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一風堂の麺が原料!エコなクラフトビール「KAEDAMA ALE」ができるまで

食品を扱う会社にとって大きな課題である食品の廃棄。一風堂も例外ではなく、フードロスに関する課題を日々感じてきました。廃棄を最小限にする努力は続けていますが、どうしても、ゼロにはできない。特に製麺の過程で出てしまう麺の端材はラーメンには使えないので、有意義な活用方法を模索していました。

そんな一風堂に手を差し伸べてくれたのが、廃棄間近の食材からクラフトビールをつくるプロジェクトを進める「株式会社Beer the First」(ビアーザファースト)さんです。

「一風堂の麺で、クラフトビールをつくりませんか?」

突拍子もない提案に思えるかもしれませんが、2023年8月、これがなんと実現しました。麺の端材からつくったクラフトビールは、博多ラーメンの文化にちなんで「KAEDAMA ALE」(カエダマエール)と名付けられ、8月29日(火)から順次、国内の一風堂4店舗と一風堂オフィシャルオンラインストアにて販売されます。

2023年8月29日(火)~
一風堂 博多駅店/銀座店/イクスピアリ店/成田空港店 及び「一風堂オフィシャルオンラインストア」にて販売!(銀座店、博多駅店は8/30~)

この記事では「Beer the First」さんのこれまでの歩みと「KAEDAMA ALE」ができるまでの物語を、インタビュー形式でご紹介します。

※この記事で紹介するクラフトビールの品目はすべて、使用する副原料の都合上「発泡酒」です。

今回登場するメンバー

「Beer the First」始動!

_まず、「Beer the First」さんの始まりについて教えてください。

坂本錦一さん(以下、坂本):僕はもともと食品関係の商社に勤務していたのですが、そこでフードロス問題を目の当たりにしました。少し形が違うだけで野菜が「規格外」とされて販売できなくなってしまうなど、せっかく手間暇かけてつくったものが望んだ形で販売されないことに心苦しい気持ちになりました。

何かできないかなという想いを抱えたままコロナ初期を迎え、時間があったのでビールづくりの勉強を始めました。そこで、気になっていたフードロス問題とビールづくりを掛け合わせてみようと思い立ち、「Beer the First」を起業しました。

_すごい行動力ですね。起業前から、ビール造りをできる環境は整っていたのでしょうか?

坂本:いいえ。日本では個人で許可なくビールを醸造することができないので、まず醸造所を探すことになります。いろいろ探し回った結果、現在もお世話になっている千葉県柏市の「こまいぬブルワリー」さんにビールづくりを手伝っていただくことになりました。

柏「こまいぬブルワリー」との出会い

_たくさんある醸造所の中から「こまいぬブルワリー」さんを選んだ理由は何ですか?

坂本:第一に、ビールを常温保管するための加熱処理ができる設備があることと、醸造所の規模が大きすぎないことが決め手でした。加えて、自社農園をお持ちで、環境に優しいアクションに積極的に取り組まれている姿からも「Beer the First」と共通する価値観をお持ちだと思い、親和性を感じました。

_「こまいぬブルワリー」さんでもフードロス削減に取り組まれているのですか?内容をぜひ教えてください。

丹羽岳悠さん(以下、丹羽)はい。コロナ禍では、学校休校で余ってしまった給食のコッペパンを使用してアップサイクルビールをつくりました。また、普通だと棄ててしまうことの多い麦芽の搾りかす(モルトかす)は、畑にまいて再利用しています。自社農園ではホップや麦など作物の栽培をしていますが、食育活動の一環として地域の子どもたちの収穫体験などにも活用されているんですよ。

_とても素敵な取り組みですね。そもそもビールは、どのようにつくるのでしょうか?

ビールづくりの基本

丹羽:一般的なビールのつくり方を紹介しますね。

ビールづくりの3ステップ(イメージ)

①仕込み
まず、麦芽からビールの素になる麦汁を作ります。うちでは、この麦汁をろ過するときにできるモルトかすを畑にまいて再利用しています。次にホップを入れ、グツグツ煮ます。これが柑橘っぽい香りのもとになるものです。

麦芽を投入するようす
ぐるぐるかき混ぜながら麦汁をつくります

②発酵
冷却したら、1~2週間の発酵期間に入ります。麦芽などの糖分を酵母が食べ、アルコールと炭酸を生み出します。クラフトビールの場合はあまり炭酸は要らないので、抜いてしまうことが多いです。

炭酸を抜くようす

③熟成
数週間~1か月間タンクの中で熟成させることで味にまとまりができ、ようやく美味しいビールが出来上がります。タンク間の移動は管を通して行われるので、わざわざ取り出す必要はありませんよ。

「こまいぬブルワリー」では、左側のタンクで仕込み、右側のタンクで発酵・熟成させます

_よく分かりました!「Beer the First」さんでは、これまでにどんなビールをつくってきましたか?

