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ゲームプレイと融合する物語『アーマードコア6』はライトユーザーにこそ体験してもらいたいゲームだ ゲームレビュー




【1】はじめに


発売から2週間――
アーマードコア6は、難しいゲームとして名を馳せている。

しかし、私がこのゲームに感じる魅力は物語である
登場人物たちの背景に想いをはせ、バチバチに感情をこめながら射撃ボタンを押す。バリバリのライトユーザー・プレイだ。
これが本当に――面白い。

今回はあえてアクション部分には最低限しか言及しない。
物語没入型ゲームとしてのアーマードコア6。その魅力について書き残す。

(お手数をおかけして申し訳ない。
都度はさむゲームプレイ画像・映像は、微量なネタバレを含んでいる
新鮮なプレイを求める方は今すぐアーマードコア6を起動してほしい。)


【2】優しさが散りばめられたストーリー

「また会ったな、戦友。」

――出てくる登場人物がみんな優しい。

アーマードコア乗りたちは、銃を突きつけあう関係。
なぜこんなに優しいのか、最初は困惑したが……すぐ理解した。

彼らは組織に属する人間であり、目的はあくまで利益だ。
連帯することが生き残る力になるとわかっている。
敵同士になりうるからこそ、話をつけるために仲良くしておく。

この真っ当な世界観。本当にアーマードコア?

そしてこの優しさは主人公621――
――ひいてはプレイヤーの情緒をぐちゃぐちゃにしてくる。
キャラクターたちと仲良くなってゆくのである。

アーマードコア6の登場人物たちは優しい。
みんな、誰かのため・何かのためと思ったことを命がけで実行してゆく
彼らの見せる生き様は、私たちプレイヤーと主人公621の心を打つ

「感情が薄い」と定義される主人公――強化人間621。
物語開始時点の621は、プレイヤーと同じまっさらな状態で始まる。
ただ言われるままに人型兵器を駆る殺戮マシーンにすぎない


父親役であるハンドラー・ウォルター。そして初めてできた友達のエア。
惑星ルビコンで出会う様々な人たちとの交流

彼らの想いを知ったとき――
――強化人間621は、自分の夢を見つける

「借り物の翼で、どこまで飛べるか」


アーマードコア6は、ひどく真っ当で美しい物語である。


【3】物語と融合してゆくゲームプレイ


アーマードコア6は、ゲームプレイ画面が美しい

宙に何十もの花火を散らすミサイル
自機のすぐ横をかすめる煌めく閃光
それらに照らされ、ケレン味のあるポーズを決めるロボット

すべてが美しい。
イベントシーンかと見まごうほどだ。

美しい光景のなか、物語を乗せてゲームプレイは進んでゆく。
対峙する相手。そして仲間たちと交流しながら戦う。


物語を楽しみながら、ゲームプレイも同時に楽しむ

これ以上の贅沢はほとんどない。最高の時間を味わえる。

この贅沢な楽しみは、風変わりな難易度カーブに強く支えられている。
アーマードコア6の難しさは物語のためにある。

主人公621は強化人間ではあるが、惑星ルビコンに来たばかりの新人だ。
まだ新しい戦場に不慣れ。周りの人間からの評価も低い

プレイヤーも主人公と同じような状況に落とされる
まだ操作に不慣れだというのに難易度がぴょんぴょん上がってゆく
チュートリアルで教わったことを再現するだけではなく、応用して自分の攻略法を編みだすゲームプレイを要求される。

――きわめて、きわめて難しい。
わかってしまえばなんということはない。
操作を練習せずともトントン拍子で進んでしまえる

むしろ簡単な難易度だと言えるだろう。

――しかし、たとえばサッカーをやったことのない人間に「ルールは教えたよ! がんばってシュートを決めてね!」と丸投げすればそれはもう――相手がどんなに弱かろうと難しいのだ。

プレイヤーは何度も打ちのめされながら必死に戦ってゆく。

かくして、主人公621とプレイヤーは重なる。
過酷な戦場を懸命に生き延びる。
序盤を乗り越えたとき、プレイヤーは主人公と同一の存在となっている

そして中盤以降、なだらかなバランスの戦闘がつづく
プレイヤーは攻略法を編みだすことに慣れて快勝をつづけるようになる。
主人公621も逆境を覆しうる腕利きの傭兵として認められてゆく

連続した勝利は成熟したという達成感をプレイヤーにもたらす。
そしてもうひとつ……ゆとりを与える。

「ウォルターとあなたは、このルビコンで何を……?」

徐々に感情を取り戻し、ひらけてゆく621の視野。
それとシンクロするようにプレイヤーも物語を感じるゆとりを得る
聞こえてくるのは、惑星ルビコンに生きる人々の想い
生ずるのは 「このまま戦っていていいのか?」 という疑問。

――ルビコンで何を成すのか?
迷いながら選び、ゲームプレイを通じて己の手で果たすとき
プレイヤーのなかには『何か』が生まれているはずだ。

それこそがアーマードコア6の面白さ。
ゲームプレイと融合した物語――なのだろう。



【4】さいごに


「君はまだ“負けてたまるか”と思っていればいいと考えている。
自分というものを抑圧する敵がいて、そいつに打ち勝てばいいと……だがもう、それは限界なんだ。」

君は迷っている。どう考えたものか
――みんなを道連れにしてやって、ざまあみろ、と割り切るべきなのか。
これは仕方のないことだ、誰のせいでもないんだ、と悟った風になるべきか」

「君はこれまで、自分が何なのかを考えてこなかった。
己が何者なのか、それを見極めることから逃げてきた
しかしその道はいま、ここで終わった。この穴が終点だ。この先はない。

ラビット・ラン――君はもう逃げられない。


――上遠野浩平『ブギーポップ・ダウフトル 不可抗力のラビット・ラン』  より引用


(他の作品の引用で終わるのってレビューとしてどうなんだ?)
(まぁいいじゃん。憧れたものを引用しても、同じものになれることはないのさ。――それでこそ、美しいのだけど。)





かくして、鴉に憧れた犬たちは踊る。

「――待ってたぜ、野良犬」

   ARMORED CORE VI    FIRES OF RUBICON  


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