見出し画像

飛び石は果たして飛んで来るのか

車に乗っていると厄介なものの一つに「飛び石」というものがあると思います。一般的に高速道路は特に飛び石が多いと言われていて、自分の車のバンパーや時にはフロントガラスにまで傷がつくという現象が起こります。

飛び石の正体を知ると面白いのですが、実は飛び石なるものを生み出しているのは意外にも自分自身です

どういうことかと言いますと、別に前方を走る車のタイヤが仮に小石を蹴り上げたとしても、それは本来はただの小石にすぎませんから、なんでもない話です。でもあなた自身がその小石に向かってヘビー級ボクサーが放つカウンターパンチのごとく100km/hでぶつかっていけば、その小石が小さな鉄砲玉のようになり、バンパーに傷が生まれます。

仮に時速100km/h、ないしは120km/hで高速道路を2時間走れば、2時間に渡って車体は前方から来る小石に向かって突っ込み続けるわけですから当然車体が傷つく確率は高くなります。「ゴルフに出かけるたびにバンパーに飛び石の傷がつく」、と言っている人はつまり道中そのくらいのスピードで走り続けているが故にある意味当然の結果として車体に傷を生むわけですね。

自分自身の日常生活も、まるで高速道路を走るが如く勢いがあると、案外自らが小石にぶつかって行っているせいでナマ傷が絶えない、痛みが生まれる、というような事は仕事や暮らしの中でも多々あるかなと思います。

しかしながら話を戻すと高速道路を50km/hで走ることはもはや許されないかもしれません(法律的には走れますが)。どうしてもその時の空気は周りの100、120km/hについていかないといけないのかもしれません。この場合は自らがそうすることによって代償を払っているという意識と、バンパーにたとえ傷がついたとしても、それはあくまでも「自分がつけている」という認識を持っておくことが大切かなと僕は思います。

僕は幸い自分の愛車で事故を起こしたことはありませんが、仕事用の車は忙しかったり、無理にお客さんの予定を詰め込んだりして随分と罰金や、時にちょっとした(ドア全交換になった)擦り傷もつけています。

でもある時免停を恩赦される一日講習で一問も間違えずに免許を返却してもらえた時「これは自分が運転に向いてないとか、うまく行っていないのではないな、代償を支払っているんだな」と気がつきました。別にそうして働く中で貧しくなっているわけではなく、むしろその逆のことが自分の人生には起こっていたからです。ですから随分と弁償や罰金や修理代の請求書は届きましたが、これはあくまでも自分が時速120km/hで走ることを選んでいるから付く傷だ、支払っている代償だ、と起こってしまったことには嘆かないようにしていました。

しかしながら当然、いつも、いつまでもそれでいいか?というとやはりそうではないと思います。やはり120km/hは飛ばしすぎなのです。比喩的に人生に当てはめても120km/hの人生は事故の危険性と隣り合わせです。

遅すぎてエンストしても困りますがその中間、傷まない程度、というゾーンはきっとあるだろうなと思います。僕は昔、120km/hを出し続けられることが優れているときっとどこかで思っていたのかもしれませんが、今はそうは思いません。

皆さんもお身体に気をつけて、あまり自らが作り出す飛び石にぶつかり続けないように、長い距離を、程よい速度で安全に走り続けてくださることを願います。


( 文・写真 / 西澤伊織 )

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?