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難解映画【TENET テネット】攻略-文系にもやさしい徹底解説・考察 ※ネタバレあり

クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』(以下TENET)を観ました。ノーラン監督はこれまで『メメント』や『インセプション』、『インターステラー』で時系列の入れ替えや時間の拡張や超越を描いており、いわば時間をテーマとした映画のエキスパートです。
今作『TENET』も時間を扱う作品な訳ですが、今作ではこれまでの映画に無かった【時間の逆行】が描かれています。それもただ逆行するのではなく、順行する時間と複雑に絡み合う為、今作は非常に革新的であると同時に物凄く難解な作りとなっています。

この映画においては「無知は武器」とされ、主人公も殆ど何も分からないままミッションに参加しており(その点はダンケルクと重なります)、観客にも情報が与えられないまま瞬く間に物語が進んでいく為、初見でその物語を理解するのは恐らく無理ゲーです。(キャストもノーラン監督から渡された脚本を理解出来ず何度も何度も読み直し、質問しまくったそう)
ただ一度この作品を観た上で、ルールや設定・世界観を理解して時系列を整理して考えていけば、科学的な知識が無くとも大枠は十分に理解可能です。
内容を理解した上で『TENET』を観ると、いかにこの作品が緻密に作り込まれた凄まじい超大作であるかが分かります。間違いなく『 TENET』は二度目の方が面白いです。これは声を大にして言いたい。

本noteは既にTENETを観た人に向けて、内容の理解の手助けを目的としたネタバレ・解説記事です。ただし当方は科学的な話には一切明るくない為、〇〇力学といったややこしい話はほぼ省きます。また特に複雑なカーチェイスとラストの大戦シーンは二度目でもかなり混乱してしまい、到底理解しきれていないのであくまで大枠の解説になります。
もう一度言いますが『TENET』は二度目の観賞の方が間違いなく面白いです。是非おおよその内容を理解した上で、もう一度劇場に足を運んでみて下さい。一度目で味わえなかった感動がきっとそこにはあるはずです。

TENETにおける時間の考え方について

まずはこの映画における時間の考え方について説明しましょう。
時間とは一方向にしか流れない不可逆性を持ちますが、未来で発明された''回転ドア''のような装置により時間の流れに逆行する事が可能になりました。(エントロピーを減少させる事で時間の逆行を可能にする、という仕組みですが上述の通り難しい話は無しにします。わからんので。)
但し時間を逆行出来るのはその回転ドアに入れる人や武器のみで、逆行できるのもドアに入った時間・地点から、というかなり使い勝手の悪い仕組みです。なので好きな時間を行き来できるタイム・トラベルとは異なります。流れるプールで自分だけUターンして逆方向に泳ぐようなイメージですね。
当然本来ある時間の流れに逆らっている為、【そのままでは呼吸できない】【生身で過去の自分と触れると対消滅してしまう】というような不具合も発生してくる訳ですが、因果関係も逆になる(先に結果があって原因が起こる)ので望ましい結果になるよう過去の自分や仲間を導くなんて使い方が出来ます。これを劇中では過去と未来で現在を挟み撃ちにする''挟撃作戦''と呼んでいます。

どういうストーリーなのか?

TENETのストーリーをもの凄く簡単に言うと「現代人vs未来人の戦争」を描いた映画です。劇中ではそれを第三次世界大戦と言っていましたね。
ただし、この劇中には未来人は出てきません。なぜなら上述の通りこの作品で可能なのはタイムトラベルではなく時間の逆行である為です。未来人のいる世界が仮に100年後であるなら、未来人が現代まで逆行するのにも100年掛かってしまいます。現代に辿り着く頃には老衰で戦争どころではありません。なので未来人は、自分たちの代理として今作の悪役である【セイター】を利用して戦争を起こそうとしています。

また、映画の終盤で未来人と戦う組織【TENET】も実は近い未来の主人公が結成したものと言う事が判明します。
つまり、上でこの映画を「現代人vs未来人の戦争」と述べましたが、実際劇中で起こるのは「主人公軍団(近未来の自分の代理)vsセイター軍団(未来人の代理)の戦争」という壮大な代理戦争という訳ですね。

未来人の目的とは?

