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まえがき

人物、バンド名等説明

:ISHIYA。著者。日本の HARD COREPUNKバンドFORWARDとDEATH SIDEのボーカル。
DEATH SIDE:ISHIYAが17歳からやっているバンド。1994年頃解散。2024年現在再結成で活動中。参考図書「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」(株式会社blueprint)。Note連載「ISHIYA私観 平成ハードコア史」第一章第二章第三章第四章
FORWARD:ISHIYAがDEATH SIDE解散後に始めた日本のHARD CORE PUNKバンド。2024年現在活動中。参考図書「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」(株式会社blueprint)。Note連載「ISHIYA私観 平成ハードコア史」第一章第二章第三章第四章
鉄アレイ:1980年代から活動する、日本を代表する HARD CORE PUNKバンド。参考図書「ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史」(株式会社blueprint)。Note連載「ISHIYA私観 平成ハードコア史」第一章第二章第三章第四章
GHOUL:1980年代に活動していた東京のHARD CORE PUNKバンド。片手のないモヒカンのPUNKS・MASAMIがボーカル。
MASAMI:片手のないモヒカンのPUNKSで、THE TRASH、GHOUL、BAD LOTS、SQWAD、L.O.Xなどで活動。L.O.Xでは、現X JAPANのYOSHIKIとも一緒に活動。参考著書「右手を失くしたカリスマ MASAMI伝」(株式会社blueprint)。雑誌 別冊ペキンパー「ジャパコアXマサミ」(廃刊)。 note連載「失った右手が掴んだもの〜MASAMI伝」第1章第2章。雑誌 別冊ペキンパー「ジャパコアXマサミ」。
THE FOOLS:1978年、元「ルアーズ」の伊藤耕と元「ワースト・ノイズ」の川田良を中心に「SEX」を結成。1980年、伊藤、青木真一(ギター、元「村八分」「SPEED」)を中心に、中嶋一徳(ベース、元「8 1/2」「自殺」「SYZE」)、佐瀬浩平(ドラムス、元「自殺」)の4人で「THE FOOLS」を結成。
伊藤耕:ルアーズ、SEX、SYZE、伊藤耕&ヘヴン、THE FOOLS、ブルースビンボーズなどのボーカルとして活動。2017年10月17日に北海道月形刑務所で服役中に、刑務所や病院で適切な処置がなされず死亡。その後国を相手取った裁判にて、ほぼ全面勝訴。

まえがき

 なぜ俺が今、バンドでアメリカツアーを行うようになったのか。話せば長くなるが、かいつまんで書いておこう。俺は高校をやめた17歳の頃からバンドをやりはじめ、現在57歳(2024年現在)になろうという年齢までバンドでボーカルを続けている。
 最初のバンドは高校生のメンバーで、非常に短い期間に数回のライブをやっただけで解散し、その後加入したバンドで約10年ほど活動した。
 それがDEATH SIDEというバンドで、1990年代に入ると日本のHARD COREB PUNKシーンの中では、それなりに名前が知られるバンドとなった。
 数々のレコードを出し、俺が20歳の1987年の頃から毎年のように日本全国をツアーしていた。メンバーが固定して活動も安定した頃になると、日本だけでは飽き足らず「海外でライブをやりたい」という気持ちが抑えられなくなってきた。
 そこから「海外でライブをやるためにはどうすればよいのか?」と考え始め、色々な方法を色々試してみたのだが、遂に海外へ行くことなく解散してしまった。
 DEATH SIDEが解散したのが1994年頃なので、俺が27歳あたりのことだ。まだまだバンドはできるし、変わらず海外へ行きたい気持ちは持ち続けていた。
 そこで新たなバンドを結成し、再び「海外でライブをやろう」と動き出したのが1996年頃で、そのFORWARDというバンドで遂にアメリカツアーを実現することとなった。
 初めてアメリカツアーに行ったのが2004年の37歳の頃なので、20年近く「バンドで海外に行きたい」と思い続け、やっと念願が叶ったというわけだ。
 それからは何度も海外ツアーへ行くようになり、2023年2月現在まで、俺個人では通算5回のロングツアーと、単発2回のライブをアメリカで行なっている。さらにカナダ、オーストラリア、チェコ、スウェーデンに2度、イギリス、イタリア、韓国、フィンランド、オーストリア、セルビアに1度という感じで、機会があれば必ずバンドで海外へ行くようになった。
 1回のライブだけという国もあるが、基本的には何か所も巡るツアーをやっている。それまでも毎年1ヶ月以上つづく日本全国ツアーを毎年やっていた経験はあるが、海外とは移動距離が全く違う。

