凝り性のいたスト解禁
やってはいけないことなのは知っていました。
僕の様な人間が、手を付けてはいけないと言う事は解っていたんです。大変なことが起きるとわかっていながら、気が付くと僕は手を染めていました。
そして案の定、恐れていた事態に陥りました。
後悔と同時に体に駆け巡る快楽に、僕はおぼれてしまいました。そこまで分かっていながらも、手を付けずにはいられませんでした。生きる為には、仕方のない事だったんです。
満を持して私。
いただきストリートを、買ってしまいました。
皆様ご存じでしょうか。ダビスタやRPGツクールなど、テレビゲーム創世記を支えたアスキーから1作目が発売された伝説のボードゲーム形式のテレビゲーム、いただきストリートでございます。
ゲーム的には要はすごろくでして、サイコロを振って止まったマスの物件を買ってお金を増やすという、いわばモノポリーの様なゲームなんですね。物件を大きくしてプレイヤーからお金を奪ったりして、目標金額を目指すという形式なんですけど、俺は昔からいたストがまぁー好きやったんですよ。
はじめてやったのは、スーパーファミコンのいたスト2でございました。小学生だった私は、周りの友達が公園で走り回っている中、一人部屋に籠ってゲーム内で金策に走る毎日でした。私が大きな犯罪を犯していたら、メディアが喜ぶ要素しかない、クレイジーな幼少期でございます。
あの頃に戻ってはいけない。
だけどいたストはやりたい。
気が付くと僕は、クレジットカードを握りしめて、プレイステーションの前に座っていました。
そこからはあまり覚えていません。気づいたらコンピューター相手に金をむしり取り、目標金額を超えているのにゴールをせず、破産させまくって笑っておりました。人殺しゲームのコンプライアンスを叫ぶ前に、金をむしり取って笑っている俺のようなやつを、一旦取り締まった方が良いんじゃないですかね。
ただなにがヤバいって、俺はすぐにガチ勢になっちゃうのが良くないんですよ。
それこそここでも紹介しましたデトロイトなんて、何周したかわかりませんし、最近だとアンダーテールとかBGM聞くだけで場所と敵が解るようになっちゃいましたからね。とにかくのめり込み過ぎちゃうんですわ。
でもこれらはまだ終わりがある分まだましですよ。問題なのは終わりが無いゲームなんですね。ぷよぷよみたいな一生できちゃうゲームにはまってしまうと、生活が終わってしまうんですわ。
ってかもう遅いんすよ。自分でもヤバいと思いますよ。
だってヤバいと思いません?俺今、スマホで攻略動画見ながら、パソコンでいたストの勉強しながら、テレビでいたストしてるんすよ?
おかあさん!!!
オタクのアラサーの息子さん!!
デイトレーダー環境でいたストしてますよ!!!
まぁ破滅の道を突き進む毎日ではございますけど、このガチ勢性格が最近とりわけ問題になるのが桃鉄でしてね。桃鉄ガチ勢になってしまったことで、たまにめんどくさいことになることがあるんですよ。
ってのも桃鉄って、パーティーゲームじゃないですか。みんなで集まってワイワイ言いながら、ゆるっと楽しむゲームでしょ。勝ち負けも大事ですけど、なんとなく盛り上がる為のもんじゃないですか。
それこそこの前、久々にばぁちゃんちに行きまして、親戚一同が集まる会があったんですね。多分俺の知らないグループラインで「ワン呼ぶ?」「言い出しっぺやからお前が言えよw」「ダルw」みたいな会話を両親とばぁちゃんで繰り広げてたと思いますが、一応呼ばれて行ってきたんですね。
とりあえず飯食ってちょっと暇になったとき、親戚の大学生の男の子がスイッチを取り出したんですわ。
「桃鉄持ってきたから、みんなでやろうや!」
その子は、中高大とずっと運動部で髪の毛を明るく染めたヤンキーっぽい子なんですね。
「ワン君もやろうやw俺、友達とやって負けたことないからw」
ヘラヘラしながらコントローラーを差し出すヤンキー親戚。
そして俺は思っちゃうんです。
桃鉄で負けを知らないような経験値で、俺を倒すだと…?
俺も頭ではわかってるんです。これは大学生の年下の男の子が、盛り上がるかなぁと思って持ってきてくれたゲームなんです。この子は友達とやって自分が強いと思っているし、この子を勝たせてあげるのが大人としての役目なんです。
分かっているんです。
わかっているんですが、思っちゃうんです。
初手札幌で房総半島を捨てる奴は、俺の敵じゃない。と。
俺も手加減はしているつもりです。桃鉄は友情破壊ゲームと言われるくらい、のめり込んでしまうものですし、桃鉄が原因で、親戚からオヤジ狩りされたくないですもん。俺陰キャやし、多分泣きながらマイナンバーカード渡しちゃうし。
でもみるみる周りが引いていくのが解るんですよ。あまりカードを見られないようにカード画面はほとんど表示させませんし、100%以上の物件と独占が簡単な都市は大体覚えてますし、カード駅で徳政令カード爆買いしますし、明らかに動きが違うんですよ。
でも大人やから、佐多ぐるはしないとか、刀狩は一枚までとか、ちゃんと手加減もしてますよ。してるんですが。
「やったw冬眠カードやw使っちゃおっかなぁーw」
こんなこと言われたら、仕方が無いんですよ。
冬眠カードを使う?
コイツもう、殺しちゃっていいかな?
気が付けば、10年目に2位と100億以上の差がついていました。
親戚の男の子は冬眠カードを使ったばっかりに、指定うんちで空路に取り残され、キングボンビーを三回受け、ダントツの最下位になっていました。
「まだ10億円カード引いて佐多グルしたら勝てるで。」
そんな僕の声は誰にも届いていません。一緒にゲームをしていた妹は、スマホにかじりついていました。きっとグループラインで「親の顔が見てみたい」「ワシじゃwまじで呼ぶんじゃなかったw」なんて楽しんでいるのでしょう。
ばぁちゃんちには、ただただ俺に対する嫌悪感が渦巻くだけでございました。
そして今。
俺はいたストにのめり込んでいます。
またしても俺は、イカレた怪物になるのではないかと、恐ろしくもワクワクしながら、三画面プレイを続ける今日この頃でございます。
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