「気の弱い大人」の長所
突飛もないことだが、私は人見知りはしない方だ。
むしろ、初対面の人だと声かけやすいというタイプだ。
だが、付き合いが長くなってくると、色々と見えてこなかった部分が出てくる。
もちろんそれは、自分も、相手も。
ことさら、親密な人付き合いに関しては、かなりの数のトラウマがある。
恥ずかしい話、人との関わり方が不器用、というよりは、生真面目が故に、八方美人になりがちといった具合である。
私は自分自身のこの部分を、
生真面目の弊害の様に思っている。
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例えば小学生の時。気の強いクラスメイトがいた。
私は出来れば荒波を立てることなく、人間関係を築いて穏便に過ごしたかったのと、強い人と対立すると後々ややこしいのが厄介なので、嫌われたくなくて、その人の言う事はあまり反論せず聞いていた。
しかし、後に自身のテリトリーを奪われる事になる。
彼女は思い通りに事が運ばないと不機嫌になり、周りに敵意を剥き出しにする様な子だった。
委員会を決めるHRで、たまたま私は仲の良い同級生と同じ委員会に入ろうと黒板に名前を書いた。
しかし、気の強いクラスメイトは、「私が入りたいから譲ってよ」と私に声をかけてきた。
……ケンカはしたくないけれど、自分の意志に反して譲る事に少し躊躇して、返事が遅れてしまった。
すると、「○○さん(私)は頭良いから別にここじゃなくても良いんでしょ?私勉強出来ないからさあ〜、分かるよね?」
……彼女が怒ってしまえば、場の空気は最悪だ。
私は嫌われたくなくて、譲ってしまった。
行く先々で彼女は思い通りに物事を押し通して行った。不思議な事に、彼女には同じような気の強いクラスメイトの友達がたくさんいた。
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………………
私は未だに自分の意見を言う、という事が難しい。
会社であっても、仕事の都合をひとつ話すにしても、嫌われないか、呆れられないか、常に顔色を伺ってしまう。
周りに機嫌をあらわにする人や、
大声で怒鳴ってマウントを取る人、
ネチネチと嫌味を言いながら不満をぶつける人、
共通するのは、自分より弱い立場の人間になら何を言っても大丈夫だという、あからさまなパワハラだ。
強気で出ようとした事は何回もあった。
しかし、気性がそもそも戦闘向きではないので、話している内に、物腰が柔らかくなってしまうのだ。
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………………でも。
この気性が逆に長所になることもある。
1つは「癒し」だ。
私と会話をした人の8~9割は、「話していて癒される」と言う。癒そうと思って言葉を発している訳では無いのだが、どうやらそう思われている事が多いらしい。
真面目に相手の言ったことに真摯に向き合おうとするので、「私の事をきちんと聞いてくれている」と安心するのだろう。
もう1つは「聞き手に徹すること」だ。
大抵の場合、会話の受け答えは、話し手と聞き手に分かれると思うが、自分は圧倒的に「聞き手」だ。
意見を言えない、のではなく、「まずは相手の言い分を聞く、それから考えて、反応する」癖がついているからである。
友人には、愚痴や相談に乗って〜〜(泣)と抱きつかれて、夜通し電話した事も一度や二度ではない。
真っ当な相談なら、真剣に答えを考えることもあるが、ただ愚痴を聞いて欲しい場合もあるので、その時は相槌を打って、本人が落ち着くのを待つようにしている。
ただ、私はまだ、仕事上でこの気質と上手く付き合えた試しがない。
仕事に必要なのは、効率、生産性、スピード、質、
といったものだ。
癒しが欲しいから話しているのではないし、
聞いて欲しい話よりは、意見を出してくれ、といった場面に遭遇する事の方が圧倒的に多い。
人と、ちゃんと話す事は、ものすごく難しい。
仕事をして、生きることは、もっと難しい。
気質によって職業の適正もあるのだろうが、自己分析をしてみるのもアリかな、と思った。
欠点ばかりに目を向けずに、裏返して長所になれば、きっと自信に繋がるだろうから。
自分の事を好きになるには、まだ時間がかかりそうだが、一生を終えるまで一緒、なのだから、気長に付き合っていこうと思う。
できれば、その良さが生かせるような職業に出会えたら良いな、と。
今回はここまで。
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