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韓国ドラマ「スタートアップ: 夢の扉」

主演: ペ・スジ、ナム・ジュヒョク、キム・ソンホ、カン・ハンナ、キム・ヘスク
2020年 全16話
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=Netflix公式サイトより)

華流ドラマと並行して、韓国のドラマも常に1〜2本は視聴しているが、必ずしも記事は書いていない(BLばかり見ているわけではないのである)。しかしこれは久しぶりにとても面白かった韓国ドラマなので、自分でまとめてみようと思った。

架空の人物との文通から始まるラブストーリー

ペ・スジ演じるソ・ダルミは、正社員になれることを願って一生懸命仕事をしているが、いつかは自分で起業したいと考えている。
両親は小学生の頃に離婚し、彼女は父親と住んでいたが、彼も亡くなってしまい、祖母に育てられた。
彼女には15年ほど前に文通をしていた『ナム・ドサン』という同級生の男の子がいた。会ったことはないが、ずっと想い続けている彼女の初恋の人。しかし、両親の離婚の際に母親について海外に移住したカン・ハンナ演じる姉のウォン・インジェに偶然出会い、成功している彼女の姿を見て、自分もいいところを彼女に見せつけてやりたいと感じる。
そこで昔の文通相手の『ナム・ドサン』に再会し、彼に数時間だけでも恋人のフリをしてもらって、起業家を目指す人が集まるパーティーで姉を見返してやろうと計画する。

しかし、この『ナム・ドサン』という人物は、キム・ヘスク演じる祖母のチェ・ウォンドクが、キム・ソンホ演じる孤児の青年ハン・ジピョンと一緒にでっち上げた架空の人物であった。
両親が離婚した当時、仲良くしていた姉が海外に引っ越して会えなくなってしまったダルミを祖母が不憫に思い、偶然助けてあげた貧しいジピョンに住居と食事を与える代わりに手紙の代筆を頼んで、ペンパルになってもらう。本名を出したくないジピョンは偶然新聞の記事で目についた、数学オリンピックで優勝した少年の名前『ナム・ドサン』を使う。こうして二人は文通をするようになったのであった。

成人したジピョン、ソウルで有数のスタートアップ企業への若手投資家として有名になっていたが、偶然ダルミの祖母と再会。彼女から孫が昔のペンパルに会いたがっていることを聞かされ、昔の恩人のために本物の『ナム・ドサン』を探すことにした。

ナム・ジュヒョク演じる本物のナム・ドサンは天才的なソフトウェアエンジニアで、友人二人とサムサンテックという会社を立ち上げたが、投資を受けることもできず、うだつが上がらない青年。でもスタートアップを夢見て、新しいソフトの開発をずっと続けている。
そんなドサンをジピョンは見つけ出し、事情を話して数時間だけ『手紙のナム・ドサン』になってもらいダルミに会ってくれるよう懇願するが、果たしてドサンはそれを受けるのか?

スタートアップを夢見る若者達、その思いを利用する大企業

これはダルミ、ドサン、そしてジピョンのラブトライアングルのストーリーでもあるが、メインテーマはタイトル通り夢見る若者達の物語である。AI(人工知能)を使ったソフトを開発する起業を目指す若者達が、サンドボックスというスタートアップを応援するストラクチャーに受け入れてもらうためのコンペ「ハッカソン」に参加し、その後投資家を見つけられるかどうか、様々な能力が試されていく。

ラウンド、エンジェル、アーリーといったパッと聞くと意味がわかっている英単語も、このドラマでは投資用語としての意味を持っており、若者達もただ単にソフトを開発できるプログラミング能力だけでなく、投資家向けのタームシート、ビジネスプランをきちんと作る能力も求められる。
そして、若者達の夢とは裏腹に、投資する企業側の思惑は純粋なものとは限らない。大企業の名前をちらつかせて安く彼らの能力を利用、搾取しようとするところや、企業に投資するように見せかけたエンジニアの引き抜きをしようとするところがあるのも現実である。

キュンキュンしたり、応援したり

このドラマの配信が始まってから、アジアドラマファンの間ではエピソードごとに、
「ドサン派?ジピョン派?あなたはどっちを応援?」
と投票が行われるほど、連日盛り上がっていたが、私はまだドラマを見ていなかったので結果は見なかった。しかし、ダルミ、ドサン、ジピョンの恋心にキュンキュンしたり、仕事への熱意を応援したり、同情したり、怒りを感じたり、1話目から最終話までいろいろな側面で楽しませてくれたドラマであった。
途中までは背か高くてモデル体型、でもちょっとボケてる感じが可愛い理数系のドサン派かなと思ったが、最終的には私は恋でも仕事でも、スタートアップを目指す若者達に毒舌を浴びせかけるが、実は優しいジピョン派かもしれない。
他の視聴した方はどうでしょうか?男性ならダルミ派か、インジェ派?

地図なき航海へ出る勇気

最後に、ちょうどこれと同時期に視聴した新しい職業をテーマとし、若者達の夢を描いた作品二つについても一緒に考えたい。一つは先日書いた中国ドラマ「Something just like this」(青春创世纪)、もう一つはインドを舞台とした映画「ザ・ホワイトタイガー」。これについてはこちらの方の記事をどうぞ↓

中国のは”ライブコマース”をテーマとしたお仕事ドラマで、「スタートアップ」と比べると、夢というよりはより現実を追っていく実用的な内容になっている。
逆にインドのは同じアジアでも、日中韓では考えられないカースト制度というものが根強く残る社会。その中で主人公がいかに自分の置かれた身分から抜け出そうとするかの話であるが、彼自身のキャリアを純粋なサクセスストーリーと呼ぶかはさておいて、彼にそのきっかけを与えたのは”インターネット”、”バンガローレ”、そして”アウトソーシング”というキーワードである。

どの作品にも共通しているのは、今の時代では当たり前になってきているコンピューター、インターネット関連の職業をテーマとしている(インドのはちょっと違うが)。私が学生の頃はこんな職業の概念はなかったし、これから先ももっと新しいものが出てくるだろう。
劇中で”地図なき航海”という言葉が出てくる。地図を持たずに航海に出ると死んでしまうかもしれないし、生き延びられるかもしれない。あるいは結果はどうあれ、その航海自体は楽しいものかもしれない。こんな時世、新しいものにトライしていく勇気、まず出航する勇気が必要だというメッセージがこの3つの作品には込められているような気がした。

あらすじはこちらの方の記事も詳しいので合わせてどうぞ!

こちらはアイドルグループRed Velvetが歌うオープニング♪他のOSTもみんないい。


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