シナモンロールで振り返るフィンランド・前編【海外初ひとりたび】
はたしてシナモンロール(Korvappuusutit)に恋してるのか、フィンランドに恋してるのか。相手が人でなくても恋できるなんてラッキーだ。初めての海外一人旅を思い出すといとおしくて目頭がじんわりする。たいそうな女だ。この旅のために8カ月ほど前から練りに練った3つの目標は下記の通りだ。
シナモンロールを毎日食べる
たくさんの発見をする
無事に入国して無事に帰国する
振り返るとなんてイージーな目標だと思う。だけどこれで良かった。
いろんなお店のシナモンロールを毎日食べてお気に入りを見つける。そして日本へ帰国後に自分でレシピを再現する。フィンランド流シナモンロールをおうちで焼けば旅の記憶が鮮やかに蘇るはず!
そうして興奮気味に小鼻を少々膨らませながら、ヴァンター空港へ舞い降りた。
シナモンロール懐古録
ひとつひとつに思い出がぎゅうぎゅう詰まっている。
Old Market Hall,Helshinki(ホール内端っこのお店:名前がわからない)
3月初めのAM8時、凍ったヘルシンキは冷たく静かでまだ薄暗かった。
約13時間のロングフライト後だ。寝不足すっぴんヨロヨロの外見とは裏腹に、アドレナリンを放出しギラついた眼光で辿り着いたのはここ。シナモンロールが売っているとは知らなかったのだけど、とにかく暖かいところでこの後の計画を立てたかったのだ。
入り口に近づくと自動ドア(日本では珍しい開き戸タイプの!)が躊躇なく開きドキリとする。入店すると魚料理や香辛料、燻製やらの香りがふんわりやさしく鼻腔をくすぐった。あぁこれが異国の香りか! ゆっくり1周歩き、一番奥のお店でペストリーのショーケースを見つける。海外旅行用の簡単な英語など予習していたのだが、35年間の人生で言えばそれは超未完成の一夜漬けでしかない。使えるわけがない。言葉が通じないというのは緊張する。モジモジしながら先客に目をやると、姿勢よく椅子に腰掛けて一人ガイドブックを読んでいる女の子がいる。しかもるるぶじゃん、日本人だ!彼女は輝く瞳でニコニコしていた。思い出し笑いニヤニヤ族のこちらとしてはとても親近感が湧く。入店する勇気も出た。意を決してショーケース越しに身振り手振りとカタコトの英語で店員さんに注文する。お目当てのものとラテだ。お会計は先払いで、たしか11€くらいだった。席に着くとすぐあの彼女がやはり微笑みながらかわいらしく声をかけてくれた。「日本の方ですか?」と。うすうす察していたのだが彼女も同じく初海外ひとり旅、今朝の便で到着したそうだ(羽田空港から)。会社員で2泊4日の弾丸旅行だと!フィンランドの引力がすごいのか彼女がタフなのか、それともそのどっちもかしらと感心した。 噂通り大きくて平べったいこの国のシナモンロールを頬張る。おしゃべりしながら食べたしちょっと緊張していたので、実は味をよく覚えていない。でも、とても食べやすく優しい味だった気がする。それは初海外ひとり旅1軒目の特別な味かもしれない。先に店を出た彼女の背中を見届けながら、二人ともこれから最大限に旅を楽しめますようにと、心の中で願った。
ROBERTS COFFEE(Aleksanterinkatu 21, 00100 Helsinki, フィンランド)
「Huomenta!」(フオメンタ:おはようございます)
初日ハシゴカフェ2軒目。ブロンドヘアーにつるんとまぁるい健康そうなおデコの笑顔が超カワイイ店員のおねいちゃんが、カウンターの向こうからさわやかに歓迎してくれた。
ヘルシンキは思っていたよりも黒髪のアジア人が少なかった。自分はこの地の人にどういう風に見えるのかしらと、少しだけ気になっていた。だからこの、わたしに向けてくれたフオメンタ!の笑顔はとても嬉しかった。なんにも気にしなくていいな。だれもが同じ地球人、みんな違ってみんないい!そう思えてますますフィンランド旅が楽しく嬉しくなってきた。
このおねいちゃんは終始笑顔でテキパキ働く。ユニフォームは黒いTシャツに黒い細身のピッタリパンツ、頭頂部あたりでクシャっとひっつめにしたおだんご頭。ヘルシンキの女性にこのヘアスタイルをよく見かけた。みんなとてもよく似合うのだ。
わたしは真っ直ぐカウンターが見える席を選んだ。照明の明るさを落とした店内はせわしない感じがしない。とても好みなシナモンロールを野生動物みたいに貪りたい気持ちだったけど、理性のある人間のフリをして一旦手帳を開いた。
ここでまた感動したことがある。わたしの視界に入る限り、ペアで来ている人達はだれもスマホをいじっていなかった。みんな静かだけど会話を楽しんでいるように見えた。すくなくとも各々がスマホに夢中になっている二人組なんていなかった。フィンランドって素敵!なんだかこの町に来てさまざまな物・事・人に一目惚れをしていた。旅行期間中、さらに2度ここへ足を運んだ。
Kaffa Roastery
"イケてるお店”感。訪れたタイミングはスタイリッシュな若者グループが何組か集っていた。日本ならわたしはちょっと敬遠してしまうだろう。だってなんかこういうお店にはお洒落な人しかドアをくぐれない魔法陣があるような気がする。でもこの地に滞在して2日目のわたしは、ハイテンションで謎の無敵ベールを纏っていた。相変わらずトンチンカンな英語を唱える。氷点下に慣れないカンサイ・ヤパニライネンのコーディネートはただの厚着でお洒落とはほど遠い。そんなことにはお構いなくこちらの店員さんもキュートな笑顔で「Hey!」と迎えてくれた。
ここでもお供にラテを頼む。どうしてって、「latté」が発音しやすいからだ。英語も日本語もフィンランド語もだいたい発音が同じ「ラテ」だ。ほんとはブラックコーヒーが飲みたい。
店員のおねいちゃんはわたしがシナモンロールを注文した後、鼻歌を歌いながら滑らかな手さばきで準備してくれた。上機嫌な接客ってとても良い。
思いが強すぎて一日で書き切れないので、残りはまた後日書くこととする。あぁ楽しい。
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