 詳しいことは後々書いていくとして、こうして何度もバンドで海外に行くようになったのは、2004年に行った最初のアメリカツアーで世界というものの広さを体感したのがきっかけだ。知らない国の知らない文化、言葉の通じない国々で、どこまで俺の思いが伝わるのか?俺の生き様を示す音と感情に共鳴する人間はどれだけいるのか?俺が今まで人生を懸けてやってきたことは間違っていないのか?という興味が抑えられなくなったのだ。
 決して「自分の正しさの証明」などというごう慢なものではなく、好き勝手やってぃた生き方がどう受け止められるかの確認であったと思う。さらにその生き方をライブで体現することで、全く知らない人間と共鳴して魂が触れあえるならば、こんな幸せな人生はない。そいつを一度でも体感すると、もうやめることなどできないのだ。

 俺は、10代の頃からHARD CORE PUNKが大好きでPUNKSとして生きてきたし、これからもPUNKSであり続けるだろう。
 最初は自分のことだけで手一杯だった。自分のことしか考えられず、余裕などどこにもなかった。
 しかし、PUNKというものに触れ「単なる音楽ではなく生き方」だと理解すると、子どもの頃から感じていた「世の中がおかしい」という思いを抑える必要などないと知った。
 そして「おかしい」と感じていた事柄全てに共通する「我慢」や「抑圧」「強制」に抗うように生きてきた。そのための犠牲もあったが、どうしても「常識」や「国家」「法律」「規則」というものに縛られながら生きることが出来なかった。

 どうしても「自由」でいたかった。
「自由」が何よりも大事だった。親友である日本のHARD CORE PUNKバンド、鉄アレイの歌詞にあるが、自由のために不自由にはなれない。自由でいること、自由そのものであること、そんな生き方を今でもずっと志している。
 その影響は、HARDCORE PUNKの世界の先輩たちや友人たちによるところが非常に大きい。中でもGHOULのボーカルだった片手のないPUNKS・MASAMIさんの生き様は、決して真似できるものではないし真似しようとは思わない凄まじいものなのだが、PUNKSとして大きな影響を受けた。PUNKSを全うしているMASAMIさんの生き方を見て育てば、いわゆる「一般的常識」をなぞっているような生き方では、個人的にとても「俺はPUNKだ!」とは言えないと思っている。(詳しくは、自著「右手を失くしたカリスマ MASAMI伝」。note連載「失った右手が掴んだもの〜MASAMI伝」第1章第2章)を参照してほしい」

 音楽的にはPUNKではないのかもしれないが、生き様としてのPUNKといえば、THE FOOLSの伊藤耕さんという人間の生き方も、とんでもない化け物だ。「Mr.FREEDOM」と言われるだけあって、伊藤耕さんこそ「自由」そのものである。
 そんな先輩たちの生き様を見ていれば、世間から「まとも」と言われる生き方など到底できるものではない。
 気に入らないものには抗い、抵抗し、自分に正直に生きる。それがたとえ法律に触れていようが構わない。それが俺の「常識」であり「普通」で「一般的」な「自由」であるPUNKSの生き方だと思っている。

 とは言っても、HARD CORE PUNKSだって生活はある。真面目に仕事をして、決められたことは守り、他人に迷惑をかけてはいけないという「常識」を「普通」だと思い生きている人間もいる。
 それを否定することはしないし、むしろ、尊敬すらできるのだが、ただ、俺にはできないし、やりたくないというだけだ。
 確かインドだったと思うが、こんな教えがあるという。

「誰でも人に迷惑をかけて生きているのだから、人に迷惑をかけられても許してあげなさい」
 こんな感覚の方が、どうも俺にはしっくりくる。
 まぁ許せるものにも種類と限度はあるが、やりたいことを我慢して、人の顔色を窺っていては、楽しく笑って人生が過ごせるとは到底思えない。
 DEATH SIDEの歌詞でも書いているが、俺は死ぬ時に笑っていたい。そのためには今ある人生を、今あるこの生命を、俺が有意義だと思えることにしか使いたくないし、これからもそうやって生きていくだろう。
「そんなものPUNKじゃねぇ!ただのわがままじゃねぇか!」
 そう思われるなら、俺とあなたは全く違うのでどうしようもない。あなたにはあなたの生き方がある。あなたはあなたの道で頑張って、うまくいくといいなと心から願うだけだ。
 ただ、俺は違う。それだけ理解してもらえるなら、これから始まる話を聞いてもらえるかもしれない。

 それでは遅くなったが、やっと本題に入ろう。
 この物語は、世間一般では日の目を見ないアンダーグラウンドのHARD CORE PUNKでありながらも、世界に飛び出し挑戦し続ける人間たちの話である。
 もっともっと凄い人間は、この世界にたくさんいる。そこらへんに転がっているどうしようもない人間の、世間から足を踏み外した話でお目汚しを垂れ流すが、こんな輩でも好きなことをやっていれば世界に行けるのかと、どうか広い心で楽しんでいただけるとありがたい。

つづく
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ひょっとしたら、おまけ話が追加されるかも? あくまでも「かもしれない」という感じです。 旅ものが好きな方や、普通とはちょっと違った海外の話に興味があれば、楽しめると思います!

2023年に刊行された自著「Laugh TilYou Die 笑って死ねたら最高さ!」のWEB版です。 本作に収められた話全てはもちろん、…

30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!