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一枚の写真(開平楼閣)が生まれるまで

先日の私の個展でご購入くださったお二方から掲載許可をいただきましたので、手前味噌ですが、一枚の写真が生まれた経緯を少し記させていただきます。

撮影地は、中国広東省江門市に位置する開平という町。
wikiなどで「開平楼閣」の語を検索すればわかるように、華僑洋館とも呼ばれる高層楼閣のある住宅で、その稀有な歴史と世界でも類例のない姿かたちから2007年、世界遺産にも登録されました。

私がこの建物を最初に知ったのは、六本木のZen photo galleryで拝見した尾形一郎氏と尾形優氏の『中華洋楼』(2014年11月)という展示でした。

尾形一郎氏と尾形優氏の『中華洋楼』(2014年11月)の会場にて

中国にこんな西洋式の、いや、正確に言えば洋式と中華式の見事なまでの折衷建築が存在していること自体、驚きで、機会があれば撮影に行きたいと思って調べていたところ、折しも2017年11月、写真家の澤村徹さんと香港のTurtleback社が共同主催したワークショプをここで開催すると知り、すぐさま申し込んだ次第です。

私は建物の撮影に際しては必ずPCレンズを持参します。垂線を正確に表現した建築写真が好きで、この時もオリンパス製ズイコー・シフト35mm F2.8を持参しました。

それはまた、イタリアを代表する写真家、ルイジ・ギッリの空間表現への私なりのリスペクトでもあり、現地では何はともあれ歪みのない写真を収めてくるように努めました。

その時の一枚がこの縦位置の写真です。

お二人方の元へお納めした開平楼閣の写真

人の写っていない、色も地味な写真ゆえ、個展会場では素通りされかねない写真ですが、そんな一枚に二人の方が注目してくれたのは本当に嬉しい限り。

それも一人は一級建築士の方(宮森智志さん)で、もう一人は私が日本人の現役写真家の中で最も好きな熊谷聖司さんでした。思い返せば、熊谷さんと初めて出会ったとき、ルイジ・ギッリの話題で盛り上がったのも偶然ではないのかもしれません。

さて、そんなわけで、お二方がどんな環境に飾ってくださっているのか知りたくなり、送ってもらった写真が以下の2枚。さすが建築家というべき圧倒されるほどの書棚の前が宮森さん宅。一方、直線だけのシンプル極まりない部屋(寝室らしいです)が熊谷さん宅です。

対照的な飾りつけが面白いですね。

一級建築士の宮森智志さん宅
写真家の熊谷聖司さん宅

ちなみにこの建築が生まれた背景には、アメリカ西海岸でのゴールドラッシュが深く関係しており、黒人奴隷制度の廃止後、その代わりとなった中国人労働者「苦力」(クーリー)の歴史でもあるので、機会を改めて詳細を書く予定でおります。

(記:2024年8月13日)

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