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「すべての子供たちが自分で居場所を見つけられる」今よりちょっといい未来への挑戦

a cup of life 第三弾は島藤安奈さん。

安奈さんとは中学時代からの付き合いになる。
自身がよく遊んでいた国際交流団体仲間として、
年齢立場関係なく仲良くしてくれた大好きな先輩だ。

その関係はというと、いわゆるちょっとしたワル仲間、
みたいなつながりだった。
よく先生に怒られていたこともいい思い出だ。
その時から誰にでもフラットな態度で、
あっけらかんとフレンドリーに接する安奈さんは、
私にとって尊敬する先輩でもあり、
気の置けない仲間でもあった。

現在は大阪大学大学院人間科学研究科に属し、
自閉症や発達障害の子供に係る研究を行いながら、
自身で「レモネードキッズ」というビジネススキル教育コンテンツを展開している、研究職の中では異色の存在。

私の周りでも、いい意味でなりふり構わずチャレンジしている女性は、
安奈さん以外にいないと思っている。
話を聞くたびに私は、ワクワクしていた。
彼女が世の中という大海原を、
なんの地図も無しに突き進んでいく航路は、
いったいどこにどのように進んでいるのか、
どんな物語を紡ぎ続けているのか、と。
冒険映画を見ているような気持になるのだ。
そして応援したくなる、とても。

彼女の生き方は、清く潔く、それでいて美しい。

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そして今回は改めて、
安奈さんの人生を紐解きたいとお願いをし、
このインタビューに至った。

「私は私。そう思って生きてるから。」
人並み以上に、波乱万丈な人生を歩んできた彼女の瞳には、
静かに、でもたしかに、情熱の炎がゆらめいていた。

まずはじめに、彼女がライフワークとして取り組んでいる、
レモネードキッズについて少し説明したい。

レモネードキッズとは、凸凹を持つ子供たちを対象として
レモネードの販売を通じ、これからの社会で大切となるスキルやマインドを学ぶ総合的体験型コンテンツ。

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レモネードキッズ®︎は2018年より大阪大学Innovators’ Clubから始まりました。子どもたちがレモネード屋さんの経営者となって、事業計画書の作成→銀行融資交渉→仕入れ→レモネードの販売→返済→利益計算までの一連のお金の流れを楽しく学んでいます。単なる職業体験プログラムではなく、ニューロ・ダイバーシティ (発達障害) 研究の知見から、数学的思考×創造力×道徳心=世界を牽引するレモネードキッズたちを育てています。また、大学生が子どもたちと一緒に学ぶことで、コミュニケーション能力・ファシリテーション能力を身に付ける場でもあります。(公式WEBページより)

その学ぶスキルは、数学的思考、論理的思考、創造力、発想力、マーケティングなどと、多種多様だ。企画の随所に工夫を凝らして、そこここに学びの種をまいている。
現在は大阪大学でのラボを拠点とし、自治体の子供会、グランフロント慶應義塾大学など、様々な場でワークショップを開催、またDMMオンラインサロンも開設している。

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「レモネードキッズはコンテンツではなくて、社会をよりよくするソーシャルラボっていうイメージかな。単なる起業家マインドを育てるとかではなくて、貧困、不登校など、いろんな課題にスポットを当てていきたいと思ってる。今の研究は、ギフテッドとかイノベーターと言っているけど、そういう人間に育てるために、どうすればいいのかってあまり明確な答えが出ていなくて。どんな子供たちがイノベーターになるかのイメージが曖昧なのね。私の研究の仮説からだけど、イノベーターの源泉となる子供は、教室では少し浮いている子たちじゃないかと思っているのね。発達障害などを持っている子供たちにこそ埋もれているんじゃないかって。」

ああ、社会なんだなと気づく。彼女のフィールドは社会なのだ。
社会を良くしたいのだ。
視座の高さを言葉の端々で感じる。

「こういったギフテッドという言葉は、アメリカのエリート教育の中で生まれた言葉で。ロシアとアメリカが冷戦していた時代に、ロシアへの勝利を目指してIQを軸としてギフテッドの教育を進めてきた経緯があるのね。でも本来、イノベーターはIQだけでは測られないはずだと思っていて。想像力とIQの2軸が必要だと、私の中では仮説を立てている。だから、レモネードキッズでは、両輪で能力を伸ばせるコンテンツにしていきたいと思って、作りこんでいるかな。」