未来人が欲しいもの、それは正常な地球環境です。
未来人が生きる遠い未来の地球は、環境破壊により破滅間近の状態にあるようです。ノーラン監督の過去作『インターステラー』で人類は滅びゆく地球から逃れる為宇宙に活路を見出しましたが、TENETの未来人は時間を逆行する技術を使い過去の地球に逃げようと画策します。
但し、上で説明したように時間を逆行すると呼吸が出来なくなるなどのデメリットが大きい為そのままでは当然生活は出来ません。そこで未来人はそもそもの時間の流れを逆にすることで、自分たちが逆行してもそれが順行になるよう世界を変えようとします。

その時間の流れを変える為に必要な装置が、とある未来の科学者が発明した9つの部品で構成される【アルゴリズム】です。ただそのアルゴリズムを起動してしまうと過去の時間の流れが変わってしまう為、過去の人類は呼吸出来なくなりあっという間に死滅してしまいます。過去の人類が滅亡するとその子孫である自分たちも滅亡してしまう(これが劇中で語られる【祖父殺しのパラドックス】です)と考えたその未来の科学者は絶望し自殺、アルゴリズムを悪用されないように分解した上で時間の逆行を使い過去の世界に封印しました。(その分解された部品の一つが今作のキーアイテムとなる【プルトニウム241】です。)
しかし未来人たちの住む地球は崩壊目前。ウダウダと考えている余裕はありません。未来人は過去の人類が死んでも自分たちは生き残るかもしれないという可能性に賭け、『祖父殺しのパラドックスなど知るか!』とセイターを操り過去の世界に封印されたアルゴリズムを起動しようと目論みます。

TENETとは?

そもそもTENETとは何なのか?実際劇中でその部分については殆ど語られていません。
TENETは主に集団における信条、主義、原則を表す単語です。そしてこの劇中では「世界を守る」という信条を基に集った未来人と戦う組織=【TENET】と私は理解しました。
TENETという言葉自体はラテン語の回文【SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS(農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする)】から来ており、劇中にはその回文のTENET以外の単語も登場しています。

SATOR → セイター。今作の悪役。
AREPO → アレポ。ゴヤの贋作を描いた画家。
OPERA → オペラ。物語はキエフにあるオペラハウス(National Opera of Ukraine)から始まります。
ROTAS → ロータス社。オスロ空港に美術品などを保管する金庫(フリーポート)を建設した会社。

またTENETはTEN(10)という言葉を前後から繋ぎ合わせた言葉です。
そう、観た人はお気づきだと思いますがこれは作品のクライマックスである【過去と未来の10分間の挟撃作成】をも表している訳です。

登場人物相関図

『TENET』を複雑している理由の一つが妙に多い登場人物です。
どういうポジションなのかあまり説明がないままフェードアウトしたりするので初回はその辺りも混乱するかと思います。(この役本当に必要か?みたいな役があるもの話をややこしくしています。クロズビーとか。)
ということで以下に最終的に判明した主要人物の相関図を作りました。こうやって纏めるとプリヤの最期は理不尽ですね。

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そして主要人物の概要についても軽く説明していきましょう。

名も無き男・・・本作の主人公には名前がありません。彼は世界を股にかけて活躍するCIAのスパイでしたが、今作冒頭のオペラハウス襲撃事件で敵に捕まり拷問の末自殺を測ります。それがTENETに認められ世界を救うミッションを与えられる訳ですが、今作のラストで未来の彼こそがTENETを創設した組織のボスであるという事が分かります。

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ニール・・・名も無き男のパートナーであり、本作におけるもう一人の主人公です。その正体はTENETのボスである未来の名も無き男から指令を受け過去にやってきたエージェントでした。映画の終盤で10分間の挟撃作戦を実施したTENETですが、じつは数年先の未来から壮大な挟撃作戦は始まっていたんですね。ニールの口ぶりから未来の名も無き男と非常に親しかった事が伺えます。名も無き男がダイエット・コーラが好きと知っていたのもその為です。
口癖は「起きたことは仕方がない」、因果関係が逆さの世界で戦ってきた彼だからこその台詞です。そしてラストで彼は最終的に名も無き男を守る為に命を落とす事が分かります。それを知ってても尚過去に戻りゆくニールが名も無き男に言った「これが美しい友情の終わりだな」という台詞が泣かせます。これは不屈の名作【カサブランカ】の有名な台詞、「これが我々の美しい友情の始まりだな(Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship.)」のオマージュです。
ニール役のロバート・パティンソンは先日Netflixで公開された『悪魔はいつもそこに』でクソ最低神父を演じてたのに、今作では中身も見た目も格好良い男の中の男を演じます。そのギャップが最高ですね。

