妹が作るプリンが固い.

9歳離れた妹がいる。

今年ようやく中学1年生になり、気持ち大きめの制服に身を包んで登下校する姿は妹の成長と共にまだまだ子供であることを示唆しているようで面白い。

そんな妹は、気まぐれでスイーツを作る。おもむろにスマホでレシピを調べ、冷蔵庫から材料を取り出して台所でガチャガチャやって何かを作る姿を何度か見かける。何が彼女をそうさせるのかは未だに謎だが、ほぼ月に1回くらいのペースでそれは起こる。

つい先日もプリンを作り始めた。昼過ぎにソファでごろごろしていたかと思えばふと立ち上がりいつもの調子で冷蔵庫を開け、中から卵だの牛乳だのを取り出してガチャガチャやっていた。「また何か作り始めたな」と思いながら私は2階の自分の部屋へ向かいベッドに寝転んでスマホを眺めていた。

それから5時間くらい経ち、「ご飯できたよ~」という母の声が聞こえたので1階のリビングに行きご飯を食べた。全く知らない女優さんが超人気女優として紹介されているのを見て、最近はテレビを見る頻度が少なくなっているなあと実感する。時勢の速さに私はついていけない人間。

ご飯も食べ終わり、飲み物を取ろうと冷蔵庫を開けると、昼間に妹がガチャガチャ作っていたプリンを発見した。小さなガラスのコップを容器代わりにして作ったそのプリンには夥しい数の「す」が入っていた。手作りのプリンで「す」が入らないように作るのって結構難しいよなと思いながらも、こんなにも入るものなのかと少し驚いた。因みに「す」は気泡のこと。

ご飯に物足りなさを感じていたので妹に「このプリン食べていいか」と聞き、「いいよ」と返答が来たので食べることにした。

固い。

プリンというよりは寒天。乾燥した寒天。いや寒天はそもそも乾物か。とにかく固いのだ。3個で100円とかで売られている市販のプリンがいかにしっかりプリンであるかを感じさせる、そんなプリンだった。味は決して悪いものではないが、とにかくその固さが気になってしまいあまり美味しさを感じて食べる間もなかった。

カラメルもかかっていたのだが、こちらはこちらで甘い。私は少し焦がした感じのカラメルが好きなので茶色の水飴のような妹のカラメルは甘ったるかった。でもそんなことを気にもさせないほどプリン本体が固かった。

妹がプリンを作るのは記憶の中で3回目である。その3回私は全て食べてきたが、どのプリンも固いのである。むしろ回数を重ねるごとに強固になっているような気までする。最終的に落雁みたいな固さになるのかな。

こんな固いプリンを口に運びながら私は、妹が数年経って大きくなる頃にはこのプリンの固さも和らいでいるのだろうかと考える。中学生になれば周囲で付き合い始める子も増えるし、高校や大学に行けばもっと多くなる。学生時代にできるであろう彼氏、結婚してもつ夫や子供には、ちゃんと柔らかいプリンを作ってあげられるのだろうか。「す」が少なく、単なる茶色の水飴ではないほのかな苦みを感じるカラメルソースがかかったプリンを作れるようになっているのだろうか。

知識だったり変声期だったり見た目だったり、人の成長を感じることが出来る事象や瞬間は世の中に沢山あるけども、プリンが柔らかくなり、カラメルが苦くなった時に私は妹の成長を感じるのだと思う。でもそれに気づいたときに私は固いプリンを作っていた妹がいなくなってしまった事実に対して少しだけ悲しくなるのかもしれない。

そんな妹は最近勝手に私のヘアオイルを使っている。無断でだ。近頃髪の毛のつるつる具合が飛躍的に良くなっている。そして明らかにオイルの残量が減っている。気づいていないとでも思っているのだろうか。金払え。

髪の毛をサラサラにする前にまずプリンを柔らかくしろよという、しょうもない話。





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