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面倒な人から見た「お子様ランチ」

「俺ってめんどくせぇ奴やな。」僕は自分自身に対して、たまに、しばしば、時より、よく、思う。一日に2回くらいは「やっぱ俺めんどい奴やな」と思っている。自他ともに認める「めんどくさい人」である。

自分がめんどくさいと思うポイントはたくさんあるのだが、特によく感じるのは、自分の妙な細かさである。それは、整理整頓やレイアウトなどの細かさなどではなく、ちょっとした言葉の言い回しに対して引っかかることがまぁまぁあるのだ。

noteでも書いた、「ワオキツネザルの『ワオ』ってなんや」といった疑問など、その典型的なものである。


記事としてあげれば「ワオキツネザルのワオが、不思議なので調べてみました!」といったような、ちょっとしたハウツー系の記事になって、まだ見てられるはずだ。さすがにこのタイトルを見て「何がワオだ!!前歯へし折るぞ!」とぶちぎれる人はいないだろう。せいぜい「しょうもな…お前は黙って納税だけしとけ。」くらいの、批判を受けるレベルだろう。

ただ、これが日常会話なんかに飛び出してくると、話は変わってくる。それもこういったものを思いつくのは、人と話している時なのである。

想像してほしい。喫茶店で「最近なんかした?」といった、ありふれた会話をしているシーン。仮にあなたが、動物園に行って動物がかわいかったという話をしたかったとしよう。

「パンダがコロコロしててかわいかった!」「ペンギンの赤ちゃんがいた!」「キリンのぼーっとした顔が好き!」そんな動物たちのかわいらしさを、存分に話したい一幕。その中で、「ワオキツネザルもいて、すごいかわいかった!」と一言付け足した場合。


「ワオキツネザルが、すごいかわいかった!」

「ワオ…?」

「そう!ワオキツネザルがかわいくて!!」

「ワオ……?」

「う…うん…でね!!ほかにもパンダがいて!」

「ワオ………」

「うん…ワオキツネザルもかわいかったけど、パンダがね!」

「ワオキツネザルのワオって、なんなん?」

「知らないけど、でもパンダが!」

「ワオ………」


すこぶる、ウザいのだ。

キレてぶん殴らっても、殴った側に情状酌量の余地が生まれるほど、ウザいのだ。



ただ気になってしまうと、言わずにはいられない性格なのである。どうしても言わないと気が済まないのだ。オヤジギャグの上位互換のめんどくささを兼ね備えているのである。

そんな僕が先日、友達の夫婦と子供と4人でご飯を食べに行った。


友達夫婦は、僕と同じ年で30歳、4歳になる男の子の子供がいる。土曜日の夕方にファミレスに入って、子供にちょっとしたお菓子を渡して、笑顔で店内に入った。久しぶりの子供に、僕も少し優しい気持ちになってくる。

こんな性格ではあるが、僕は子供が大好きだ。無垢に話をしてくれるところ、変に気を使うこともなく面白い・つまらないを顔で表してくれるところ、それでいて変に気を使ってくれたりするやさしさ、すべてがかわいらしく思える。その子は人見知りもほとんどなく、よくしゃべってくれる子だったので、より一層かわいらしく感じた。

「犬井おっちゃんは、ハンバーグにしよかな。」

わざわざそんなことを口に出し足りしながら、子供のいる空間を楽しむ中、その子が言ったのである。

「僕、お子様ランチ!」



お子様…ランチ…?


笑顔でメニューを指さす子供、それを笑って聞いてあげる友達夫婦。その向かいに座る僕は、頑張って笑顔を作りながらも、頭の中では騒ぎが起き始めているのだ。



お子様ランチ…?

晩飯…なのに…?



店に入ったのは夕方、僕らは夕食として今から飯を食おうとしている。にもかかわらず、この子は「お子様ランチ」を注文しようとしている。というより、店側も四六時中「お子様ランチ」を提供しているのである。

そもそも店側は、朝はモーニング、昼はランチメニューを、頼んでもないのに変化をつけて提供してきている。こっちは別に朝だからトーストを食いたいわけでも、昼だからがっつり食べたいわけでもない。がっつり食べたい朝もあるし、パンを食いたい昼もある。何ならお得だし、夜でもランチメニューを注文させてほしいくらいだ。

こうしてメニューを時間帯によって、呼び名を変えているにもかかわらず、お子様ランチだけは、夜でも「ランチ」なのである。何なら朝でもランチだ。とりあえず子供の食い物は、とりあえず「ランチ」をつけとけばいい、という投げやりにも見えなくもないネーミングなのである。




「お子様ランチじゃなくて、お子様ディナーが正解じゃない?」

僕はこの一言を、笑顔の子供にぶつけることは、結局できなかった。


子供の笑顔を守ることって、こういうことだったんですね。

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