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セイター・・・本作のヴィラン。滅茶苦茶悪いやつです。
故郷はスタルスク12、本作の最終決戦の舞台でもあります。スタルスク12はソ連時代には20万人の人口を有した核施設のあった街です。しかし爆発事故が発生し核弾頭が散乱、国に棄てられスタルスク12は地図から消えた街となってしまいました。
10代のセイターはそんな核弾頭が散乱するスタルスク12の廃墟でプルトニウムを集める危険な仕事をしていました。毎日に絶望しながら仕事をしていると、ある時地中からカプセルのような物を見つけます。中には自分に充てた未来からの契約書。恐らく中身は『富と力を与える代わりにアルゴリズムを集めろ』といった内容でしょう。彼は証拠隠滅の為一緒に仕事をしていた同僚も殺害します。そして彼はその後未来から送られてくる金や逆行装置を利用して成り上がり、見事世界の運命を握るフィクサーとなった訳です。
本作で彼は余命幾ばくも無い末期の膵臓癌。彼が一番幸せを感じていた瞬間にアルゴリズムを起動する事で全人類を巻き込んだ壮大な自殺をしよう、というのが彼の目的です。迷惑な奴ですね。
因みにノーラン曰く、セイターを演じたケネス・ブラナーは根が優しくとても親切な人間なので悪人を演じるのにとても苦労してたそうです。

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キャット・・・本作のヒロインです。セイターの妻で息子もいますが、夫婦としての関係性は破綻しています。凶暴で人を傷つけることを厭わないセイターを恐れ、息子と逃げ出したいと考えていますができません。というのも彼女は絵画の鑑定士ですが、彼女と親しいアレポという画家が描いたゴヤの贋作を本物として900万ドルで売りに出してしまいます。そしてそれを購入したのは夫のセイター。セイターがそれを偽物だとして通報すればキャットは重い詐欺罪で逮捕されていまいます。逮捕されたら息子と会うことすら出来なくなるので、キャットは大人しくしている他ありません。
それ故、名も無き男からゴヤの贋作を始末したと聞いた時心から嬉しかったでしょうに、それが嘘だと分かった時の絶望は想像にも及びません。今作で一番悲壮で、かつ逞しい役柄です。母は強し、ですね。
因みにアレポと恋仲であったかどうかの真偽は不明です(本人は否定していましたが)。キャット曰くアレポは『外に出れず、メールも出来ない状態』と言っていましたが、セイターから想像を絶する仕打ちを受けているのかもしれませんね...。(首に穴を開けられてちょん切ったタマをブチ込まれたり...ヒエ〜...)

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本作の時系列=タイムラインについて

まず、逆行の前提としない単純な時間の流れを整理しましょう。
単純な時間の流れで大きな出来事を並べたタイムラインが以下の通りです。
映画の始まりであるオペラハウス襲撃と、映画終盤のベトナムのボート上のシーン及びスタルスク12の戦争シーンは実は同タイミングで起こっています。そして映画の進行通り時間は進んでいき、この映画における先端となる時間がキャットがセイターに撃たれたシーンとなります。
キャットが撃たれたシーンを軸に主人公も逆行を使い、この映画の時間も逆方向に動いていきます。

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名も無き男のタイムラインとあらすじ

次に主人公である名も無き男のタイムラインを見てみましょう。
名も無き男のタイムラインに沿ってこの映画は進んでいきますので、つまりは映画『TENET』のタイムラインと言っても差し違いないでしょう。
劇中のルールに則って、赤矢印(上半分)は順行、青矢印(下半分)は逆行を表しています。矢印に付随している番号に沿って起こった出来事のあらすじを説明していきます。

