第10話 顧客候補=全上場企業3,769社の分析が完了。
2022年の2月末に現職を辞めて、会社をつくることにした。
企業のIR資料を中心とした制作会社だ。
本作は、リアルタイムで創業を目指すそんな僕自身の物語。
まもなく完了する法人登記を前に、長らく取り組んでいたデータベースの大枠が完成した。
全上場企業におけるIR資料のクリエイティブ度を独自に測定し、まとめたものだ。
どのような気持ちで取り組み、どのような学びがあったのか。
今回は僕ではなく、長いこと分析作業に苦心してきた友井に元原稿を書いてもらった。
データベースについては第7話をご参照あれ。
現職を辞めて起業することにした流れや、登場人物(僕と友井)、事業領域決定の経緯についてはこれまでの記事を読んでもらえると嬉しい。
2月27日。全上場企業の簡易分析が完了
2022年2月27日。
全企業の簡易分析を終えた。
このデータベースは、どれだけ各社のIR資料が”クリエイティブ”なのか。業績に左右されない、内容の分かりやすさと見せ方のクリエイティビティをフラットに測定するためのものだ。
一周終えたが、意外にも達成感はそこまでなく、「これを自分たちの強みに、これから事業を創っていこう」という“ワクワク感”が1番大きかった気がする。
今回は、ここまでデータベース作成を進めてきた友井が、全然働いてくれない新実に代わって執筆することになった。
大学の卒論以来、ロクに文章を書いてこなかったので、幾分稚拙な文章だと思うがご容赦いただけると幸いである。
せっかくの初登場となるので簡単な自己紹介でもしようかと思ったが、これまでの記事で僕のイメージは何となく伝わっている気がするのでここでは省略する。
そのイメージが合っているのかは何とも言えない。もし合っていなかったら新実のせいにしておこう。
さて。早速、本題に入っていく。
あまり複雑にせず、以下の2点についてシンプルに書いていこうと思う。
本当は分析真っ只中の感情や気持ちなどを書けると“友井ならでは”の記事になったと思うが、控えめに言って思い出したくないので心情の部分は割愛する。
①データベースから見えてきたこと
10月半ばから約4カ月半、ほぼ毎日取り組んできたデータベース作成だが、振り返ってみると「やって本当に良かった」と思っている。
新実が一石五鳥と言っていた通り、それだけの気づきがあった。
気づいたことを大別すると、(1)作成の過程で学んだこと、(2)作成を終えて分かったことの2つがある。
(1)作成の過程で学んだこと
多くの資料を見ていく中で、当然ながら全上場企業の事業内容やビジネスモデルを学ぶことができた。
加えて、
「この部分、もっとシンプルな表現にした方が分かりやすいな」
「せっかくいいこと書いているのに、色数が多過ぎてもったいない……」
「この部分こそ投資家が知りたい箇所なのに内容が薄すぎる!」など、
表現に関する改善点や多くの企業にとって課題となり得る箇所の情報をたくさんストックできたのはとても大きかった。
さらに好事例については
「このスライド、○○社のあのスライドを応用したらもっと分かりやすくなりそうだな」
といったように新実と壁打ちをすることで、“良いIRの型”のようなものが何となく頭にできあがっていった。
「このIR資料は、どうしたらより良くなるか?」
そう問い続けながら完遂し切った、IR資料の分析。
この過程自体が僕らの血肉となり、今後の武器になっていくのではないか。
そんなことを思わずにいられないくらいには手応えを感じた作業だった。
(2)作成を終えて分かったこと
すべての企業のデータを見たからこそ、僕たちの事業のベースとなるIRの現状が、定量的に掴めたことは非常に大きい。
独自で算出した「IR総合点」を企業ごとに算出したところ、得点と企業数の分布は以下のような感じに。
総合点の算出ロジックは仮で設定したもので今後ブラッシュアップしていくが、少なくとも30点以下の企業には何かしら改善の余地があり、そのような企業が全体の80%を占めること分かった。
要するに、大半の企業がIRへの取り組み次第であっという間に抜きん出ることができるという状況であり、僕らが標榜する”ワクワクであふれる投資環境の実現”に向けて、企業のIRはまだまだポテンシャルだらけということだ。