これだけ聞いていると少し小難しい話になってしまいそうだが、
追ってこんなたとえ話がある、とわかりやすく説明をしてくれた。

「スイミーっていう話があるじゃない?あの、スイミーみたいな子を世の中に増やしたいと思ってる。どういう意味かっていうと、最後にはスイミーは「じぶんが目になるよ」といったけれど、発達障害を持つ子って、そういう子たちばかりではないの。スイミーのようになれる子ばかりではないのね。誰かに役割を与えられるんじゃなくて、自分で想像力を働かせて、自分で自分の居場所を見つけてスイミーみたいになっていける仕組みをつくっていきたい。きっと、日本という場所でこれから彼・彼女らが生きていくためには必要なスキルだから。」

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起業家マインドを育てる、という言葉をコンセプトに置くレモネードキッズだが、どうやらそのマインドとは少し世間一般のイメージとは違うような気がする。

「ああ、わたしってここにいてもいいんだ。」


そう思える、人間の本質的な安心感や生きがいを創り出す。
彼女の目的地は成功じゃない、今より少し「いい未来」だ。


「レモネードキッズが第三の学校になってほしい」
ある不登校児の一言が突き動かした一歩


ただひとつ気になることがあった。

そもそもなぜこの活動を、ここまで精力的に続けられるのか、
わたしは不思議で仕方なかった。
いつ見ても歩みを止めない彼女を突き動かすエンジンとは何なのか。

それは、ある不登校の中学生から言われた、ひとことだった。
ある日友人から、「親族に不登校の子がいるので一度話をして欲しい。」と相談された。

しかしそこで、彼女は大きな衝撃を受ける。

「不登校している子って社会性がなくて、勉強についていけないっていうイメージがあったけど、全くそんなことが無かったの。門凄く賢かった。全てロジカルに話せる子で。且つ礼儀もすごく正しかった。たぶんだけど、自分があまりにも大人すぎて、周りが陳腐に見えていたんだと思う。学校の会話とか環境、勉強に意味を見いだせていなかったんだと思って。自宅では、学校に行かない時間を活用してプログラミングもできるくらい賢い子だったのね。それで”そんなパターンの子供もいたのか!自分が今まで思っていた不登校の子どもと、全然ちがう。”と自分の持っていた勝手な先入観に気づいて。イノベーターの素質がある子は、こうやって社会に埋もれているんだなって思ったの。」


そんな彼に、レモネードキッズへの運営側としての参加をしないかと声をかけた。
その理由にも「ああなるほど」と思わず唸ってしまう意思がある。


「たったひとりだけど、どうにかしてあげたいって。でも上から目線では言いたくなかった。一人の人間に対して決定的なことは言えないでしょ?だから、まずはレモネードキッズに参加して自分の居場所を見つけてほしいって思って、彼には声をかけたかな。」


つまり大学生と同じ立場で、参加者である小学校低学年の子供たちにアドバイスをするという役割だ。当日、彼の動きはほぼ完ぺき。大学生にも劣らない、意見を述べる姿に島藤さんは感嘆した。


レモネードキッズへの参加からしばらくしたある日、不登校児のN君からラインが入った。
そこにはこんな言葉が書いてあった。

「ぼく、夢を持ちました。だから、中学校に行きます!」

この報告を受けた瞬間、涙が出そうになったと島藤さんは話す。

大学生の中でgoogleに就職したロボット研究をしていた男性に憧れて、ロボット研究をする夢ができたのかなと思った。高校は高等専門学校にいきたいと、中学校に復帰することを決めた、という報告だった。

「もう本当に嬉しくて。高校への推薦状にレモネードキッズをボランティア活動として、書いていいですか?ってこの前も来たの。めっちゃ嬉しくて、かけることは全部書いていいよ!!って(笑)私の名前も調べたらある程度は実績もネットに出てくるし、いかようにも使って!!って(笑)」


こういう時折出る大阪のおばちゃん的なフレンドリーさというか、
溢れんばかりの愛嬌みたいなものが、私は大好きだ。
これが彼女の魅力を形づくる素地だな、と話しながら感じる。