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1. 爆破テロが起こるオペラハウスでCIAの任務を遂行するが敵に捕まります。
2. 拷問を受け、自殺を図るがTENETにより救出されます。風車内で回復。
3. 逆行銃の製造元を追ってムンバイへ。ニールと仲間になりプリヤからセイターの情報と近づく為の情報を持つクロズビーを紹介して貰います。
4. ロンドンでクロズビーと会い、セイターの妻であるキャットと近づく為のアイテム(ゴヤの贋作)を受け取ります。
5. キャットと面会し、キャットの弱みであるセイターが持つもう一つの贋作を破棄すればセイターに取り次ぐと(無理やり)話をつけます。
6. 贋作の保管場所と思われるオスロ空港にあるフリーポートへ。空港に飛行機を追突させる事でセキュリティを突破しましたが、贋作は無く突如現れた逆行兵士(=未来の自分)と戦闘になりました。その際逆行兵士に傷を負わせます。
7. アマルフィでキャットと再会、贋作を破棄したと嘘をつきセイターと会いました。そこでプルトニウム241の強奪作戦を持ちかけます。
8. テナン警察からプルトニウムを強奪したものの、セイター(逆行)がキャットを人質に取った為、止むを得ずプルトニウム241の空箱をセイターに渡し、中身のプルトニウム241を見知らぬ逆行車(後にクラッシュする)に投げ入れます。
9. 暴走するキャットの車に飛び乗り何とか車を止めた後、セイターの軍にキャット共々捕らえられ、仕方なく嘘のプルトニウムの在り処を教えます。その後キャットが逆行弾で撃たれるところを目撃します。
======ここから逆行======
10. 時間を逆行しキャットに駆け寄ります。危篤状態のキャットを救う為、キャットを逆行させ治療することになりました。
11. 一方で主人公はプルトニウム241の回収と、その先の未来で起きたキャット銃撃を防ぐ為逆行車でセイターを追いましたが、クラッシュしていた逆行車は自分だと気付きました。挟撃作成で全てを見透かしていたセイターにプルトニウム241を奪われ、車に火をつけられ凍死しかけます。
12. 目を覚ますと救出されており、キャット・ニールと共にコンテナの中にいました。キャット治療のためオスロの飛行機衝突まで逆行し、そこで再度順行に戻ることを画策します。(追突事故の後は警備が厳しくなる為侵入が困難)名も無き男は腕に覚えのない生傷があることに気づきます。
13. 飛行機衝突まで逆行し、飛行機激突騒動のどさくさに紛れてフリーポート内の回転ドアで順行に戻ります。その際、過去の順行の自分と戦闘になり腕に傷を負います。先ほどの生傷はこの傷が順行したものだったのです。
======ここから順行======
14. 完全に揃ってしまったアルゴリズムがどこにありセイターがいつ、どこで起動するかを予想します。キャットの情報からセイターが最後に幸せを感じていた瞬間で、かつその後セイターの姿を見なかったベトナム湾で起動すると推測。同時にアルゴリズムの居場所がセイターの故郷であり、オペラハウス爆破テロと同タイミングで爆発事故が起きていたスタルスク12にあると特定し、最後の決戦に向け最後の逆行をします。
======ここから逆行======
15. 名も無き男はスタルスク12で爆発があった10分前まで逆行し、アルゴリズムの奪還を目指します。
======ここから順行======
16. 順行に戻り爆破10分前の戦場に降り立ちました。名も無き男はアイブスと二人で地下にあるアルゴリズムの奪還を目指します。しかしアルゴリズムの目前で鍵の掛かった扉とセイターのボディガードであるボルコフに行く手を阻まれます。扉の前には特徴的なストラップを付けた死体が横たわっていました。
アルゴリズムがカプセルに入る寸前、絶体絶命かと思われたその時、横たわっていた死体が突如蘇ります。実はその死体は逆行兵士で、自分を銃弾から守り内側から扉の鍵を開けて去っていきます。扉の内側に突入した名も無き男はボルコフを葬り何とかアルゴリズム奪還に成功します。そして現行ニールが天井から垂らしてくれたロープに引き上げられ、爆破の瞬間に命からがら逃げ延びます。
そうして未来人との戦いに勝利し、ニールからTENETのボスが数年後の自分であり、ニールに指令を下したのも自分であることが伝えられます。
分解されたアルゴリズムの一部を受け取った際、彼が特徴的なストラップを付けている事に気付きます。そう、自分を守ってくれたあの死体はニールだったのです。ニールは自分が死ぬという運命に気付きながら、主人公を守る為再度逆行することを選びます。名も無き男は最後に友情の言葉を述べ、ニールが選んだ運命を噛み締めながら別れます。
17. 全てが終わった後、アルゴリズムの存在を知るキャットを殺そうとするプリヤの下に現れる名も無き男。プリヤに指令を出していたボスが未来の自分であることを告げ、キャットを守るためにプリヤを殺します。未来の自分が与えた指令に反旗を翻し、彼は初めて運命に逆らう事が出来たのです。そうして物語は幕を閉じます。
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これが主人公の名も無き男に起こる出来事です。この映画で最も難解なのが【順行と逆行が入り混じるカーチェイスシーン】と【敵・味方・順行・逆行が入り混じり、時に入れ替わりが起こる終盤の戦争シーン】の二つなので、そこさえぼんやりとでも理解しておけば、全体を把握するのはそう難しくないと思います。

