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韓国ドラマ「アンナ」(アマプラ6話版)

主演:ペ・スジ、チョン・ウンチェ、キム・ジュンハン、パク・イェヨン
2022年 全6話
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=このサイトより)

韓国に戻ってきました〜(ドラマの話ね)。
妖怪(『アイランド』)と夫婦ドロドロ劇(『夫婦の世界』)で韓国ドラマがトラウマになり、ちょっと中華圏へ逃げていたが、そう長くも韓国を不在にするわけにもいかない。本当はチャン・ヒョク新ドラマで復活しようと思っていたが、サブスクしていないチャンネルでの独占配信というところで、諦めることに。しかし何か観たいので、前々からこちらのみるかく子さんの記事で気になっていた本作を視聴。

と言っても、本編の8話版ではなく、短い方の6話版を観てしまった。というか、やっぱりまだまだ韓国はトラウマで長いものを観たくなくて、少しでも短い方を選んでしまった次第(笑)。

小さな嘘から他人の人生を歩むことに

ペ・スジ演じるイ・ユミは、高校時代に教師と恋に落ちてしまい、学校側に知られてしまった彼女は止むを得ず転校させられる。
新しい高校で大学受験のために勉強するものの、残念ながら試験に落ちてしまった。浪人生活を送っていたが、心配する地元の両親をがっかりさせたくなくて、「合格した」と嘘をつくことに。

その”合格した”大学の学生たちと知り合ったところから、彼女の運命が少しずつ変わっていく。。。

父親が亡くなり、自分で生活費を稼ぐ必要が出てきたユミは、いろいろな仕事に就くが、ある日、チョン・ウンチェ演じる金持ちでアメリカ帰りのイ・ヒョンジュのほぼ秘書兼召使のような職に就く。
不当な待遇に耐えながらも、何年か彼女のもとで働くが、ついに堪忍袋の緒が切れ、ヒョンジュのパスポートとアメリカの大学の卒業証書を持ち出し逃亡。
「アンナ」と改名し、今度は自分で自分の運命を変えることにするユミだった。

偽のアイデンティティを生きる

ある意味、マット・デイモン主演のアメリカ映画『リプリー』の韓国版とも言える本作(ドラマ観ながら夫に言われて思い出した次第)、ジャズではなくアートになっているが、主人公ユミ、そしてアンナになってから結婚した夫、政治家を目指すチェ・ジフンがそれぞれ何らかの動機で次第に「あんな人になりたい」という欲望を次第に募らせていく過程がうまく描かれていた。

ペ・スジを見るのは『スタートアップ』以来かな。2年ぶりか。明るい頑張り屋さんの役柄とは一変、心に闇を抱えた雰囲気がとても良かった。偽のアイデンティティを生きるようになり、それを必死に守ろうとするが、次第に疲れていく。ほとんど化粧っ気のない疲れた顔も美しかった。

そしてユミが「月」だとすれば、召使いのようにこき使われていても、「太陽」のような、ある意味羨ましかったヒョンジュ(アンナ)。金持ちの家に生まれ、何一つ不自由なく育ち、アメリカ留学もして英語もペラペラ、派手で美しい。
しかし、そんな彼女も実は葛藤を抱えており、「アンナ」という名前の由来が明かされる。このシーン、実は個人的にドン引きだが、印象的なシーンだったので良しとしよう。

誰にでも「アンナ」願望がある

私は存在自体聞いたこともなかったのだが、このアンナは「アンナ・アンダーソン」という、「ロシア皇女アナスタシアを自称したアメリカ人女性。王族偽装者の一人」(Wikipediaより)から取ったものとヒョンジュが白状する。記憶喪失の女性が、自分がそうであると思い込み、さらには周りからも盛り立て上げられ、自分自身が本当にそうであると錯覚した人物だ。

本作ではまさにユミ、ヒョンジュ、そしてチェ・ジフンの3人がまさにこのようなスパイラルに入っていっているのがわかる。チェ・ジフンはある意味リプリーになりきっていると言えるのではないだろうか。

「別のアイデンティティを生きたい」という願望は誰にでもあるだろう。一番簡単なのは(と言ってもそう簡単ではないが)、俳優になって他のアイデンティティを疑似体験するというのが罪にならなくていいかもしれない。
しかしやむを得ず「アイデンティティを変える」人もいるだろう。例えば日本の小説・映画『ある男』の主人公はある意味必要に迫られたものであったろう。

もしかしたら私たちの周りにも、気がついていないだけで「アンナ」や「リプリー」、「大祐」がいるのかもしれない。。。
そんな「アイデンティティのあり方」について考えさせられた、うまくできたドラマであった。

こちらが予告編。




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