坂本:最初につくったのは、廃棄間近のパンからつくるアップサイクルビールです。2022年夏には東京都の企画に応募して、乾パンなどの災害備蓄品を使ったビールをつくりました。

_その後、一風堂との企画の前にもラーメンの麺を使ったビールづくりに初挑戦されたと聞きました。どんなきっかけがあったのでしょうか?

坂本:ラーメンフリークの山川さんとの出会いです!

山川大介さん(以下、山川):はい(笑)。僕はラーメンもビールも大好きなのですが、ビールは基本的に炭水化物を原料にしているので、ラーメンの麺でも理論上はビールがつくれるはずだと思って提案しました。「パンでできるなら、ラーメンの麺からもつくれるんじゃない?」という感じで。

中華麺を使ったクラフトビールに初挑戦

_中華麺からつくるとなると、かんすいの香りがするビールができるのでしょうか?

丹羽:いいえ、案外そんなことはないんですよ。ただ、パンと違って水分量が多くないので下処理に手間がかかるのと、糖化する前はやはりかんすい独特の香りがしていたので、僕も初めは「これ、なんとかなるのかな?」と心配になるほどでした。でも、糖化していくと不思議とかんすいの香りは気にならなくなって。微生物の力を借りながら味わいを整えていくのも、クラフトビールの面白さだと思います。

山川:そうして完成したのが、東京浅草の有名製麺所の麺からつくった「華麺舞踏会」です。僕らが知る限りでは「日本初」の中華麺からつくったビールなんですよ。

クラウドファンディングで支援総額目標200%達成の大成功!
中華麺が原料の「華麺舞踏会」

ダメもとで一風堂に声を掛けてみた!

_一風堂との協業の始まりについて教えてください。

坂本:大手ラーメン企業さんと力を合わせてクラフトビールをもっと流行らせたいなと思い、2022年12月27日、恐る恐る一風堂さんにご提案のメールをお送りしました。「年末の忙しい時期だし、反応もらえないかもしれないな」と思っていた矢先、安部さんから好意的なお返事をいただけて。自分から提案しておいてなんですが、とても驚きました。

安部英作さん(以下、安部):会社として最近は特にサステナブルな取り組みに積極的に動いているのと、個人的にクラフトビールが大好きなのもあって、心動かされるご提案でした。僕自身、昔ハワイに住んでいた時に趣味でビールをつくっていたくらいビール醸造には興味があって。まずはうちのグループ会社「渡辺製麺」で製造している一風堂のお土産ラーメンの麺の端材を使って、一緒にビールつくってみようということになりました。

【補足】アメリカでは家庭でのビールの醸造が認められています。日本ではNGですのでご注意を!

_そうして意気投合したわけですね。「KAEDAMA ALE」がどんなふうに出来上がったのか教えてください。

「KAEDAMA ALE」共同開発

坂本:2023年の2月頃から開発がスタートしたのですが、味の方向性を決めるために、安部さんが送ってくれた一風堂のチャーシューを食べながら試作を繰り返しました。チャーシューとのペアリングがしっくり来たのが、XPA(エクストラペールエール)というビアスタイル。早速、安部さんにも試飲してもらいました。

深みのあるオレンジっぽい色合いの「KAEDAMA ALE」
※店舗で提供される際のグラスとは異なります

_安部さん、初めて飲んだ印象は、どうでしたか?

安部:ほどよく柑橘の香りがして、爽やかでおいしいねとコメントしました。うちの事務所メンバーにも試飲してもらいましたが、大好評でしたよ。自信を持って売り出せる商品にしっかり仕上がっていました。

坂本:そう言っていただけて光栄です。実は僕らの中でも、「数々の試作品の中で一番おいしい!」と感じるほどの手ごたえがあったので、ビール好きの安部さんにも気に入っていただけて安心しましたし、より一層の自信がつきました。

_一風堂との出会いからおよそ9か月越しに、ついに「KAEDAMA ALE」が販売されますね。味わいについて詳しく教えてください。

「KAEDAMA ALE」どんな味?

