よしもと漫才劇場が現代の桃源郷だった
音楽好き、お笑い好きを自称しております私でございますが、恥ずかしながら初めて行ってまいりましたよ。
若手芸人の聖地、よしもと漫才劇場に。
よしもと漫才劇場
お笑い好きでない方には、それほどなじみのない施設なのかもしれませんが、よしもと漫才劇場というのはですね、ミルクボーイ・見取り図をはじめとした、若手芸人が活躍する難波の劇場なんですよ。
よしもとの劇場というとなんばグランド花月が有名ですけど、こっちはベテランの劇場って感じなんですよ。演目に落語も入ってますし、トミーズだったりベテランの漫才師が出演する劇場なんですね。
んでNGKの向かいにあるのがよしもと漫才劇場でして、平日には出演権をかけて超若手がオーディションライブをやっていたり、テレビで見たことがないような芸人が、日夜切磋琢磨している場所が、この漫劇といわれるところなんですよ。
俺はさ、はじめ行こうと思った時は、チケットの購入に失敗しましてですね。土日のライブがすべて完売してて、いけなかったんですよ。
どうも漫劇って、月の半ばくらいに来月の前売り券が一斉に発売されるらしくてですね、人気のライブって発売日に買わんと行かれへんのですよ。とりわけ土日のライブは出演者も豪華やからさ、思い付きではなかなか行けへんみたいなんですよね。
行けないってなると、余計行きたくなってきましてね。とりあえず行きたいライブだけチェックでございますよ。
俺はミルクボーイと見取り図が見たかったからさ、二組が出るライブを確認しておいて、前売り発売日に即購入でございますよ。後はファミマで発券だけ済ませて、当日を待つばかりでございます。
ちょっと気まずいソロ男子勢
そして当日。
チケットを握りしめてひとり漫劇に向かうわけでございます。んでなんとなくわかってた事なんすけど、お笑いのライブに行く人って圧倒的に女性が多いんですよ。
まず上がっていくエレベータの中は、全員女の人なんですよ。
しかも結構カワイイ女の子が多くてさ、貼ってあるポスターを見て、「ラニーノーズ!!」ってテンション上がってはるんですよ。
上に上がって並んでる人を見ても9割が女性でさ、ソロの男なんてまじで俺以外いなかったですよ。
気まずいったらありゃせんのよな。
女性下着コーナーに迷い込んだ時くらい、きょろきょろしちゃうもん。
でも会場に入った瞬間。
そんな不安は一気に払拭されることになります。
なんてったって、Youtubeとかで死ぬほど見てたあのセットが、生で目の前にあるんですからね。
漫劇の前では恥じらいは無力
俺が入ったのが開演の10分前くらいやったんですけど、席に着いた瞬間から女性ばっかりの恥ずかしさなんて吹っ飛んでしまっております。
テレビで見た、Youtubeで見た、あの漫才の背景としておなじみのあのセットが、目の前にあるんですよ。
アニメ好きがやる聖地巡礼ってこんな気持ちなんやと、漫劇で感動してまいましたよ。しかも今から、俺が狂ったように映像で見て、崇め奉っている芸人さんたちが、目の前に現れるわけでございます。もうワクワクが止まらんのよな。
ほんで待ってる間、漫劇のリーフレットを見ながら待ってたんやけど、漫劇ってさ、価格破壊が半端ねぇんよな。
今回俺が行ったライブがさ、ミルクボーイと見取り図の他にも、ABCお笑いグランプリで優勝したコウテイとか、M-1決勝経験もあるからし蓮根、他にもプラスマイナス、ニッポンの社長、滝音などなど、テレビで見たことある芸人が、12組も出るんですね。
それで前売り券が、2800円ですからね。
えげつないでしょ?
音楽のライブだったら、売れてないバンドでもドリンク代入れて3000円は最低しますからね。
しかもこれが、漫劇で言う一番高いライブなんですよ。
どうもランクが3種類分かれてるみたいでしてね、一番安いのだと1000円でお笑いが見れちゃうんですわ。
それが翔LIVEつって、平日に超若手が出る前売り1000円のライブみたいなんですね。
そこに、ちょっとテレビに出るような芸人が入ると、極LIVEになって前売りが1500円になるっぽいんよな。
ほんでその上が、テレビでよくネタをしてる売れっ子を集めた、よしもと漫才ライブ/よしもとお笑いライブで前売り2500円になってさ、さらに超売れっ子を集めたものが、超よしもとお笑いライブになって前売り2800円になるっぽいんですね。
俺が今回行ったのは超よしもとお笑いライブですから、一番グレードが高いみたいなんですけど、それでも2800円は破格すぎるでしょ。M-1ファイナリストの漫才を何組も見れて、テレビに出てる芸能人を生で見れて、トリキのにわとりパーティーより安いんすからね。
そんなことを思いながら待っていると、暗転して漫才が始まる訳でございます。
生の漫才は、極上
ライブの構成は、演芸みたいなコーナーがあって、漫才・新喜劇ときて休憩をはさんでまた漫才って感じやったんですけど、メインの漫才がもう半端ないったらありゃせんのよな。
ただ正直、俺が座った席はあんまりよく無かったんですよ。
場所的には見やすい良い位置やったんやけどさ、後ろにカップルが座っててその男がずーっとうっせぇんよ。
始めの演芸コーナーで芸人が出てきたら、「チェリー大作戦出てるやん。ネタおもろいで」とか、なんかずーっとしゃべっとるんですわ。
