20年前のシネマスクリーン
将人はこの巨大なシネマスクリーンを見上げるたびに同じ大きさの真っ白なキャンパスを想像する。将人は赤や青や緑のペンキをそのキャンパスに向けてぶちまけてみたかった。巨大なキャンパスの上で混ざった様々な色のペンキは、キャンパスの下に垂れ落ち、その絵画のイメージは段々と形を持ち現実的なものとして固定されるのだが、鑑賞者に取り込まれた後はそれは固形物ではなく、流動物として抽象的に再生され続けるのだ。そういう意味で絵画と映画は似ているな、と将人は思った。両者とも実体がないのではないだろ