ニールのタイムラインとあらすじ

続いてこの作品第二の主人公であるニールのタイムラインが以下の通りです。名も無き男と共通する箇所に関しては簡素化しています。

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======ここから逆行======
1. 前提としてニールは数年後の未来から来た未来人です。主人公の命を受け、オペラハウスの爆破テロの前まで逆行してきました。
======ここから順行======
2. 特殊工作員としてオペラハウスに紛れ込んだニール。そこで彼は逆行弾を使い、変装を見破られ殺されそうになっている名も無き男を救います。(カバンに付いているストラップが証拠、映画終盤でその事が判明)
3. 名も無き男の仲間になりプリヤの屋敷に侵入します。
4. 飛行機衝突の際、襲いかかってきた逆行兵士を追い詰め、それが未来の名も無き男であることを知ります。その為、急いで自分自身を殺そうとしている現代の名も無き男を止めます。
5. プルトニウム241を警察から奪った後、セイターの軍と銃撃戦になりますが 、ニールもTENETの応援を呼び難を逃れます。
======ここから逆行======
6. TENETの応援を呼んだことから、名も無き男にニールは初めから TENETの人間だったと気付かれます。
7. 名も無き男に同行し、キャットを救う為オスロ空港の飛行機追突事故まで逆行します、そこで順行に再度戻ります。
======ここで順行しすぐ逆行======
8. 最終決戦では逆行チームの一員として、スタルスク12の爆心地の敵の駆逐と情報収集に奔走します。逆行サイドから名も無き男が敵の罠に嵌まると知ったニールは急いで順行に切り替えます。
======ここから順行======
9. 名も無き男が罠に嵌まる直前に戻ったニールは、名も無き男の後をクラクションを鳴らしながら車で追いますが結局罠に嵌まるのを止められませんでした。その後アルゴリズム奪還後の爆発直前、爆心地に向かったニールは地下にいる名も無き男の元にロープを垂らし、トラックで引っ張る何とか間一髪で救出に成功します。
人類を救った後、ニールはもう一度逆行すること選びます。なぜなら自分が逆行して名も無き男を凶弾から命をかけて守り、地下の鍵を開けることを知っているから。それが自分の使命だと理解しているんですね。ニールは永遠の別れであると理解した上で名も無き男に『これが俺たちの美しい友情の終わりだな』と別れを告げます。
======ここから逆行======
10. 再度逆行したニールは内側から地下扉の鍵を開け、主人公を庇って死にます。

こうして整理してみると、ニールは主人公の命を同じタイミングで三度救っていることになります。(一度目:オペラハウスで銃を突き付けられた瞬間/二度目:スタルスク12爆発の瞬間/三度目:ボルコフに撃たれた瞬間)
幾度となく時を超え、名も無き男を守り続け、最終的に自分の命を犠牲にする男ニール。完全に主人公の風格です。
なんだかターミネーター1の主人公、カイル・リースを彷彿とさせますね。

