を書くのが楽しい。

仕事をはじめる1時間前に自分の店にやってきてノートパソコンを開いてから、その横に水の入ったコップと灰皿をおいて、タバコに火をつける。深呼吸をするように煙を吸い込んでから、しばらく肺にためて吐き出す。フー・・・。

noteを開いてパタパタとその日あたまのなかに浮かんだことを一文字ずつ打ち込んでゆく。すると、僕の脳みそが「・・・ピー・・・トットットッ・・・ピー・・・」と

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店を家にする

いわしくらぶを「店」から「家」にした。

とは言ってもここに寝泊まりするわけじゃない。自分のなかでの認識を変えただけだ。「店だから〇〇しなきゃ」みたいな固定概念に縛られるのをやめようということだ。と言いたくなるくらい「店」というものに飽きてしまった。そして、そのかわり「店」よりも自由にできる場所という意味での「家」をやりたくなった。ひらかれた「家」をやりたい。

「家」はいい。キッチンもあれば、寝

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祭りばやし

いわしくらぶのオープン前に店の準備をしていると、窓の外から祭囃子が聞こえてきた。今日も空は晴れていて背の高い街路樹の葉と葉のあいだがきらきらと光ってみえる。

ドドン、ドン。

太鼓の音とともに練り歩く大人や子どもたちの楽しげな声が聞こえる。

ゴールデンウィークのこの時期だけは、「オフィス街」としての水道橋ではなく、一地方都市としての水道橋になる。スーツを着て早足で歩く人々の姿はこの時期に限って

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筆ならし

なんだか最近どうも文章を書き始めたほうがいい気がしてやっと手をつけはじめた。「文章でも書いてみたら」という友だちもいるし、占いでも「文筆を仕事にするのが吉」と書いてあるし、自分としてもたまにInstagramとかで長文投稿すると気持ちがいい。「やってみるか・・・(ハァ)」と。つい溜め息がでてしまうのは、やるからには続けたいから。そして続けたいのに続かないから。当然そんな僕のお尻を叩いてくれる人もな

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布団屋さんになってはいけません

布団屋さんになってはいけません

※10年以上前に聞いた小咄(こばなし)です。

「きみは何屋さんになりたいの?」

「わかりません。だけど、商人(あきんど)にはなりたいです」

「ハハハ。そうか、いいね」

僕がまだ商人を目指して、江戸川区のある書店に住み込みで働いていたときのこと。常連の漢方薬会社の社長さんが話してくれました。

「いいことを教えてあげよう」

「はい」

「布団屋さんになっちゃいけないよ」

「ふ、布団屋さん

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