見出し画像

青春の終わりはあっけなく

先日、高校の卒業式があった。

家を出ると久しぶりの雨模様。
長い間休校になっていた学校は、灰色の空のせいか、なんだか埃をかぶっているように感じられた。

私達の卒業式は、今まで3年間想像していたものとは全く違った。
卒業生一人一人の椅子は間隔を開けて行われ、もちろん後ろにいるはずの在校生は、いない。

式を行えると言うこと、先生方には勿論感謝してもし切れない。
式からも、先生たちの愛が痛いほど伝わってきた。(私達は、しばしばその愛に対して「そう言うのがウザい」などと安易な表現をしてしまうが、それはほとんどの場合素直になるのが恥ずかしいだけだ。)

でも、決して歌わないようにと指示された校歌が、寂しくスピーカーから流れている時、ほんの少しだけ、なんでこんな年に当たってしまったんだろうと思った。一生のネタになるだろうから良いか、と諦めることにする。


一時間足らずで式が終わり、最後のホームルーム。相変わらずうちのクラスは騒がしいままだ。
聴覚過敏気味で、先生が大きい声や負のオーラを出しているのが死ぬほど嫌いだった私は、この騒がしさが本当に苦手だった。保健室に行ったりトイレにこもったりと、この空間から逃れる方法ばかり考えていた。

でも、昨日だけはその騒がしさが愛しく感じられた。
なぜそう思ったのか、私には分からなかった。泣くほど嫌だった教室だったのに。


卒業証書やらアルバムやらをもらい、集合写真を取り終えると、最後に先生の熱い言葉を頂きホームルームも終了。

これで終わり、と思いきや派手めな女の子たちが教卓のまえで何か説明している。 
どうやら、このあとクラスで打ち上げがあるらしい。私はクラスのLINEグループにも入っていなかったので、人数にも含まれていなかったのだろう。初耳だった。

多分ここで、「私誘われてないんだけどお!」とか面倒臭いことを言っても店を人数予約しているから参加は無理だろう。
あいにく、今夜はバイトが入っていたので行けないが。あ、聞かれてないか。


いつものように今日の一人反省会をしながら歩く帰り道。
今日は、クラスで一番人気の男子と初めて話せた。人生で、最初で最後の会話だった。
もっと拝んどけば良かった。反省。

最後の通学路は、反省会と若干の独り言も含めていつもとなんにも変わらなかった。思い返せば台風が来たり大雪が降ったり、色んな表情をしてはいたけど、3年間この街は変わらずそこにいた。


長い休みの期間の中で、私の環境は少しずつ変化していた。バイトを始めて、新しい人たちに出会って。毎日私服を着てメイクして。
急に大人になったような気がしていたけど違ったみたいだ。クラスに戻れば、やっぱり地味で冴えない高校生だった。最後まで。

これから私の泥まみれのスニーカーのような青春は1日を重ねていくたびに、どんどん遠ざかっていく。
思い出も段々と美化されていくことだろう。

過去が過去であることは変わりないけど、今が今であることは変わりない。
過去を振り返ってなんかいられない。
一息ついて、山の上からゆっくりと自分の登ってきた道を見下ろした時、素晴らしい景色が見られるように。

出来れば、その時自分が一番高い所にいたい、と思ってしまうまだ未熟な私だけど、
まずはその時を迎えられると言うことを目標に
私は走り続ける。

走り続けられることに感謝を抱き、これからも一瞬であろうこの人生、がむしゃらに生きていこうと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?