セイターのタイムラインとあらすじ

続いて本作のヴィラン、セイターのタイムラインです。存在感が強すぎて結構ややこしい動きをしているかと思いきや動きとしては至ってシンプルです。

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1. アマルフィで名も無き男と出会います。そこで探していた最後のプルトニウム241の在り処と、名も無き男がそれを強奪することを知ります。
2. テナンのフリーポートでキャットを殴り逆行へ。
======ここから逆行======
3. まず逆行銃で現行キャットを撃ちます。その後名も無き男から嘘の情報(プルトニウム241の在り処)を得ますが、挟撃作戦で予めその情報を過去に伝えることでそれが嘘の情報であること、本当のプルトニウムの在り処(=クラッシュする逆行車の中)を知ります。
その後キャット(キャットは順行なので銃で撃たれる前に戻っている)を連れ出し順行の名も無き男とカーチェイスします。その後キャットを置き去りに仲間の車に移り、逆行の名も無き男からプルトニウム241を奪い、クラッシュした車に火をつけます。最後のアルゴリズムを揃えたセイターはそのまま過去のベトナム湾まで逆行します。
======ここから順行======
4. アルゴリズムを揃えスタルスク12で起動準備を部下に命じる傍、セイターは最後の瞬間を穏やかなベトナム湾のボート上で過ごそうとやってきます。そこにいたのは未来から逆行してきたキャットですが、セイターはその事に気付きません。スタルスク12にいる名も無き男に電話で勝ち誇った台詞を吐いた後、キャットから優しい言葉をかけられ幸せそうなセイター。しかしその幸せそうなセイターの顔が癇に障ったキャットに撃ち殺されます。その後死体が見つからないようにボートに紐で結ばれ、雑に運ばれていくセイターでした。

動きは非常にシンプルなのですが、カーチェイスのシーンが本当にややこしいです。考えれば考えるほど?が出てくるのでここではかなり単純化して説明しました。間違っていたらごめんなさい。
因みに、割と詳細な説明が書いているTENETのパンフレットにもあのシーンは理解が及ばないと投げてました。

キャットのタイムラインとあらすじ

そして最後はキャットのタイムラインです。主要人物の中でも最もわかりやすいです。というのも彼女が大きな動きを見せるのは基本的に順行の時なんですね。非常にややこしいカーチェイスのシーンでは、順行セイターに殴られたり逆行セイターに連れ回されたり撃たれたり散々な目に遭いますが彼女は常に順行で動いています。

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1. 名も無き男と出会い、ゴヤの贋作でセイターに脅されている事を明らかにします。
2. アマルフィで名も無き男と再会。ゴヤの贋作は処分したと伝えられます。安心したキャットは名も無き男をセイターもいるディナーに招待し、名も無き男とセイターを結びつけます。ゴヤの贋作がもう無いと思ったキャットはセイターに対し強気に出ますが、実は贋作はセイターの手元にありました。絶望したキャットは錯乱してセイターを殺そうとしますが、名も無き男がそれを防ぎます。
3. テナンのフリーポートでセイターに銃を突き付けますが逆にシバかれます。キャットは順行のまま逆行セイターに車に乗せられ名も無き男を脅す道具に使われます。暴走車に置き去りにされながらも何とか名も無き男に助けられますが、その後再度逆行のセイターに捕らえられ、逆行中で撃たれ瀕死の状態となります。
======ここから逆行======
4. 治療のため1週間遡り、オスロ空港の回転ドアで順行に戻ります。
======ここから順行======
5. セイターが膵臓癌で余命わずかな事を明かし、アルゴリズムの起動がベトナム湾のボートで行われると確信します。
======ここから逆行======
6. 再度逆行し、セイターが最後に幸せを感じた日=ベトナム湾のボート上に向かいます。
======ここから順行======
7. ベトナム湾上のボートでセイターが自殺しないよう食い止める役割を担います。あの日の自分が怒ってボートから去ったタイミングでボートに戻り、同じく逆行して戻ってきたセイターに甘い言葉をかけます。
セイターは満足げで順調にも思ましたが、キャットは今までの恨みが込み上げます。セイターの勝ち誇った顔を許せなくなり、自分は逆行してきたキャットだと言う事を告げ、セイターを銃で殺害します。
その後ボートに過去の自分が戻ってきたことを確認し、ボートから飛び降ります。そう、過去の自分が憧れを抱いた’’自由奔放な女’’は未来の自分だったのです。
8. 日常に戻ったキャットは息子の送り迎えの道中で怪しい車を見つけます。名も無き男から「何かあった時のために」と受け取っていた電話でその旨を伝え、自分の暗殺を防ぎます。そうしてようやく彼女に平穏が訪れたのでした。

何故最後にアルゴリズムが起動しなかったのか?

