"サステナブル" を知ったかぶる。
『計画的陳腐化』という言葉をご存じでしょうか? これ、世界中の企業が行っている企業戦略の一つなんです。
計画的陳腐化とは、製品の寿命を人為的に短縮する仕組みを製造段階で組み込んだり、短期間に新製品を市場に投入することで、旧製品が陳腐化するように計画し、新製品の購買意欲を上げるマーケティング手法のこと。(wikiより)
「これ、めっちゃええよ」と売っておいて、少し時間がたったら「もう、それ古いで。新しいのに買い替えたらどや?」とオススメする頭のおかしい戦略です。
でもね。この戦略が当たるから、人ってわからないものです。
例えばAppleさん。この戦略の名手です。あまりにえげつない(※1)のでたまに見つかって怒られるのですが、それくらいはご愛嬌。売っては捨てさせまた新しいのを買わせる手法はさすが世界の一流企業、それはそれは見事なものです。
(※1)旧機種のiPhoneの動作速度を意図的に遅くしていたことを認めた米アップル
車なんかもそうですよね。モデルチェンジには、今は走っている車を ”古い車” にさせる目的もあります。ついでに言えば、若い人は知らないと思いますが、昔は新車から10年たったら車検は一年おきが義務だった。制度として「もうそれ古いで。買い替えた方がええで」と言われていたのです。
ある有名なスイスの時計も、ケースに使われているステンレスは今と昔じゃ全然違うと言われています。昔のステンレスは「ドリルの刃が立たなかった」なんて話も聞いたことがあるくらい。要するにある程度使ったら 壊れるように 、最初から弱く作っている ということですね。
とはいえ企業側の気持ちもわからんでもないです。そりゃ新しいの作ったら新しいの買って欲しいですもん。けど客が古いの気に入って使ってたら新しいのは買わん。だったら「はよ古いの壊れてくれんかな」と思うのはとても自然なことです。
かくして、
買って捨て 売って捨てさせ また買わせ
で経済は成長してきたのですが。
ここにきて サステナブル なんて言葉が使われるようになってきました。
SDGs の S 、Sustainable。『持続可能な』らしいです。
言葉の意味はよくわかりませんが、とにかくすごい自信を感じます。たぶんですが、地球の未来を考えましょうってことなのでしょうね。大切な事です。
SDGsではいくつかの目標が設定されてるのですが 廃棄 も問題の一つとされています。
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」
持続可能な生産消費形態を確保することを目指していることから、天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成するとともに、食品ロスを含み、すべての消費による廃棄物の削減に取り組む。
ちなみに日本の食品ロスは年間約612万t、衣服ロスは年間100万tと言われています。
だとしたら、新型iPhoneなんか買わずに、毎年”流行”を演出して買い替えさせるアパレルの方々に乗せられることなく、かっこいいCMに惑わされず20万キロ走った車を修理しながら乗るべきでしょ。
当然でしょ! 宇宙船地球号の乗組員の一員として、サステナぶらなきゃダメでしょ!
ウソです。僕にはそんなの無理です。先日、来年には着られないのをわかっていながら、やっすいTシャツ買いました。
いや、まあしかしですね。僕が特に意識が低いってわけでもないんですよ。
最近、ちょっと 革製品 に注目していまして。というのも、こんな事があったんです。
もちろん毎日履いてたわけじゃないのですが、20年前の靴です。これが今もきれいに履ける。
この時にふと考えました。うちに20年以上使ってるモノ ってあるかな と。
息子が産まれた時に妻にプレゼントした時計。あれは20年以上たってるな。それ以外だと… 車は何台も壊れて買い替えてるし、テレビも冷蔵庫も家電は全部買い替えたな。パソコンは見事に陳腐化戦略にやられ、タブレットなんてここ最近の話で…
ないんですよね。ずっと使ってるモノなんてない。
僕は この20年で買ったモノ、全部捨ててきたんです。
ノーサステナブル。環境破壊。地球の敵。
だけどこの靴は残ってる。履けてる、使えてる。
いくらで買ったか忘れましたが、めちゃくちゃサステナブルですよね。
ポイントはデザインと素材なんだと思います。デザインが古くない、というかクラシックというか普遍的というか、そういうものなので、今履いてもまあまあイケる。
そして素材。ビニールや布だったら違ってたかもしれません。靴磨きのお兄ちゃん曰く「ちゃんと手入れしてあげれば、いい革は死にませんから」らしいです。
そもそも 革で作る製品って、きっと ”ずっと使う” を前提にデザインされてるので、古い感じにならないんでしょうね。(しらんけど)
そう考えると、ちょっと高くても割に合うなと。いえ、これぞサステナブルだな と思い始めたんです。
で、ちょっと前に買ったのがこのブックカバー。
実は昔、ある女性に本をプレゼントしたことがあるんです。
忘れもしません。あれはクリスマスの夜でした。
食事をしながら僕が渡したのは彼女のために選んだ本。自分ではとてもロマンチックなプレゼントのつもりでした。
ですが、本を受け取った彼女はこう言いました。
「これがクリスマスプレゼント? ケチってる?」
いや、決してそんなつもりは…
たしかにその本は千円ちょっとだけど… 金額の問題じゃ…
二度と同じ過ちを繰り返してはならない、そう考えていたのですが。
この革のブックカバー、いい。
ちょっと小さい文庫サイズが、ちょうどかわいい。
これならきっと喜ばれるはず。こうすれば、本も立派なプレゼントになる!もうケチったとは言わせないィィィ!
ずっと使えるブックカバーに入れる本なら、ずっと読めるものがいい。
古典がいいかな、いや若い女の子に『老子』とか贈ってもオヤジ色が強すぎるな、でも小説だと好き嫌いが出るだろうしなー、
なんて巡らせる想いまで全部含めて、めちゃくちゃサステナブル ですよね。
革のブックカバーはちょっといい発見。
しばらく僕は、これで世界をサステナブりたいと思っています。
ということで、サステナブルを知ったかぶってみたのですが。
僕にはまだよくわかりません。
本当にこれを実現したいのならば、我々は何をすべきなので、何をしてはいけないなのでしょうか。あるいは現実として、何をあきらめるべきなのでしょうか。
それを考えることはとても大切だとは思うのですが、形だけの ”ファッションサステナブル” にはお気をつけて。
声高に「サステナブル」と叫んでいる人がいたら、その人の携帯を見てみてください。最新のiPhoneを持ってたら、その人は「陳腐化サレテル」かもしれません。
※ この記事はこちらのブログを参考にさせていただきました。ありがとうございます。
-- 『世界はなにをそんなにサステインしたいのか』--
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?