山川:ラーメンと最高に合うボディー感とキレが特長です。一風堂のとんこつスープはまろやかでコク深い味わいなので、それに負けないしっかりしたボディー感を目指しました。安部さんのコメントにもあった通りホップ由来の柑橘の香りが爽やかで、後味すっきりお楽しみいただけます。ぜひ一風堂の白丸や赤丸と一緒に飲んでみてほしいですね。

おすすめの楽しみ方は「とんこつラーメンと一緒に」
※店舗で提供される際のグラスとは異なります

_例えばどんな人に、どんなシーンで飲んでほしいと思いますか?

山川:一風堂さんは誰もが知るラーメンブランドですが、知られすぎていて逆に特別な理由がないと行かなかったり、「そういえばもう何年も行ってないな」という人も中にはいるのかなと思います。そんな方々にとって「KAEDAMA ALE」が一風堂に行ってみようと思うきっかけになれば嬉しいです。もちろん常連さんにとっても、いつもと違う楽しみ方ができて新鮮ですよね。

坂本:いいですね。あとは、家族連れの親御さんだったり、サラリーマンの方だったり、休日や仕事帰りに「自分へのご褒美」として堪能してほしいですね。それに、今回の販売店舗は海外からのお客様も多いと聞いています。クラフトビールは欧米をはじめとした世界中で大人気なので、「KAEDAMA ALE」でJapan Qualityを体感していただければ嬉しいです。「ラーメン」の認知も世界中で高まっていますし、ラーメンからつくった珍しいお酒として楽しんでもらえるのではないかと期待しています。

「SDGs」をもっと「楽しめるもの」に

_「Beer the First」さんの新たな挑戦について教えてください。

内間悠人さん(以下、内間):2023年8月に「UTAGE BREWING」というクラフトビールブランドを立ち上げました。一風堂さんとのコラボも、このブランド名を使って進めています。「UTAGE BREWING」の由来は日本語の「宴」。様々なシーンで「乾杯」する日本の文化の素晴らしさやクラフトビールの楽しさをこの名前に込めました。これまでと同様にサステナブルなクラフトビールへの挑戦を続けて、より多くの人にフードロス問題に興味を持っていただけるように活動を続けていきます。

_今後、何か新しい取り組みを始める構想はありますか?

坂本:あくまでアイデアなのですが、ビールの原料に関しては、炭水化物のみでなくフルーツやスイーツ系にもチャレンジしたいなと思っています。あくまで空想の段階ですが、例えば・・・プリンとか。賞味期限間近の商品を使えたら、更にフードロス削減に貢献できると思っています。

あとは、一風堂さんと一緒にクラフトビールづくりのワークショップもやってみたいなと思っています。コアなビールファンだけじゃなく、一般的なお客さんにクラフトビールをもっと好きになってほしくて。

山川:ビールづくり体験、大人の趣味みたいでオシャレですね。一風堂さんと一緒なら、取っ付きにくい印象があるかもしれないクラフトビールをみんなが楽しめるものにできるような気がします。ラーメン好きだけどビールはそこまで好きじゃない、またはその逆の人にもアプローチできそうです。

内間:そうですね。「SDGs」というと硬そうに聞こえてハードルの高さを感じてしまう人もいるかと思います。一見難しそうなテーマでも、体験してみると身近に感じてもらえると思うので「おいしく楽しく、環境に優しく」をセットで学べる機会を皆さまにお届けしたいです。

_皆さん、ありがとうございました!

★おまけ★メンバーおすすめクラフトビール

”ビアスタイル「銘柄」ー 醸造所(拠点)” の順に記載

▼坂本さん
Sour IPA「MIRRORSHIELD」ー HUDSON VALLEY BREWERY (New York, USA)

▼内間さん
Stout「GARGERY」ー 株式会社ビアスタイル21(東京都小金井市)

▼山川さん
Jucy Pale Ale「#9 Hazy」 ー NUMBER NINE BREWERY(神奈川県横浜市)

▼丹羽さん
Barley Wine「将門火群」ー こまいぬブルワリー(千葉県柏市)

▼安部さん
IPA「GOOSE IPA」ー GOOSE ISLAND(Chicago, USA)

おすすめクラフトビール 味わい比較表

最後まで読んでいただきありがとうございました。「KAEDAMA ALE」は
2023年8月29日(火)から、一風堂 博多駅店(8/30発売)/銀座店(8/30発売)/イクスピアリ店/成田空港店 及び「一風堂オフィシャルオンラインストア」にて販売いたします。麺からつくった後味すっきりの特別なクラフトビールを、ぜひラーメンと一緒にお楽しみください。

皆さまのご来店を、心よりお待ちしております!

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