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『仮名』のあれこれ ~ミセスワタナベって誰?~

名前が分からない、もしくは名前が明らかにされていない人物を指して使われる所謂『仮名』の代名詞と言えば「名無しの権兵衛」でしょう。

そんな「名無しの権兵衛」さん、由来を調べてみると少なくとも三つの説があるようです。

①江戸時代、幕府非公認で正式に遊女を雇えなかった歓楽街が遊女に男性の名前を騙らせ幕府の目を逃れており、その名前を権兵衛名と呼んだ。しかし、新人には権兵衛名がついていないことも多く、その新人を「名無しの権兵衛」と呼んだという説。

②東京都赤坂の日枝神社にまつわる手鞠歌の中にある「名主の権兵衛」が、変化し「名無しの権兵衛」になったという説。

③田舎の人に「権兵衛」という名前が多いからという説。

どれもそれっぽいですが真相は闇の中。

これだけだとつまらないので、同じような『仮名』が他にもないか調べてみるといろいろありました。

英語だと「ジョン・ドゥ」「ジェーン・ドゥ」。もしくは「ジョン・スミス」「ジェーン・スミス」。

中国語だと「張三李四」。

日本は「名無しの権兵衛」以外だと、「山田太郎」「山田花子」「日本花子」「何野某」などサンプルや記入例で一度は目にしたことがあるでしょう。

そして記事のタイトルにもした「ミセス・ワタナベ」。

「ミセス」ってついているぐらいだから海外での日本人女性の『仮名』?
と思ったのですが違いました。

その正体は、

個人の小口外国為替証拠金取引(FX取引)投資家を意味する俗称。語源は日本人の主婦を中心とした女性やサラリーマン投資家。欧米の報道機関により名付けられた。

Wikipediaより

その報道機関というのがイギリスの経済紙「エコノミスト」。
海外でよく知られた日本の姓「ワタナベ」をから、為替市場(FX市場)で大きな影響をもつ日本の個人投資家たちを「ミセス・ワタナベ」と名付けたそうです。

で、その大きな影響とは、

2007年ごろから、東京のインターバンク市場において、為替相場の方向性が、午前から昼をはさんで午後にかけて、反対方向(主にドル買い)へ振れる奇妙な現象がしばしば見られた。それは、相場を反転させる大きなニュースや特別な要因がないにもかかわらず、である。こうした状況が頻繁に起こったため、その原因を探っていくと、主に日本の主婦やサラリーマンなどの個人のFX投資家が、昼休みを利用して一斉に「円売り・ドル買い」の注文を出していたことが判明した。つまり、日本の個人投資家が為替相場を左右させるほど大きな影響力を持つことを世界に見せつけたのである。

Wikipediaより

別に「ミセス」をつけなくてもいいのでは? と思ったのですが、イギリスではリスクを取らない小口個人投資家を「アガサおばさん」と呼んでいたことから「ミセス・ワタナベ」と呼ぶことにしたそうです。

海外でよく知られている「ワタナベ」と言えば、ご存じハリウッド俳優「渡辺謙」のことで間違いないでしょう。独眼竜は伊達じゃない!(いや伊達だった)。

「名無しの権兵衛」と「ミセス・ワタナベ」。
若干ジャンルが違うような気もしますが、両方とも不特定の人物を表す名前ということでご容赦ください。


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