生ドーナツはなぜ「おいしい」のか科学的に分析してみた
生ドーナツがおいしい。
口に入れる瞬間にとろける「ふわしゅわ食感」についついハマってしまう。
でも、普通のドーナツと生ドーナツは、一体なにが違うのか?
そのおいしさを科学的に分析してみたら、生ドーナツの未来が心配になってきた。
「生ドーナツ」はなぜおいしいのか?
生ドーナツの火付け役と言えば、生ドーナツ専門店「Iʼm donut ?」だ。
先日、もうさすがに流行りも落ち着いただろうと「Iʼm donut ?」の原宿店に足を運んだら、朝から大行列ができていた。
若者カップルや、外国人旅行者などの、明らかに原宿めいた人たちはもちろん、妙齢のマダムや紳士まで、あの「ふわしゅわ食感」に魅了されている。
生ドーナツは、まだまだ人気だ。
そもそも「生ドーナツ」とは、いったい何者なのか。
I'm donut?によると、「生ドーナツ」とはこういうものらしい。
「生ドーナツ」は、よくある普通の「イーストドーナツ」とは別物だ。
口の中に入れると、すぐに溶けてなくなる。
よく夏祭りで出会う「わたあめの親戚」なんじゃないかと、疑ったこともあるが、どんなに怪しんでも、「生ドーナツ」のベースは粉。
言うほど不思議なモノじゃないから、ますます不思議だ。
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大きな特徴は、フランスの大人気菓子パン「ブリオッシュ」の生地を採用していること。
特徴を整理すると、こんなかんじだ。
「生ドーナツ」と「普通のドーナツ」の違い
「生ドーナツ」は、見た目は「イーストドーナツ」と変わらない。
イーストドーナツもふわふわしていておいしいが、口の中でとろけない。
生ドーナツ独特の「生感」は、ブリオッシュ生地に由来する。
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ブリオッシュとは、フランス発祥の高級菓子パンのひとつ。
世界最大のイーストメーカー「ルサッフル社」によると、その配合バランスは以下のとおりだ。
通常のイーストドーナツの配合バランスと、ちょっと比べてみてほしい。
大きく異なるのは、バターとたまごの量だ。
特にバターは通常のイーストドーナツが5%のところ、生ドーナツは30%も入っている。
名古屋文理短期大学の論文(※1)によると、バターがたくさん入ったパンは、弾性率が高い。
弾性率とは、変形のしにくさを表す言葉で、指で大きく押しても変形せずに元に戻りやすいことをあらわす。
これが、生ドーナツの「ふわしゅわ食感」の源だ。
でも、誤解してはいけない。
世の中に出回る「生ドーナツ」すべてが、ブリオッシュ由来だというわけではないのだ。
「生ドーナツ」の「生」の意味には2種類ある
生ドーナツには、大きくわけて2種類ある。
生ドーナツ専門店の「生ドーナツ」は、その多くがブリオッシュ生地を使っている。
一方、ヤマザキパンやファミリーマートなどの「生ドーナツ」は、真ん中に生クリームを入れたり、生地に生クリームを練り込んだものが多い。
多い…というだけで、ルールがないので、むずかしい。どの「生ドーナツ」もおいしいが、やっぱりちょっと違うので、好みは分かれる。
問題なのは、どちらも同じ名前で売られているということだ。
「バター〇%以上じゃないと『生』と記載してはダメ」「生クリーム〇%以上じゃないと『生』と記載してはダメ」などという、食品表示基準で決められた定義があるわけではない。
シンプルに言って、ややこしい。
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実は「生」は、食品表示基準上少々やっかいな単語である。
例えば「しょうゆ」のパッケージには、安易に「生」と記載できない。
「生(なま)しょうゆ」と表示してもいいのは、火入れをしていないしょうゆだけだ。
食品表示基準には、以下のような、なかなかに理解が難しい長文で説明されている。
このしょうゆの例と比べたら、ドーナツはだいぶ甘やかされている。
「生」が使い放題なのは、やっぱりすごい。
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コンビニの「生ドーナツ」と言えば、ヤマザキパンの大人気商品「極生ドーナツ」だ。
「極生ドーナツ」は、そもそもバターを使っていない。中にたっぷり入った生クリームが主役で、生地は脇役。
「極生ドーナツ」を略さずに言えば、「極めて生クリームがたくさん入っているドーナツ」と言うことになる。
ブリオッシュ生地を使ったバターの配合が多い「ブリオッシュ系生ドーナツ」も生クリームの配合が多い「生クリーム系生ドーナツ」も、両方「生ドーナツ」であることにちがいない。
さらに言えば、食品表示基準が変更されない限り、今後もまたぜんぜん違う「生ドーナツ」が生まれる可能性も、もちろんある。
「生ドーナツ」に未来はあるのか
「生」という言葉には、とても不思議な魅力がある。
だから食品によっては、「生」をつけて売ることが禁止されている。
前述した「しょうゆ」だけでなく、「トマト加工品」、「果実飲料」、「豆乳類」、「にんじんジュース」など。(※2)
「生」がついていたら、食品表示基準違反なので注意が必要だ。
実際、「生ドーナツ」は売れている。
ヤマザキパンのドーナツ事業の売上は前年比112.9%で好調だが、この理由は「生ドーナツ」の力が大きい。
「生ドーナツ」が売れれば売れるほど、「生」とは何を指しているのか、疑問に思う人も多くなるかもしれない。
「ブリオッシュ系生ドーナツ」が食べたい人は、「生クリーム系生ドーナツ」を買って、がっかりするかもしれないし、もちろんその逆もありえる。
状況から察するに、そろそろ「生ドーナツ」も規制が入ってもおかしくない。
やっぱり「生」は売れる。
個人的には、「生ドーナツ」の未来が心配だ。
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