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「夫婦」

「夫婦」を観ました、

ほぁ~。他の作品もそうだったと思うけど、ファッションでいう抜け感みたいなものが散りばめられていて、それが単純に面白いの。でもそこにしっかり意味があるから威力倍増で更に面白い。ヒゲ面にヅラ被ったお母さんは面白いし、ガチガチに重くなく観ていられるし、結果的に作品全体の説得力がマシマシって思う、、

岩井の作劇のモチーフともなり続けた「憎むべき対象」である父が肺癌で死んだ。父に付き添っていた母は医療体制を疑い、岩井は混乱する。父の死因と、外科医療や母との出会いについて取材していく。『母はなぜ、父と結婚し、父の家族に対する暴力を見ながらも離婚をしなかったのか?』『「父の死」を母と我々はどのように受けとめるのか?』現在と過去を行き来しながら、千々に乱れるそれぞれの思いを描く。


・最初の挨拶(前説)
出てきて岩井ですって名乗ったけどあなた違うじゃない、って思って、その後本人出てきて僕も岩井ですって名乗って、お客さんも笑って。それだけでも面白いけど、あ、違ってない、2人とも違ってないんだなって、あとで気づいて、おもしろい〜ってなった。

・父
当たり散らした後で指揮棒を振る父。根本宗子さんとのコメンタリーで、自室で指揮棒をフンフン言って振り回していたと言っていたのを聞いた。父のその行動を理解できるような、でも理解しきれないような。
岩井さんの演じる父が、本当に本当に暴力的なだけには私は見えなかったので(きっとその理解しきれない行動をしているからというのもあるし、無意識に自分自身の家庭とどこか重ねたり比較したりしているのもあると思う)、父を憎らしく嫌に思うだけではなく、その後も観ていた。

・母
とってもかわいらしい母。話すときに主語が抜けていて、何か言いながらノックもしないで部屋に入ってくる母。なんというか天然?しょうがないなぁって感じ。でもどこかしっかりしているところもあるような、不思議な感じ。って思ったけど、これヒゲ生やした山内圭哉さんなんだよなぁ、、、これがまたリアルにそのままの母のような女優さんだったら、作品の見え方も変わるんだろうなと思う。こういうガチガチにしてないポイントがあるから、苦しくて観れない~ってならないのかもしれない。

・結婚後の父
旦那の前で新聞を読む女房がいるか?釣った魚に餌をやる馬鹿がいるか?
台詞が合ってるかは置いといて、衝撃で、二つ目なんてもう、岩井母と同じで私も言葉が出ない状態になった。あれほど女性の時代と言っていたのに何だったの?って。母にあんな風に話しかけてたのに、、でも完全にだましていたとも思わない。いきなり両親に挨拶させてって言い出しちゃったり、ちょっと強引なところもあるけど、あー、、、なるほど。猛烈に欲しいものが手に入った時の、その後のことを思い出してみると、確かにそういうところが自分にもあった。だましていたとは思わない。

・人形の父
父だと気づかない姿になった父を、はじめは人形で表していた。どこのおばあさんかと思った、という台詞があった。変わり果てたその姿を見て、そこまでじゃないにしても、自分の先生のことを思い出した。タヌキみたいだった部活の先生が、ガンで入院して、捨てられたキツネみたいになっていた。衝撃が強すぎて、私は一言も発せなかった。姉がしっかり者で助かった…。それよりもずっと驚いたと思う。数か月入院しただけの親。

・人形から人間へ
人形はリアルだった。でも全くリアルでもない。わからない。実際あんな感じだったのか知らないし。でもそれまでの父を見ていたから、全然別人になってしまったのはわかる。だから、リアルなようなリアルでないような人形が、今度は生身の人間に変わった。ベッドから笑顔で起き上がろうとする父が起き上がれなくなる姿が、今でも思い出されてつらい。

・手術した母
父が取り入れた腹腔鏡手術。父が亡くなった後、母が体験したらしい。手術痕を見せてくる母。しれっと乳首も見せてきて、隠す。これもコメンタリー曰く、本当らしい。現実で、すごいオチ。

・感想
岩井さんの実体験をもとにつくられた作品、しかもその実体験がなかなかのものなのに、苦しくて重くて観れなくならないのは、散りばめられた(ファッションでいうところの)抜け感みたいなものがあるからなのかなと思った。ただ、例えばヒゲ面の母や、人形や、W岩井や、そういうことたちが、なんの意味もなく使われているのではなく、それぞれ使うことの意味、威力があって。うまく言えないけど、それが本当にすごいなって、純粋に思った。意識がぴしぴしって、なりました。

私は一時期精神面で不調になり、その間ドラマや映画に助けてもらった。その後自分の過去の整理できなさとか、安定感のなさを、少しずつ演劇に変えてもらっているのだけど、演劇については、実際につくることもやってみている(それまでは絵を描いたり演奏したり服をつくったりだけでした)。この前クリニックで少しずつましになっていることがあるという話をした時(役者やってる話はしてない)おかしいね~まだ何もしてないんだけどね~、、と言われて(正直焦ったけど)、あー、演劇って本当にそういう力があるのかも、と思った。

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