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闇を切り裂く話。

どうにも昔のブログや日記を残すのは恥ずかしいが、消すのは勿体ないと思いながら、恥ずかしい記事をネットに垂れ流し状態だったので、これまでのものは非公開化して、改めて自分で読んでも「これならだいじょうぶ!」と思える記事だけでもここに移行していこうと思う。

------2016年04月26日の記事------

元々僕は労働というものが凄く苦手で、いや、苦手というかそもそも身体が受け付けてくれないという言葉が正しいかもしれない。
それは「働きたくない」という強い意志や意地から来るものでは無いし、できる事ならば約束された月々のお賃金というものが貰えるのならそれが理想ではあるとも思っている。
ただ、本当に文字通り身体が受け付けてくれない。

例えば、週4日勤務のバイトでもやろうものなら、ものの二週間で血便が出て身体が労働を拒否するし、大体、2ヶ月目くらいにはクビになるか、「ヤクザに拉致されたので仕事に行けなくなった」などのとんでもない嘘をついて辞めることが多く、本当に身が持たない。きっと、僕は労働アレルギーなのかもしれない。
※2018年の冬から一定期間だけ働いていたデザイン会社は比較的ストレス無く働けた。給料がとても良かったからかもしれない。


そんな僕でも生活するためには当然お金が必要となる。将来の目標は不労所得の四文字だが、なかなか目指す先が高みにあり過ぎるため、現在はフリーランスでデザイン全般の仕事を請け負ってなんとか収入を得ている。

そんな中、先日、映像編集の仕事で全く知らないビジュアル系バンドのPVの編集依頼があった。

普段、縁の無いジャンルだったので楽しく編集していたのだが、ふと"闇を切り裂いて"というフレーズが耳に入ってきた。

それを聞いた僕は無意識的に「また闇を切り裂いちゃったね」と思ったところからこの度の本題が始まる。

何故なら僕の友だちのバンドだけでも"闇を切り裂く"というフレーズを歌詞に入れているバンドが3バンドもいる。実際には把握してないだけでもっといるかもしれない。

それぞれ、ジャンルは全く別のものなのに、何故みんな闇を切り裂きたがるのか。と言うか、「希望を掴め」とか「朝日が昇る」とかありきたりな表現ではなく、「闇を切り裂く」という非常に難解な表現を使うバンドが自分の友だちだけで3バンドって相当多いのではないか。そして、実は闇を切り裂くという表現、伝えんとしてる事は分かるのだけど、表現としてちゃんと理解出来てない自分自身に気付いてしまった。だって、闇は照らすものであって、切り裂くものではないのだ。

そんなことを考えていると、僕は居ても立ってもいられず、納期ギリギリの仕事を放っぽりだして、「闇を切り裂く」について調べる事にした。

まず、歌詞検索サイトによると、188組のミュージシャンが闇を切り裂いている事が分かった。著作権登録してるだけでこれだけの数がいるので、実際にはもっと多くのインディーズミュージシャンが闇を切り裂きまくってると考えられる。
ちなみに念のため他の歌詞検索サイトでも調べてみると合計で649ヒットした。この数の多さは、これが非常にポピュラーな表現であると言える。

そういえば、昔、ジャパコアバンドの友だちが「新しくバンドを始めたらオレは闇を切り裂きたい」って言ってた気がする。っていうか、その発言のせいで闇を切り裂くという表現が僕の中で敏感に反応するワードになったのではなかろうか。いや、絶対そうだ。

そういうわけで、闇を切り裂くという言葉がかなり一般に浸透してる事実が分かったところで、続いては闇を切り裂くという表現についての調査へ乗り出した。

ただ、困った事に一般に浸透していると思っていた「闇を切り裂く」という表現だが、その由来や意味などは調べても出てこず、小説や詩の中でのみ好まれる表現である事が分かってきた。フィーリングで意味を感じとる他ないのかと壁にぶち当たっていた僕は、とりあえず闇以外には他にどういったものが切り裂かれているか調べてみる事にした。

切り裂くような風
耳を切り裂くような叫び声
夜を切り裂く銃声
切り裂くドリブル

なるほど、意味は様々だが、主に鋭さを表現するものが多いようだ。
ただ、あまりポジティブな意味合いとは違う気がする。

しかし多くの人たちが意図している「闇を切り裂く」という表現は、闇(ネガティヴな環境や感情)を急激に照らすような変化を起こす(困難を乗り越える・希望を持つ)という前向きな意味で間違いないはずである。

ただ、そうなると、「闇を切り裂く」より「闇を切り開く」という表現の方がピッタリくるのではと思っていたのだが、また歌詞検索サイトで調べると、なんと闇を切り開くという表現はたったの一件。
すみません。僕が安直でした。

もはや、闇を切り裂くという、誰も教えてくれない難解な表現が何故こんなにも市民権を得てるのかその答えに辿り着けそうにないまま、文字通り僕は切り裂く事が出来ない闇の中を彷徨い始めていた。

「くそう、どうやって闇を切り裂いたら良いんだ…俺にも闇を切り裂くほどの光が欲しい…って、え?!…っっあ!!!!」

ドガーーーーーン!!!!!

その瞬間僕の頭に雷鳴と共に衝撃が走った!

「あった!!暗闇を一瞬で照らすものが!」

雷だ!!!!間違いない!!
みんな雷で闇を切り裂いていたんだ!

勝手にナイフかなにかで闇を切り裂くイメージを抱いていた自分が愚かだった。なんと僕は粗暴なイマジネーションの持ち主だったのだろう。

雷こそ闇を切り裂き光をもたらす聖なる存在!
いつだって雷は闇をメチャクチャに切り裂いていたというのに、何故僕はずっと気づかなかったのだろう。
闇を切り裂くという表現は何ひとつおかしくなかった。
この文章を書きながら、今まさに自分の中でモヤモヤしてた感情が晴れたのです。

いや、この瞬間、僕の心の闇も切り裂かれたと言うべきだろう。

------追記------

この記事を載せたあと、数人のバンドマンから「俺も実は闇を切り裂いていた」と報告があり、この表現には底知れなさを感じた。多くの人を魅了するある意味発明的な表現かもしれない。もはや、この表現の発祥は一体誰なのか気になるところである。
そして、この表現の魅力に気づいたタツヤくん(Sit In Waves / Orion Punx Records )にはどうにも頭が上がらない。

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