見出し画像

映画のローカル宣伝の可能性

こんにちは、福岡映画部を主宰している石渡麻美です。

先日、活動パートナー募集のnoteを公開しました。数名〜20名くらいでも集まったら嬉しいなあと思っていましたが、最終日の本日までに約70名の方から登録をいただいており、同じ想いを抱えた人の多さに胸を打たれています。登録者の方と対話するオンラインミーティングを通して、少しずつ今後の活動についての解像度が高まりつつあるので、今後の続報にも乞うご期待。

(活動パートナーの募集は、本日締め切り!気になる方はこちらのエントリーからお早めにどうぞ◎)

さて今回の内容は、現在取り組んでいるプロジェクトについて。

福岡映画部では現在、初の映画の宣伝協力のプロジェクトを実施しています。

宣伝協力作品について

宣伝する作品は、『緑の牢獄』というドキュメンタリー映画。沖縄・西表島を舞台に、台湾移民と炭鉱の歴史を描いた作品で、来月9/24から福岡公開となります。

まずは、作品についてご紹介。

予告編

__ 概要 _______________

熱帯林に囲まれ「秘境」と呼ばれる西表島。島には人知れず眠る巨大な「炭鉱」があった。廃坑を無秩序に覆う緑、そこを住処とするイノシシの群れ、そして廃坑を見つめる90歳の老女ーー橋間良子。10歳で父に台湾から連れられ、人生のほとんどをこの島で過ごした彼女は、たった一人で誰もいない家を守る。眠れない夜には、島を出て音信不通となった子ども、炭鉱の暗い過去、父への問いかけーー忘れたくても捨てられない記憶たちが彼女を襲う。希望、怒り、不安、そして後悔ーー彼女が人生最期に放つ静かな輝きが、この一作に凝縮される。

沖縄を拠点として活動する黄インイク監督が七年間の歳月を費やした渾身の一作『緑の牢獄』。本作は企画段階で既にベルリン国際映画祭、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭の企画部門に入選。前作『海の彼方』に続き、植民地時代の台湾から八重山諸島に移住した“越境者”たちとその現在を横断的に描く「狂山之海」シリーズの第二弾。

タイトル:『緑の牢獄』(『GREEN JAIL』)
公式HP:https://green-jail.com/
監督:黄インイク
2021年製作/101分/日本・台湾・フランス合作
配給:ムーリンプロダクション、シグロ
公開情報:9/24より大牟田セントラルシネマ、10/1より福岡中洲太陽劇場ほか
____________________

本作は、膨大な資料と取材で明らかになった史実と90歳の老女の記憶を、ノンフィクションと創作を交えながら描き、歴史の中で語られず不在とされてきた、けれども確かにそこに生きた人々の呼吸を掬いとることに挑んだ作品です。

沖縄、台湾、炭鉱というテーマに興味関心がある方には観ていただきたいのはもちろん。個人的には、映画の中で描かれる「真実」の見方を考える意味でも、観た方と語ってみたいことがたくさんあります。伝える手法の多様さと、そこに表れるつくり手の思慮深さや映画理念を見ることができる作品としておすすめです。

本作は映画と連動する内容の書籍『緑の牢獄 沖縄西表炭坑に眠る台湾の記憶』(3月22日付Amazon書籍ランキング日本史部門1位)も発刊されており、映画と書籍セットで完結する部分もある作品なので、もしご興味のある方は書籍もぜひ。

宣伝協力のきっかけ

さて、これまで「8月に福岡で公開される作品まとめ」などの情報を届けつつも、特定の作品を宣伝することはしてこなかった福岡映画部ですが、今回、宣伝協力として本作に携わることとなったのには二つ理由があります。

一つは、同世代の映画監督・プロデューサーである黄インイク監督の「沖縄・九州・アジアから映画を発信していきたい」というビジョンに共感したこと。そしてもう一つは、以前からぼんやりと考えていたローカルでの映画宣伝の可能性について、実践できることがあるのではないか?と考えたことです。

そもそものきっかけは、黄監督から福岡映画部にご連絡をいただいたことでした。炭鉱をテーマに扱う本作の福岡公開にあたり、福岡エリアの宣伝活動に力を入れたい、そのために福岡の映画状況について話を聞きたいというご相談がありました。

黄監督とは同世代ということもありお話しが盛り上がり、お会いした際には、福岡の映画状況だけでなく、まちの人やカルチャーのお話しをたくさんお伝えしました。そして、黄監督からは映画作りや配給・宣伝についてお話しを伺いました。