いや、ここに来てる奴はみんな知ってるんよ。
漫才のためにわざわざ一カ月前から予約する人で、チェリー大作戦の宗安を知らん人なんておらんやないですか。ここはお茶の間じゃないんやから。
そんなことを思って、ちょっと不安に思ってみ出したんすけどね、いざ漫才が始まってまうと、そんなん関係なかったんすよね。
後ろの男はずーっとなんか言うてるんですわ。一発目コウテイやったんですけど、しょっぱな、「あのネタかー」って言うてるんは聞こえてきましたよ。
基本ネタ中ずっとなんか言うてましたけど、そんなん気にならないくらい、生の漫才ってパワーがすごいんよな。面白すぎるんすよ。
それは俺がお笑いが大好き過ぎて、生で芸人が見れただけで感動しすぎているってのもあるんすよ。
月並みですけど画面越しに見る芸人ってどこか遠くの存在で、生で見る芸人って近くにいるような感じがする訳ですよ。ってか芸人を神格化しちゃってるから、「実在するんだ!」とすら思ってますからね。しかもその神達が、今目の前で、この劇場の中にいる200人くらいの人の為だけに漫才をしている。しかもそこに俺が入ってるんですから。感動せずにはいられんですわね。
はじめ周りが女性ばっかりやからさ、大声で笑うの恥ずかしいな、とかちょっと思ってましたよ。
でも、そんなん考える暇なんてなかったんすよね。
テレビで何度となく見たことあるネタやのに、初見の時より笑ってまいました。
同じ空間の破壊力
見取り図盛山の、生ツッコミに感動したり、プラスマイナスの掛け合いに腹がちぎれるほど笑ったり、滝音のネタを見ながら俺の脳内で応援上映みたいにツッコミをハモってみたりしながら、本当に最高の時間が流れていきました。
やっぱり実際に劇場に行かないとわからない事ってあるんやと思ったんすけど、例えば男性ウケ、女性ウケって結構明確に分かれるもんなんですね。
それこそ、ラニーノーズとかからし蓮根とかが出てくると、会場がちょっと沸くんですよ。
お客さんの9割が若い女性やから、女性人気があるコンビは会場全体が明るくなるんですわ。出囃子で軽く踊ってる女の子とかめっちゃいますし、出てきた瞬間、会場全体が少し前のめりになるような空気感があるんですよね。
一方空気が変わったのは、ニッポンの社長。
ニッポンの社長のネタがはじまるとさ、この会場こんなに男おった?って思うほど、笑い声が低いんすわ。
会場から、地鳴りみたいな笑い声が鳴り止まんのですよ。もちろん俺も、腹ちぎれるくらい笑いましたし。
女性もちゃんと笑ってるんやけどさ、いかんせん男の笑い声が一番聞こえてきて、結構はっきり男女差って出るんやなって思ったんすよね。
もう一つ思ったんが、同じ空間にいることの破壊力って半端ないんやなって事なんですよ。
特に思ったんがミルクボーイの漫才なんですけどね、やってたネタは湿布で正直何十回と見たネタなんですよ。前に紹介もさせてもらったおやすみミルクボーイでもやってたネタでしてね、見すぎて展開も内容もほぼ覚えてもうてる漫才なんですよ。次に来るボケも、次のツッコミも、展開全部わかってもうてるのに死ぬほど笑えるんですよね。
これが、同じ空間にいることの破壊力やと思ったんですよ。笑いを作ってる芸人と、見てる僕たち。同じ空気を吸ってるから、面白さが増してるんやと。
まず生とテレビの一番の違いって、やっぱ迫力なんすよね。
声の強弱、高さ、響き等々、テレビでは聞きやすく調整されてるものがなくなるから、それが迫力になって面白さを倍増させるんですわ。それこそミルクボーイの漫才も、クールな駒場と内海のツッコミの大声って、テレビで見るのと迫力が全然違ってましてね、生で見ると5倍は面白いんですよね。
そこに同じ空間って要素が足されることで、劇場独特の最高の笑いが生まれるんやと思ったんですよ。
お笑いはフリが大事って言いますけど、フリって要は空気やないですか。ネタとして空気を作ってるから、理屈としてはテレビでも劇場でもやっていることが一緒なら、作ってる空気も同じにはなりますよ。ただ、面白い空気を肌で感じるか、ソファーで寝転がってテレビで感じるかって、やっぱりイコールでは無かったんすよ。肌で感じる面白い空気感って、なににも変えられないもんやったんですよね。
M-1でナイツはなわが、「誰がやっても面白くて、その二人がやると一番面白いというのが、ネタとして一番優れている」ってことをミルクボーイに講評してましたけど、「その二人がやることで面白い」の本質は、生で見ない事には分からんのやと思ったんですわ。
いくらテレビでお笑いを見ても、生で見ないと本当の面白さは2割も分からんのやろうと、そう思ったんですよね。
漫才劇場に住みたい。
俺は漫劇に初めて行って、ここに住みたいなと思いました。
漫劇には笑いの空気が満ちているので、理屈じゃなくただただ笑えて、考える隙を与えることなく、ひたすらに頭に面白いを詰め込んでくれる、現代の桃源郷のような場所でございました。
しかもそれが3000円。
逆に行かない理由って、どこにあるんですかね。
だから皆さま、いったん漫才劇場に行ってみて、頭に面白いを無理やり詰め込まれる幸せを、感じていただきたいと思います。
ちなみに、来月度の前売り券発売は明日3/14の10時でございます。
それでは来月、漫劇で会いましょう。