ことわざで覚えるデザイン その7
ことわざを分析してわかった傾向として、これまで「七五調」「比喩」「あるある」「誇張」などを挙げてきましたが、ことわざの最も分かりやすい特徴は、「汎用性の高い教訓」が含まれていることです。人生の様々な局面で応用できる教訓が、たくさん用意されているのです。
一方で、その教訓の逆となる内容を示唆することわざもあったりするのが、面白いところでもあります。
例えば、
人を見たら泥棒と思え ↔︎ 渡る世間に鬼はない
二度あることは三度ある ↔︎ 三度目の正直
二兎を追う者は一兎をも得ず ↔︎ 一石二鳥
…などがあります。
ことわざは「何かをしようとするとき」や、「何かことが起こったとき」などに、人生の心構えや教訓として使われることが多いものです。何か失敗してしまったときは次はうまくいくように、逆に、何か成功したときには次に失敗しないように、その時々の状況に合わせて、都合のいいものが使えるようになっているのです。
考えようによっては、ことわざというものは随分と調子のいい教訓でもあると言えます。ただ、それもまた考えようで、「成功や失敗など、あらゆる状況が人生の教訓になる」ということでもあるのです。
というわけで、今回は特に教訓じみた「デザインことわざ」を3つ、選んでみました。
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楽すれば苦あり
「面倒は臭くない!」と思って作業を進めても、誰しも無意識の内に楽な方を選択してしまうことがあるかもしれません。「ここはあとで差し替えればいいや」「とりあえず検索して出てきた文章を当てておこう」「最終的に整えるときに作業しよう」こういった考え方が、一番危険なのです。重大な事故につながってしまう可能性もあります。やれることは、気づいたときにやっておく癖をつけましょう。
最初に苦労しておけば、後々の作業が必ず楽になります。そもそも楽をしたいなんて、考えない方が身のためなのです。むしろ、何か判断に迷うようなことがあったら、大変そうな方を選んだ方がいいでしょう。その方が、最終的にはクオリティの高い結果が得られるはずです。大変な作業も一度経験して慣れてしまえば、次からはそれが当たり前の基準になります。そうしてステップアップしていくことで、デザインのスキルも向上していくのです。
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できることから考えない
何かをデザインしようと思ったとき、人はついつい「自分の力で何ができるか」ということから考えてしまいがちです。しかし実際には「どうやったらできるか」を考えることの方が、大切なのです。まずは「自分が作りたいもの」という「目的(=目標)」ありきです。そのために必要な「手段」は、妥協するべきではありません。
作りたいものがあるのに、自分の技術ではそれを作ることができないと考えてしまうと、自分のできる範疇だけにゴールを狭めてしまうことになるからです。自分の実力が足りなければ、今から勉強してもいいでしょうし、どうやっても無理なのであれば、それができる人を探して味方につけてもいいのです。
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焦りはゴールを遠ざける
デザインに限らず、何事も経験が浅い内は、ついつい焦って結果ばかりを追い求めがちです。しかし、経験が浅い内こそ、結果を焦らず、常に落ち着いて仕事に臨む姿勢が大切です。
もちろん、仕事には必ず締め切りがあるはずですし、締め切りを守ることは、仕事をする上では何よりも大切です。まずは、締め切り間近で焦らないようにするにはどうすればよいか、を考えましょう。
多くの場合、いつも焦ってばかりいる人は、よほど忙しくて余裕がないか、自分のタイムマネジメントをしっかりできていないことが、ほとんどです。焦ったって、何一ついいことはありません。むしろ、重大なミスにつながってしまうこともあるでしょう。急いだことが仇になって、余計に時間がかかってしまう可能性もあるのです。
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今回の3つは特に、デザインのみならず、人生の教訓としても使えるものになっているのではないかと思います。しかし、これらの教訓も「逆もまた真なり」なのかもしれません。
さらに言うならば、どんな教訓も「自分の考え方次第で何とでもなる」、ということなのかもしれないのです。身もふたもないようですが。
教訓は教訓として、自分の都合のいいように捉えておく、というぐらいの余裕のある姿勢を保つようにしたいものです。
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さて、執筆中の本の方は、やっと最終原稿がほぼほぼ完成しました。GW前には初校が上がってくるそうです。この本の中でも「余裕」の大切さについて、触れていたりします。乞うご期待。
「面白い!」のつくり方(仮)/ 岩下 智 著
CCCメディアハウスより6月末頃 刊行予定!
Photo by Ivars Krutainis on Unsplash
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