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SS【消えた仲間】
※ このショートショートは小説【不死者の決戦場】の番外編です。
タケルとぼく(マサト)はきもだめしで山の上にある廃校へやってきた。
廃校までは舗装された道路が続く。
ぼくたちはライトを照らし月明かりしかない夜道を進んだ。
クネクネした急勾配の道を登っていると、熊出没注意の看板がぼくらに想定外の恐怖をもたらす。
さらに登り続けると、(この先50メートル しらほね小学校)と書かれた木の看板が見えてきた。
坂を登りきると校門があり、まっすぐに伸びる道の先に、闇に包まれた不気味な校舎が姿を現す。
タケルは何をとち狂ったか「一人ずつ入ろう」と言ってきた。
さらにタケルは勝手にルールを作った。
校舎内から戦利品を最低一つ持ち帰る。
持ち帰った戦利品をくらべて価値のある方が勝ち。
ぼくはここまで来るだけでも十分気後れしていたので、心の中では「ふざけるな」と思いつつも「おお」と強がってみせた。
タケルは先陣を切り正面玄関から侵入した。
ライトを照らしながら、まるで自分の家にでも入っていくようにスッと姿が見えなくなった。
タケルの照らすライトの光りが遠ざかっていく。
数分後、完全にタケル姿を見失い心細くなっていたぼくの目に、一瞬、タケルのライトの光が見えた。
すでに最初に侵入した校舎を抜け、別の校舎の三階へ移動しているようだ。
ぼくは「何かあった?」とLINEを送ると、すぐに「お宝は無いな」と返ってきた。
それから一分ほどして突然、タケルが居るであろう三階校舎の方を見つめていたぼくは軽い目眩を覚えた。
ただの目眩というよりは空間が歪んだようにも感じた。
タケルの居る部屋辺りだ。
恐ろしいことにそれっきりタケルの姿は消えて連絡も取れなくなった。
ぼくは恐怖を必死に押し殺しながらタケルのライトが最後に見えた校舎の三階に急いだ。
外からずっと見ていたので大体の場所は分かる。
僕が三階にやって来ると、どの部屋も扉が閉まっていた。
ある部屋をのぞいて。
そこは図書室だった。
半開きの扉から中を覗いてもタケルの姿は無い。
空の本棚、それに長机とパイプ椅子も残っていた。
暗すぎてライトで照らしても部屋の奥までは見渡せない。
結局タケルの姿は無く、入り口へ戻り始めた時、長机の上に本が一冊だけ置いてあることに気づいた。
ライトで照らすと、色褪せて茶色く変色したかなり古い本のようだ。
「なぜ一冊だけ?」
ぼくは不思議に思いながらタイトルを見ると、そこには(決戦場)と書かれていた。
ぼくは手に取ってパラパラっとページをめくった。
各ページごとに、この世には居るはずのない怪物のイラストが描かれている。
その下には説明文だろうか? 小さな字で何か書かれている。
めくっているうちに決戦場の入場方法と書かれたページを見つけた。
そこにはこう書かれていた。
※ 決戦場の入場方法
① 怪物を選ぶ
② 怪物の下に記された言葉を唱える
ぼくはまた軽い目眩を覚えた。
下を向いたぼくの目に飛びこんできたのはタケルの携帯だった。
携帯はLINEのトーク画面になっていて、ぼくに何かを送信しようとした形跡があった。
(亡骸に夜明けを与えるのが神ならば、私は永遠に陽の昇らない闇を与えよう。私は不死者を束ねる者)
「これを送信しようとした?」
先ほどパラパラめくった時に似たような文章を見た気がした。
ぼくは覚悟を決めた。
タケルがぼくの立場なら間違いなく後を追う。それが賢明かどうかはともかく、ぼくを見捨てないはずだ。
ぼくはタケルが送信しようとしたのと同じ内容の、あるページの下に書かれた文章を読み上げたあと、両目を瞑り、両手を合わせ祈った。タケルの居る場所に行けるように・・・・・・。
テーブルの上にある誰も触れていないはずの本が、得体の知れない不思議な力でゆっくり閉じ始めるのを目にした。そして、本を中心に半径三メートルくらいの空間が歪んだようにも見えた。
次の瞬間、意識が遠のくような感覚が襲ってきて、ぼくは反射的に倒れまいと踏ん張った。
意識が戻ると辺りの様子は一変していた。
終
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