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海の近くに住む

私は幼い頃、東京育ちの都会ベイビーだった。

家の前の道を一本抜ければ、そこは日本中から人が集まる東京。どこに行くにも地下鉄で移動していた。それが普通だった。

そんな東京ガールだった私も、千葉に引っ越してきてから13年が経った。

東京より千葉に住んだ時間の方が遥かに長くなり、きっとこれから大人になって、「あなたの出身地は?」と聞かれたら、きっと「千葉県です」を答えるだろう。

東京以外の土地に住む学生は、大体東京に憧れる。
私も例外では無いんだけど、それでもこの街は東京には無い良さを持っていると思う。

この街の好きなところは、なんと言っても海が近い事だ。

冬はとても冷たい海風が吹き込んできたり、自転車が塩でサビサビになったり、色んなことがあるけれど、季節ごとに色んな表情を見せるこの海が、空が、この景色がやっぱり好きだ。

そんなこの場所にも、今年も春が来たらしい。
いくら近所とは言え、冬は寒すぎるからあんまり海に行かない。
でも今日は暖かかったからなんか外に出たくなって、サビサビの自転車に乗って海に行ってみた。

潮と春の香りのする風を受けながら、松林を抜けると、海が見えるサイクリングロードに出る。

それにしても、日曜日の海はカップルのためにあるようなものだな。
ジョギングに、サイクリング、浜辺に座る人。カップルばかりである。

坂を上る。
ジョギングカップルたちを立ち漕ぎでどんどん抜かしていく。
汗ばんできて、パーカーにコートは厚着しすぎたなーなんて思いながら、
ふと右側を見るといつも変わらない海が広がっていた。

これだ。私はこの景色が見たかった。
夏と違って、雲が優しい形をしているのがまた良い。

一人で見る海もちゃんと綺麗だってことは知ってる。
でも、もしこの先、私に愛する人ができたなら、一緒にこの春の海風を感じてみたいな。 

二人で感じる風はどんな香りがするんだろう。

そんな妄想をさせてしまうのが、この海だ。

おわり



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