②これからデータベースをどのように活用していくか
さて。データベースの大枠が完成したとはいえ、それに満足している暇はまったくない。
これからデータベースをどのように活用していくか。進めていきたいこと・進めなければならないことはたくさんある。
(1)総合点の算出ロジック改定とランキング作成
前述したIR総合点だが、現状は複雑な数式を用いず、各項目の単純和となっている。
そのため、単にツールのバリエーションが豊富な企業が上位にきやすい様相だ。
しかしながら「ツールの数が多い」=「優れたIR活動」というわけでは決してない。
媒体同士の相乗効果があれば「1+1」が5にでも10にでもなるし、反対に”とりあえず作っただけの資料"がたくさんあったとて、投資家に対する適正なアプローチにつながるとは限らない。
コミュニケーションの手数が多い企業を評価することも大事だが、一つ一つのクオリティや媒体同士の相乗効果を反映できる計算式のロジックを組み立てていくことが重要となる。
そのあたりをクリアにして、納得感のある“IRの良し悪し”を定義したい。
その上で、業界別やツールの種類別のランキングなどを作っていけたら面白いと思っている。
(2)データのブラッシュアップ:良い資料をより緻密に評価
IR総合点を算出するためには、計算式のロジックもそうだが、大前提として「良い資料に高い点数がついている」ということが必須である。そのためにはデータのブラッシュアップが欠かせない。
そしてこの作業については、新実の領域だ。
正直なところ、コツコツ型の僕とは違い、「嫌なことは人に押し付ける」「気分が乗らないとやらない」「夏休みの宿題はいつやるかではなく、やらないで済む方法を考える」という彼の性格から、「本当に精密評価をやるのか……?」という疑問が1日に10回は浮かんでいる。
だがその一方で、新実は「1度やると言ったことを反故にする」みたいなカッコ悪いことを絶対にしないやつということも分かっているので、のんびり待つことにしている。
気分は天才漫画家の担当編集だ。そろそろ原稿を寄越しなさい。
(3)ターゲティング:注力していく企業の選定
4月の創業と年内の案件確保に向けて、このデータベースをもとにアプローチする企業を選定していく必要がある。
企業の規模で絞るのか、業界で絞るのか。例えば、決算報告書には力を入れているけど統合報告書はないような企業にアプローチするのも効果的だろう。
ターゲットの選定やアプローチの戦略を検討する際に、すべての企業を並べて比較できるのがデータベースを持っている強みだ。
競合と比べて弱い部分を改善していく提案をするのもありだし、どこも似たような(面白みのない)ツールを作っている業界に対して「切り口を変えて独自性を出しませんか?」とアプローチするのもよい。
ある程度ターゲットを絞った上で営業をかけ、感触を確かめていくのが現段階では最善ではないかと我々は考えている。
(ここまで友井・著)
ここからは再び天才漫画家が筆を執る。ペンを握るのほうがいいか。
今回は趣を変えて、友井に原稿を執筆してもらった。
結構まじめに書いてもらっていると思う。
もっと道中の苦しみの声であふれる文章を期待していたのに、「思い出したくない」の一言で片付けられていて、ちょっと笑った。
あと文章のテイストも僕のそれに寄せてきていたのも個人的にはツボだった。
最後のまとめとなるが、友井の尽力もあってついにデータベースの大枠が完成した。しかし大切なのはこれからだ。
当たり前なのかもしれないが、法人登記すら完了していない僕たちにはまだ、IR関連の実績はない。
だからこそ、このデータベースが僕らの武器となり得る。
生かすも殺すも、自分たち次第。
手元にあるこのエクセルにまとめられた4,000社弱のリスト。
その中から「ワクワクであふれる投資環境を実現したい」という僕らの想いに共感してくれるような、そしてそこに向かってクリエイティブなIR資料を一緒につくりたいと思ってくれるような企業に出会えたら、この上なく嬉しいだろう。
ひとまずおつかれ、友井!
TN
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