マガジンのカバー画像

Philosophie

7
哲学的な。
運営しているクリエイター

記事一覧

錯視

Q.林檎の中には何がありますか?

「水かな」
「ジュースよ」
「甘いね」
「そりゃ種でしょ」
「黄色いよね」
「俺のは白い」
「剥いてあるやつ?切ってあるやつ?」
「まず"中"の定義を決めよう。そもそも"内側"とは"仕切り"が存在するという前提のも「林檎ってなに?」
「生命の内部は神秘、つまり宇宙なのさ」
「林檎に中身があるなんて誰が言ったの?」
「あいつの話はやめてくれ、反吐が出る」
「す

もっとみる

オメラス

冬を越えてしまった昆虫が静かに息を引き取った夏

世界で一人だけ、夢から醒める方法を知ってしまったみたいに

私を他人事にしたのはきっと私だった

ひしゃげた空き缶の中身

不眠症の小鳥の舌

それから

あなたの裸足に、いまでも貼り付いて一緒に歩いている

炭酸飲料と雑草の匂いが夕暮れを遅くする

「うつくしい」を知ったのは確かこのくらいの時期だった

死体の

もっとみる

singularity

鉄の子宮に背中をぶつけたら
喉の奥から螺子が飛び出した
皮膚を貼り付けたタブレット端末が
臍の緒に陰部を挿されて嬌声をあげる
ブロック状のバースデーケーキ
針金のらせん
電子の肉声
完璧な不完全
誕生日はそんなようなもので出来ていた
どうしても柔らかさが欲しくて
バターナイフを指に押し当てる
セラミックの傷口から#FF0000
血のいろはどこだ、と古代文字が叫ぶ
意思を持つグレイ・グーはまぐわって

もっとみる

ガット・ユー

肌を灼く

銀の朝焼けが狂おしく

胸骨を打ちすえる

夜と海から生まれた砂浜で

…君の足跡は小さい

白い帽子の下

淡い珊瑚のくちびる

その中にとじこめた色は

まだ箱の中の猫

「あれは皮肉だよ

猫は必ず死んでしまうのさ」

レース編みの波打ち際

点滅する思い上がり

、あるいは

帽子の下の亡骸

くちびるが薄くひらかれる

もっとみる

わたしよ

わたしよ

わたしだったものよ

どこへ行ってしまったのか

四月の椿が落ちた朝に

松葉に千切られた風が笑う午後に

太陽を灰色の海が呑んだ夕に

潰れた紙コップがやけに目についた夜に

もしかして、死んでしまったのか

わたしよ

わたしだったものよ

おれんじの頬にくちづけた春に

髪を切った夏に

光りかたを思い出した秋に

それと引き換

もっとみる

キメラ

千の掌で顔に触れ

万の足で土を踏む

かつては

成功者であり

失敗者であり

奪う者であり

奪われる者であった

凹と凸

滑らかさとざらつき

固さと柔らかさ

牙と羽毛を持つ

私は

私たちは

たった一人であり

一つの生物がみる、無数の夢

テセウスの船

"Who the hell is he?"

有機質に取って代わる無機質
隊列は
交わり
蠢き
かたちを変える
古い設計図の羊皮紙は燃え落ちた
もとの顏がどんなだったかも解らない
怒りは
痛みは
( )は
確かにここに
ここに
在ったのに
気付けば、波音は遠く

問1.記憶は誰のものか

一歩
一歩
進む毎
ミクロの肉が削げ落ちて
それを
歴史、と
呼んだりもする
仕方ないの

もっとみる