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殺されたところから生まれよ|漫画『ゾミア』

元はと言えばね。
『テロール教授の怪しい授業』で作画されてる石田点さんが、今は『ゾミア』って漫画描いてるんだー、ってところからだったのよ。

『ゾミア』ってどういう意味?って。

ゾミア(Zomia)とは、大陸部東南アジアにおいて、歴史的に低平地の人口集積地に基盤をおく政府による支配が困難であった巨大な山塊を指す地理学用語である。アムステルダム大学の歴史研究者ウィレム・ファン・シェンデルが2002年に造語した。

Wikipedia『ゾミア』

どうも、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ビルマと中国の雲南、貴州、広西、四川を含む丘陵地帯を指す名称みたい。

民族とかを指すんじゃなくて、場所を指す言葉なのかな?

舞台は1215年。現在の中国。当時は女真族の治める金国。

モンゴル軍との戦いの果てに、故郷を追われた難民と孤児が国に溢れていた。

そこにいた契丹人(遊牧民)の少年・バートル。

そして、この物語の主人公・ネルグイ。

バートルは誰よりも強く、ネルグイは難民達が話す様々な言語を話す事が出来る語学の天才だった。

ネルグイ、とはモンゴル語で“名無し”を意味する。
彼は誰かにそう呼ばれたのではなく、自ら名乗っていた。
昔の名前を、忘れてしまったから。

「どうせなら両親がつけてくれた名前がいいだろ?
思い出した時 もったいないじゃないか…」

そして、2人は今日も金国の城壁を壊すアルバイトをしている。

「なんで今 壁壊すんだよ
モンゴル軍が戻ってきたらどうする?」

バートルは納得がいかない様子。
ネルグイは、モンゴル軍とは和解したから、もう攻めて来ないのではないか、と答える。

そして、城壁撤去の責任者である耶律楚材は、疫病対策だ、と2人に説明した。

これから、明るい未来が待っている。

そう思えた夜。
ネルグイは歌を歌う耶律楚材を見かける。

鼻歌…? 珍しいな
何か良いことあったのかな…?

しかし、次第にネルグイはその歌の正体に気がつく。

モンゴル騎兵隊は伝令・戒律を歌にして
一言一句漏らさず伝達することができたという

――耶律楚材は、モンゴル軍の間諜。

モンゴル軍の奇襲が始まり。
城壁を失った金国は、陥落。
僅かに残った女真族は難民となった。

そして。

戦果に巻き込まれたネルグイは、奴隷商人の馬車の中で目覚めた。

――1人で。


原作者自身の読み切り漫画のリメイク版

作画は石田点。
『テロール教授の怪しい授業』の作画をされていた方です。
おそらくこれが連載2作目。


原作は浅村壮平。
なんと、この方も漫画家!
この『ゾミア』は浅村壮平さん自身が、2020年後期・第83回ちばてつや賞ヤング部門で佳作と編集長特別賞を受賞した同タイトル作品のリメイク版のようです。

浅村壮平さんの描いた『ゾミア』は無料公開されていました。
“ゾミア”のタイトルの意味がよくわかります。

出版社は講談社。
掲載誌・レーベルはヤングマガジン。

現在、既刊1巻。連載中。

2巻は2022年8月5日発売予定です。


原作がどう膨らむのか楽しみな作品

とりあえず、現段階において本作『ゾミア』ではネルグイは記憶喪失なのか、隠しているだけなのか良くわからない。

そして、バートルを初めとする原作にはないキャラクター。
モンゴル軍、西夏国、ホラズム王国を交えて、展開しそうなストーリーに、無国家地帯“ゾミア”がどう関わっていくのか。

現在、語学力をもって奴隷商人と関わっているネルグイではあるが、原作のようにどっぷり、という気配がない。

もっと、大きな流れに飲み込まれそうな気配すらする。

今現在の面白さ、というよりは期待値が高い、という方が良い作品ではあるけれど、見たことのない、新しい舞台に、わくわくできる作品です。


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