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SS【奈落の花火大会】


人が死ぬと行くと言われるあの世。

あの世は広大な無数の層で形成され、一番下はほとんど光の当たらない暗く寒い世界です。

人々はその場所を奈落と呼んでいます。


私利私欲のために他人をあざむき犠牲にする者たちが集まっているだけあって、そこでは夢や希望なんて何の意味も持ちません。

その日を生き残るだけで精一杯なのです。


そんな奈落にも娯楽はあります。

年に一度の花火大会です。


現世で関わる人々を苦しめ、奈落に来ても罪を重ねる者たちが最後に行き着くのは、この花火大会なのです。


奈落の門番と呼ばれる屈強な鬼たちによって、玉に詰められ、次々と大きな筒の中に放り込まれます。

鬼が筒の中に火を投げ入れると、筒の下の火薬によって大砲のように空高く打ち上がります。

同時に玉の下の導火線に火がつきます。

火が導火線をつたって玉の中心まで到達すると、玉の中の割薬によって飛ばされた奈落の魂たちは、断末魔の叫びを空に響かせ、最後の光を放つのです。そして無にかえります。


奈落の花火はやり直すチャンスを棒に振り続けた哀れな魂の最後の叫びなのです。



奈落の花火はあの世にあるどの層からも眺めることができます。

闇に咲く大輪の花は、今年も多くの人々の心を魅了しています。


終わり良ければすべてよし、と言った所でしょうか。


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