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朝のやさしい陽のなかで。

マガジン "Sha-Gaku手帖" の記事です。
私のこれまでに撮ってきた写真たちをメインテーマにした記事・写楽Sha-Gaku。色と光と影を私の好みで捉えたものたち。写すことを楽しむ私の手帖です。


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朝のやさしい陽のなかで。


今春の花の撮影スケジュールをそろそろ考えようかと思って、過去3年分の3~5月に撮った花の写真データをチェックしていました。

その中でも、一番自分らしい表現で花を撮ってあげることができたなあと思うものがありまして、その写真を見ていたら
〝それじゃあコーヒー豆でも挽こうかしら〟
と思わずにはいられませんでした。

先週の土曜日に、行きつけの珈琲店で浅めに焙煎してもらったばかりのエチオピアの豆の封を開けて、ハンドミルのホッパーのなかに注ぎ落とす。
そのときの豆がホッパーに当たって小さくカチカチと立てる音も聞き心地よくて。挽き目を細くセットしたハンドルを回しているときのゴリゴリっとする振動と音で、いよいよコーヒーのひと口目を含んだときのそんな少し先の未来を想像して、自分の表情が綻びそうになるのです。
豆を蒸らすときにペーパーのなかで微かにぷつぷつと鳴いている豆の音。そしてドリップケトルの口から湯を細く落としたと同時に、繊細な音をつけてふわっと何かが生まれて来るかのように豆が膨らんで……
コーヒー豆って生きているんだなあ、と思う瞬間なのです。

私が花の写真を撮るときも、心のなかで……というか胸の奥のところで似たような感触を味わっている感じなのです。嬉しいとか、気持ちいいという感情に似ているやも。


自分で拘りを持って淹れた温かく湯気のたつコーヒーを飲みながら、自分の気に入った撮り方ができた花の写真を眺めていました。


撮影したのは一昨年の5月29日。
私は心臓機能障害があるために自動車の運転制限を受けているので、自転車で夜中の三時くらいに家を出て1時間半ほど走って撮影の目的地へ向かいました。

天気予報で調べておいた日の出時間よりも早く到着できましたので、陽が空に出る前に急いでロケハンして、ターゲットを二つに絞ってポジションを確保。

撮影するバラの花に〝よろしくね〟と挨拶。
花って、ちゃんと応えてくれるんですよ。

早朝のバラの花って、生まれたての赤ちゃんみたいだなあって思うんです。朝の光が一日のなかでも一番優しいからなのかもしれませんけれど、その無垢さゆえに思い知らされたりもします。
朝日を浴びているバラの花の前には、善も悪も等しくあって、それでもバラの花にとっては咲くことに何の影響も受けないものでしかないんだろうなって。

だから私は、バラのそのときの美しさを、人間の思考が創り出す美の基準ではなしに自然のなかに生きているバラの本能的な美しさそのものを感じるように写真を撮りたいと思ったんです。


写真タイトル
《ただあなたが見つけてくれただけ》

朝4時51分。
まだ空には陽は見えなくても
バラの花はやさしい陽の明かりを感じ
ただそこで言葉を持たずに咲いている。



写真タイトル
《ふと想う、笑顔でいてくれたらと》

朝5時28分。
空に顔を出した陽のひかりはやさしく
ひかりのほさきは溶け込むように
朝に咲くバラの花を慈しむ。


トリミングしてみたけれど、やっぱり撮ったまんまの横構図(原画像)のほうが、本音的にはそのときの気持ちのままっていう感じがしていいかもしれないです。全体の背景があってこそ、そのときの《これだ!》という想いが表れているようにも感じるのですよね……

極端に云うと〝嫌いだけど好き〟っていう感情があるんです。…複雑ですよね。そのときに、好きっていう感情だけ伝わればいいと思って、嫌いって思う部分をカットしちゃうことが儘あるわけですよ……
でも、その好きっていう想いは嫌いだって思う部分があってこそ、微妙な心の加減のある好きということが正確に伝わるんだって、そんなふうに思うですよ。

私の写真に限った話なので写真一般に言えることではないのですけれど、写真の映えを意識して背景にある隠し味をトリミングで落としちゃうと、〝もう絶品ですっごく美味しい〟ってなるのだけれど、それはときとして誰にでも同じ味で作れるから個性がなくて飽きやすいものになるのじゃないかしらって。いっときの映えだけであって残るものがないみたいな……
そういうのって淋しくてイヤなんです。ホントこれ、わたくし論ですみませんなのですけれどね。


というわけで、
トリミングなしの横構図の写真(原画像)も載せておこうと思います。


写真タイトル
《ただあなたが見つけてくれただけ》

朝4時51分。
まだ空には陽は見えなくても
バラの花はやさしい陽の明かりを感じ
ただそこで言葉を持たずに咲いている。


写真タイトル
《ふと想う、笑顔でいてくれたらと》

朝5時28分。
空に顔を出した陽のひかりはやさしく
ひかりのほさきは溶け込むように
朝に咲くバラの花を慈しむ。


撮影日     2022年5月29日
Location 濁川公園のバラ園 新潟市北区濁川
Camera  Canon EOS M3
Lens       EF-M18-55mm f/3.5-5.6 IS STM

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