その中で見えてきた具体的な取り組みに、福岡映画部としてサポートできる部分があるかもしれないと感じ、宣伝協力として作品に携わることになりました。

具体的な取り組み

そして、宣伝活動を開始して1ヶ月弱。これまでに実施している、そして、これから実施する取り組みは以下のような内容です。

・試写

作品の関係者試写を実施しています。今月一回目の試写が終わり、来月にもう一度開催する予定です。

会場は福岡映画部の活動拠点であるSUZAKI-KOEN STUDIO内にあるイベントスタジオ。30〜40名ほどのイベントが行えるスペースです。上映環境は劇場や試写室のスペックとはいきませんが、プロジェクターやスピーカーなどの必要機材は最低限揃っているため、先日行なった第一回試写では殆ど問題なく映画を観ていただくことができました。

通常、映画は、宣伝のために一般公開より前にメディアや関係者に向けた試写会が行われます。しかし、自社で試写会場を持っているような大きな配給・宣伝会社を使える映画でない限りは、ほとんどの場合、試写が行われるのは東京都内で数回のみ。貸し館で試写を行うにも万単位の費用がかかるため、よほど宣伝費用が大きな作品でない限り、試写開催から見通せる収益を考えれば、地方はオンライン試写で観ておいてね、というのが一般的です。

私自身、webで映画記事を担当していた関係で試写に参加させていただいたことがありますが、やはり上映という形で観る映画と、PCのブラウザを通して観る映画の違いは語るまでもなく……。作品を届けるきっかけとなる試写はできるかぎり上映の形で観ていただくのが理想的です。

福岡映画部では、活動拠点を持ったことでスペースの入居者としてリーズナブルにシェアスタジオを使えるので、貸し館では難しかった作品も、これなら小さな試写開催が可能になります。

第一回開催は、コロナ禍ということもあり、定員人数と会場での滞在可能時間をかなり絞った状態で実施しましたが、来場した関係者から宣伝アドバイスを頂いたり、黄監督とのオンラインQ&Aで来場者との対話が生まれたり、その場で映画チラシの配布協力を依頼することができました。

こういった関係性を作れるのも、小さな試写会場ならではのメリットです。

・パブリシティ

作品情報と公開情報を、TV・新聞・ラジオ・地元メディアなど、様々な媒体で少しでも多くアピールしていかねばなりません。

こちらは試行錯誤の日々ですが、やはりここでも、普段つながりがある方が応援にと取材してくださったり、これまでに福岡映画部の活動を取り上げていただいたメディアに取材のお願いを進めたりと、これまでの活動とローカルの縁を生かしています。

とはいえ、こちらはまだまだこれから!取材していただけるメディアを募集中です!

メディア関係の方に向けて、次回関係試写のご案内やプレスシートをご用意していますので、ご協力いただける方は、ぜひ下記アドレスまでご連絡ください。

info@fukuokaeigabu.com(担当:石渡)

・イベント

本作の福岡公開に連動したイベントを複数開催します。

一般的に、映画宣伝のイベントは企業とコラボするような大きなものから自主企画の小さなものまで多種多様ですが、今回企画したイベントはどれも、小規模〜中規模イベントです。福岡公開初日エリアとなる大牟田市と、福岡市内、筑豊エリアでのイベントを予定しています。(情報リリースは各種SNSで順次予定)

現場では、これまで沢山の映画イベントを行なってきた経験を頼りに、0→1のイベント企画から、情報を集めて会場を探したり、交渉の現場では今後の企画連携なども視野にいれながら準備を進めることもあります。上映される映画館の特色に合わせた企画を考えられることもローカルの強みです。準備段階の現地調査に、必要機材調達、リハーサル、当日の会場作りからトークの聞き手までを務めます。こうして書いてみるとなかなか忙しいですが(笑)監督・プロダクションの方々と密に連携しながら、本領発揮で奮闘中です。

ここでは何より、開催地から遠い場所にいる監督やプロダクションの代弁者となり、フットワーク軽く現場担当者と対話できる人間がいることが大きなメリットです。

そして、イベントを通じて伝えるべきことは、映画が作られた背景や込められた想い、つくり手のパーソナリティなど。その映画と出会うため、深く感じるための情報をしっかりと伝えることが最も大切なことだと考えています。

・チラシ配布

映画館で手に入れることの多い映画チラシですが、今回は作品や上映館に関連する様々な場所に設置してもらっています。

「沖縄」「台湾」というキーワードや「炭鉱」「移民」というテーマに興味・関連のある飲食店や個人商店、イベントを行う施設や、図書館、映画館付近の店舗や施設など。

通常、遠いエリアにある配給・宣伝会社からローカルにチラシを撒こうと思っても、設置場所との交渉を考えるとなかなか難しく、場所が増えるほど郵送コストもかかってしまいます。