タイムラインを登場人物ごとに整理してみると、難解に見えた物語の流れもスッキリ見えてくるのではないでしょうか。
ただここで一つの疑問が残ります。それは何故ラストでセイターが撃たれた後もアルゴリズムは起動しなかったのか?という点です。これに関しては恐らく劇中で明記されていません。自分は以下のどちらか(有力なのは前者)だと理解しました。

①アルゴリズムの起動には手順がある説
劇中ではアルゴリズムを起動させる為の手順は、a.9つの部品を集め起動させる b.セイターが死んでスイッチが起動する、と説明されていますがこれだけだとセイターが撃たれた瞬間に起動してしまいます。ラストのスタルスク12のシークエンスから推察されるのは上述のaとbの間にもう一つ手順があると言う事です。それはアルゴリズムをタイムカプセルに埋め、誰も掘り起こすことが出来ない地中に爆発で埋めること。そしてそれを受け取った未来人がアルゴリズムに何か処理を施すことで初めて時を逆転させる装置として機能するのではないかと推察しました。
結果、爆発で埋める前にアルゴリズムを奪い、分解した為セイターが死んでも起動しなかった、と考えると何とか筋が通ります。

②セイターなかなか死ななかった説
これはそのままですね。セイターは強い子なので銃で撃たれても、船から突き落とされガンガン船にぶつかりながら落ちても、うつ伏せで海にプカプカ浮かんでもなかなか死にませんでした。その為アルゴリズムがなかなか起動しなかったのではないでしょうか。ちょっと無理がありますかね...。

おわりに

非常にややこしいこの作品ですが、①この映画における時間の流れを理解する②設定を把握する③人物の関係性を把握する④主要人物のタイムラインを把握する、という手順を踏んで行けば、科学的知識がなくとも物語を理解するのは決して難しくないはずです。
難解であるという事はそれだけ内容があるという事。知れば知るほど面白い、TENETはそんな映画だと思います。映像に圧倒的な費用をかけた超大作にそれほどの複雑さを詰め込むなんて本当に驚きですね。
観賞後『メイキング・オブ・TENET テネット』を読みましたが、ノーラン監督をはじめとしてキャスト・スタッフ一人ひとりの拘りと熱意、その挑戦的な姿勢に感動を覚えました。本当に読んでいて驚くことばかりですし、撮影風景や小道具の設計図の写真なんか見てて興奮すること間違いなしなのでTENETを気に入った人は買うことをお勧めします。(6,600円とかなり高価ですが...)

さて、出来る限り判り易く、かつシンプルに書こうと思いましたが結果的に10,000字を超えてしまいました。長いのにここまで読んで頂きありがとうございました。

最後にもう一度だけ。TENETは一度目より二度目の方が間違いなく面白いです。そしてきっと三度目は更に面白くなるでしょう。
観れば観る程楽しめる映画 TENET、もう一度劇場に足を運んでみませんか?


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※追記 

巷で囁かれているニール=マックス説ですが、個人的な意見を言うとあまりそうあって欲しくないと思っています。その理由は二つあります。

劇中のニールの年齢はせいぜい30代前半くらいかと思います。現在のマックスが10歳なので、未来から逆行して30代前半になるには20代前半で逆行し始めなければいけません。
ニールに過去に戻るよう指令を出したのは主人公の名もなき男ですが、20代前半の若者に"10年も遡って父親を殺す手伝いをさせる"というのは余りに悪趣味で残酷すぎるとは思いませんか。オマケに名もなき男は最終的にニールが死ぬと知っています。
名もなき男は非常に有能ですが、その性格はスパイとしては甘々な優男です。(オペラハウスでは観客を助ける為指令外に動く、仲間が死んだと聞いて泣く、キャットを救おうとするなど)そんな彼が救った女性の息子にそのような残酷な指令を出すのでしょうか。
そうではなく、数年後に出会う''信頼できる部下であり友人のニール''を世界を救う為、断腸の思いで過去に送り出すという物語の方が個人的に美しく感じます。

そしてセイターは息子を生んだことは罪である、と言いながらもマックスに対して酷い扱いは決してしていません。(良い学校に通わせる、ベトナム旅行に連れて行くなど)母親の脅迫材料としての価値を感じて、という意味でそこに愛情は無かったかもしれませんが。なのでマックスには過去に行ってセイター殺しの手伝いをする程の恨みがあるとは到底思えません。

以上の"名もなき男には良い人間でいてほしい"、"ニールが過去に戻る動機は恨みでは無く友情であって欲しい"という2点から、自分はニール=マックスであって欲しくないと思うのです。

まあ、推論に推論を重ねているだけなのでそこに意味は無いですが。でもこんな推測の議論もこの映画の楽しみのひとつだと思います。観終わった後もこうやってずっと楽しめる映画『 TENET』、本当に最高ですね。

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ISO

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