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自分が何者か説明できない大人 〜自分の役割を探すことが目的になっている例〜

問:「貴方は自分がどんな人だと思いますか?」

この質問は、面接で問われるこのとの多い質問だと思います。
また、形は変わりますが、新しい環境に身を置くことになった時、周囲に自己紹介をする場面においても、この問の答えを提示することになるのではないでしょうか。

私はこの質問を投げかけれる度に、頭を抱えてしまいます。
それは、純粋に自分がどんな人なのかを自分で理解していないからです。
なのでせいぜい、自分の経歴や特技を答えることしかできません。

自分が成せることは何か。自分の目標は何か。
そういった、自分の内面を言葉にすることがとても難しく感じます。

この質問は、歳を重ねれば重ねるほど、求められる答えの質が高くなっていきます。
そもそもとして、迷いなく答えらえる人はきっと多くはないでしょう。
多くの時間をかけ、己と向き合う中で答えを探していくものだと思います。

しかしながら、私の場合はとっかかりさえ見出せません。
この質問を投げかけられると途端に思考は曇り、何の言葉もヒントも出てこないのです。

なぜこの問いに答えられないのか。

これはあくまでも私の例ですが、答えられない理由は恐らく、私は他人の顔色を伺って行動しているからだと思います。

「今自分の目の前にいる人は、何を望んでいるのだろうか」私はそればかりを推測し、それに応えようとする事に注力してしまいます。
私は、相手が何を求めているのかに焦点を当てて考えているのだと思います。

もし、質問者が求めている回答ができなかったら……。もし、質問者の期待に答えられなかったら……。
私はその場に相応しくない人間だから、その場から去らなければならない。
自分の居場所を作るために、その場に相応しい振る舞いをしなければいけない。
そんな恐怖心から、必死に相手を観察して、その場その場で適当だと思われる無難な回答しかできないのです。

自分の能力に則した回答ではないので、いつも全力で行動しなければ、有言実行になりません。
それでは力尽きてしまうのも時間の問題。
そう。その結果が、休職中の今の私なのです。

答えられる人は何を考えているのか。

では、最初の問いに答えられる人はどのような事を考えているのでしょう。
もちろん、これから述べることは全ての人に当てはまるわけではありませんので、その点はご理解いただければと思います。

私は、答えられる人は、自分の役割に焦点を当てて考えているのだと思います。

その質問の意図は、その人の人格や能力を知るためでもあり、また質問者が属する組織や集団においてどのような事を果たしたいのかを尋ねる所にもあると思います。
ですから、この問いには、自分はこのような役割を果たすことができるだろうという自信や推測、あるいは目標が答えとなるのではないでしょうか。

心理学的観点から、違いを考える。

自分の役割を探し、選択していく行為は心理学においては人生において重要な段階であると言われています。

1959年にエリク・エリクソンは、人生を8つの時期に分類し、それぞれの時期に直面する心理的な課題があると論じています。

この記事のテーマである、「貴方は自分がどんな人だと思いますか?」の問いも、この中でも取り上げられている課題に深く関連しています。
それは、青年期における課題の、「自我同一性vs同一性拡散」です。

自分とはどんな存在なのか、自分に与えられた役割とはなんなのか、自問自答を重ね、自分という存在を受け入れることで自分の役割(やるべきこと、やりたいこと等)を見出すことが可能になることを、自我同一性と言います。
「アイデンティティの確立」がこの状態を指します。

エリクソンの発達課題では、各段階に“vs”との表記がありますが、これは、各発達課題を達成できなかった場合にどのような状態に陥るのかを表しています。

青年期の発達課題では、「同一性拡散」となります。
これは、自分の個性や過去を受け入れることができず、自分はどういった存在なのか、自分の役割を見出す事が出来ない状態を表します。

この記事のテーマに沿って考えるならば、この問いに答えられる人は、「自我同一性」を果たせた人であり、答えられない私は、「同一性拡散」に陥っていると言えるでしょう。

しかし、私の場合には、もう一つ注目すべき点があります。

それは、「相手の期待に応えなければならない」、「さもなくば、去らなければならない」というこだわりや義務感、強迫観念などに近い思考がある事です。

同一性拡散の状態に陥った際に、不安や焦りなどを抱える場合があります。
しかし、私の場合は、それとは少し毛色が異なった反応を示しているように感じます。

おそらく、青年期の発達課題以外にも、答えられない要因があると思います。
それについては、次回の記事で考察してきたいと思います。

長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
他の記事も読んでいただけると嬉しいです。

参考

・青年期における多元的な自己と
アイデンティティ形成に関する研究の動向と展望
木谷 智子・岡本 祐子 
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/3/38994/20160129144411179618/BullGradSchEduc-HiroshimaUniv-Part3_64_113.pdf


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