そこで今回は、福岡映画部の事務所に大口発注したチラシを届けてもらい、そのチラシの設置交渉から配布までを行うことにしました。前回の募集で集まった活動パートナーによるチラシ設置活動の協力もあり、人的リソースもパワーアップしています。

地方にキーステーションができることで、ローカル視点での的確なターゲティングと幅広いアプローチが可能になり、丁寧な施策の積み重ねることが、届けるべき人に作品の情報をきちんと届け、劇場への動員につながっていくのではないかと考えています。

・パートナーコミュニティの活用

これは、一番実験的で個人的に面白さを感じている取り組みです。

70名以上の方にご登録いただいた福岡映画部の活動パートナー制度を活かして、ここに集まったパートナーの方たちと、映画宣伝に関する施策を検討・実践していこうと考えています。

具体的には、チラシ配布の協力、試写やイベントの現場作り、そして、劇場へ実際に作品を観にいくこと、観賞後イベントの実施や、SNS等での発信などです。今はオンラインをメインに。時期をみながら、福岡映画部イベントスタジオを活用したリアル開催のイベントなども検討していきます。

パートナーの方々とオンラインキックオフミーティングで対話をしていると、やはり、「映画の話をしたい・ききたい」という声が多いです。映画を「知る」「語る」場にもっと参加したいというパートナーの方が多くいます。

そういった方と作品について対話できる場を設けたり、監督や関係者からお話しを聞く機会を作ることで、作品やつくり手の魅力をより深く理解する作品の関係人口を増やしていくことができるのではないかと考えています。

ローカル宣伝の可能性とプロジェクトにかける想い

日本ではいま、年間1000本以上の映画が劇場公開される供給過多な状態が続いています。コロナ禍の影響もあり、状況が変わってしまった部分もありますが、年間で得られる興行収入の6〜7割を上位数パーセントの作品が占めているという現状もあります。つまり、映画の製作費だけでなく宣伝予算にも格差がある状態ということです。これは、ただでさえ供給過多の中で埋もれてしまう、小さくても良作だったり、派手でなくても重要な作品が、尚更観客に届きにくくなるということだと感じています。

実際、これだけ毎日映画のことを考えていても、見逃してしまう映画情報が多々あります。特に、たくさんの作品を流さなければならない地方のミニシアターの編成は、映画館にとっても観客にとっても、とにかく忙しいスケジュールで、観たい作品を全て観にいくことは到底不可能といっても過言ではありません。

そういった映画が抱える課題に対して、宣伝の切り口や手法をローカル視点で育てていくことで、地域特性にあった細やかな宣伝活動が可能になるのではないかと考え、今回のプロジェクトを実施するに至りました。

さらに、こういった活動を活動パートナーや地域のお店、文化を大切にする企業と共に根付かせていくことが、暮らしや営みの延長線上に文化を感じられる土壌を作ることにつながっていくのではないかと感じています。

そして、映画ファンにとっても、ただファンとして映画を観に行くだけでなく、映画を届けることに参加できる。映画は観客に観られてはじめて完成するというならば、映画をつくる最後の工程に参加出来ることにもつながっていくのではないかと思っています。

映画館への動員を作り、作品やつくり手のファンを増やすこと、そして、その場を一映画ファンとして享受するだけでなく、活動パートナーとして共に作っていくこと、このサイクルを回していくことが、ローカルの映画の小さなエコシステムにつながっていくと良いなと思います。

そして、その小さなエコシステムが根付いていった先には、アジアの玄関口としての福岡のポテンシャルが、さらに花ひらく未来を妄想しています。

福岡は映画が面白いまち、文化を届けやすい都市だね。そんなふうに語られる未来をイメージしながら、活動を続けていきたいと思います。

映画『緑の牢獄』は、9/24(金)からセントラルシネマ大牟田で、10/1(金)から福岡中洲大洋映画劇場で公開です。公開初日は私も劇場にいます!是非、劇場でお会いしましょう◎

画像1

(C)2021 Moolin Films, Ltd. & Moolin Production, Co., Ltd.

そして、活動パートナーの募集は今夜23:59までの受付です。ご興味のある方はお早めに!こちらのエントリーをお読みください◎

公開に向けたイベントも多数開催予定。
各種SNSで随時発表していきますので是非ご参加ください!

Twitter:https://twitter.com/fukuokaeigabu
Facebook:https://www.facebook.com/fukuokaeigabu/
Instagram:https://www.instagram.com/fukuokaeigabu/
プレス取材も告知協力店舗・企業もまだまだ募集中!
ご協力いただける方は下記メールアドレスまでぜひご連絡ください◎

連絡先メールアドレス
info@fukuokaeigabu.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?