「一個の事例だけど、ああ、たぶんこの積み重ねだなって。あとは、レモネードキッズみたいに間接的なフォローでいいのかなとも思えたな。どこまでいっても、彼らは私とは違う人生を歩んでるんだからさ。あくまでも私ができることは、彼らがスイミーになれるきっかけを掴める環境を整えることだと思ったの。」

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それから2年、いまようやくやっと形になろうとしている。
人が動く理由なんて、複雑すぎれば動かない。

いたってシンプルなのだ。


どん底経験から感じた
「踏ん張ることのできる場所」の必要性


もう一つ、彼女を突き動かし続けるエンジンとなっているのが、
自分自身の経験だ。

経験というものは強い。見る、聞く、触る、何よりも強い。
ルーツというものは、この経験にえらく左右されるが、
経験は人それぞれ何一つとして同じものを携えている人はいない。
経験をその時感じた感情までを指すならば、なおさらだ。

彼女の経験は、壮絶だった。


「私自身高校3年生の時、どん底を経験していたことも大きい。社会の底辺にいるような気分で、5年間くらい本当に悩んでたからね。ちょうどそのときに、お母さんも起業して急に母子家庭なったギャップ。でも、なんか絶対にマイナスなものがあっても、次に絶対プラスが来ると信じてるから。その時に、あきらめないでやっていく大切さを痛感したからね。だから、レモネードキッズは絶対に参加者からお金を取らないことにしてる。そこが目的じゃないからね。」


「レモネードキッズでは、絶対に参加者からお金を取らない。」
これはひとつの彼女自身への契り、みたいなものなのだろう。

「レモネードキッズでは。数学的思考を養う場、工夫をする場、などいろんな要素を体験できる場としているのね。そこで、子供がどこかの要素にフィットしたときは、絶対に褒めるようにしてる。子供たちが頑張ってやった先に自分でできることを見つけた際に「いいね!」と応援してくれる場としてる。レモネードキッズは〇〇みたいな成功者を育成するための場ではなくて、子供がいろんな出会いを通して、たまたま起業しました、なのか、たまたま会社員になりました、と自分の道を歩んでいく一つの点となるような場にしていきたいの。これは、心理学を学んでいる身としての視点かな。」

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彼女は心理学も研究分野であるため、工学的な思考だけでなく、100%の確率では語れない部分というところも、とても感度が鋭い。


子供たちの数の分だけ、理想像があっていいと思う。よく、「どんな人材を育てようとしてるんですか」って聞かれても、「私は、ゴールは作っていません」っていうの。自分の理想像は、子供が勝手に自分で決めることだからって思う。」


世の中でいう「よい人材」とは何なのか。
「よい人材」はというと就職活動の時には企業が雇用してから扱いやすい人間、みたいな背景が見え隠れしていて、とても心がつかれた記憶がある。

そもそも、私たちは「人材」になるために生まれてきたのか。
そうではないとふと気づく。

ただ、彼女の中でもこれから必要だと考えているリーダー像はある。

「これからは共感型リーダーが必要だと思ってる。モノがありふれている中で、これ以上何かを生み出すことができないでしょ。あるもの同士をどうつなげ行くのか。昔は、牽引型のリーダーが必要だったけどね。ないところからあるものを生み出す必要があったと思っているけど今は違う。牽引型の時代のリーダーは終焉を迎えているから。牽引型というとスティーブジョブスみたいな感じ。共感型リーダーが必要とされる今、日本人の持ってるスピリットって生きてくる思う。」

ここでいう”共感”とは、2つの意味を持つ。

①感情的共感(あー、わかるわかるという感情)
②認知的共感(あの人はこういう考え方をもっているから、こういう行動をしているんだな、と相容れないけど理解できる)

共感型リーダーとは、どちらの「共感」も持っているという意味だ。

「人がついてくる人っているでしょ?「天才だ」「個性だ」だけでは、だめ。人の弱みが分からないタダの完璧な人間になっちゃうじゃん。人間味があって、弱さもあって、理解できる。リーダーシップもあって、フォロワーシップもある。発達特性の知識もきちんと持っている人っていうところも大切だよね。」

正直なところ、私はADHDっぽいところがある。
営業時代は数字にまつわるケアレスミスが多く、
毎日上司に怒鳴られていた。チェックしてもしても、
同じことを間違えてしまうのだ。自分の不甲斐なさに心底落ち込んだ。

その結果、朝ベッドから出られなくなる、みたいな経験もあった。
悩みすぎてインターネットで検索していると、
ADHDという言葉に出会い、本当に救われたことを今でもはっきりと覚えている。

「他にも悩んでいる人がいる」「自分のせいだけではない」という
居場所と逃げ場ができたことでどれだけ救われたかわからない。

そんな話をしていると、とても興味深い話が出てきた。

「少し哲学的な話になっちゃうけれど、チンパンジーの世界でもおんなじで、自閉症もいるの。ってことは、この世に、そういう人は必要ってことだと思うの。だからどんな人でも生きる意味があって生まれてきたと思ってる。でも、人間の教育の世界では、成績で図られてしまうから、そうではないスポットライトを当ててあげることが私の仕事かなと思ってる。」

ここで言えることは、
「ひとがひととして生まれてきた限り、何かしらの意味を持っている」
ということだ。

そんなことを私たちは常日頃から「何者か」になろうとしすぎるあまり、
忘れてしまう人は多い気がする。

「世界的に見るとマイクロソフトとかグーグルは発達障害の人たちを雇用しているし、フィンランドはノウハウがあるから進んでいるから、国としても雇用も多い。発達障害は30~40人クラスの中に1~2人はいるとは言われてて。自閉症の人々も増えてきているのね。でも、日本でやっていこうと思ったら、「俺、天才だ!」というだけでは日本の文化で生きていけないでしょ。だから、そこにやさしさとか共感とか、そういうものも大切にしていかないといけない。そうなったときに、道徳って大切になってくると思ってる。まあ、あとは愛嬌も大切だと思うけどね。正直、アメリカは出る杭は打たれないじゃない?でも日本は違うからね。」


いい未来は待っていても来ない。
手づくりで、創っていくんだ。


人とつねに真正面から対峙している彼女。
きっと人一倍エネルギーを毎日使っているのだろうと思う。
そこで私は「落ち込んだり、もういや!ってなったりしないんですか?」と稚拙な質問を聞いてみた。

すると意外な回答が。

「私だって落ち込んだり、悩んだりする。研究分野でも二足のわらじって言われて評価されにくいんだよね。研究っていかにロジックを立てて説明できるか、が研究なのね。でも、私がやりたいことは結果の部分が確率論でしか言えないから、研究としては確立しにくいのかもしれない。自分では社会起業家でもなくビジネスでもなく、ちょうど間なんだよね。なんでここまでできるかか、、、うーん(しばらく考え込む)正直ここまでできるのは、使命だと思う。やりたいからやる。この活動をしていることが、わたしがわたしを精一杯生きていることだから。」

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やりたいから、やる。
理由はもはやない。
生きることが、それなのだ。存在することが、それなのだ。

特に印象的だった言葉が、これ。
「人生に順番なんてないやろ。」
よく「ちょっと待つことはできないんですか?」と周囲に言われるらしい。
その時にいつも思うそうだ。

だれかのために、とかじゃない。
わたしがやりたいからやる。それで何が悪い。
順番なんて気にした時点で、やりたいことじゃない。

彼女には、沸々と湧き上がる情熱と、
誰をも包み込むやさしさが混在している。
つよさはやさしさと誰かが言ったが、
その言葉を体現するような人だ。

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みんながみんな、忘れかけている。
自分の生い立ちでの経験が、
いまの自分を形づくる。
きっとそれは誰でもそうなのだ。

だから、彼女は彼女の生い立ちで経験したことが、
ただ突き動かしているだけなのだと思う。

不可避な感情を抱き、進み続ける。
ある意味、とても本能的だなと思った。

でもこれが、大人になればなるほどできなくなる。
そこが周囲との違いだと確信した。

社会起業家でもなく大学生ベンチャー社長でもない。
「悩んでてさ、、何かいい感じの名前つけてよ!(笑)」と言っていたが、

彼女に陳腐な肩書くらいなら、ない方がよっぽどまし。と思った。

それくらい、人生は自分にわがままでいい。
肩書で収まるような人間であってたまるか。

”make lemonade out of lemons"
アメリカにはこんな言葉があるくらい。

それが、生きる礼儀ってもんだ。

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