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【秒速5センチメートルを鑑賞して】9年前の私と

※軽いネタバレを含みます。

2022→2013

 2022年10月頭、新海誠監督作『秒速5センチメートル』を鑑賞してきた。
初のIMAX。違いがよくわからなかったので(元々絵は綺麗だし)IMAXについてはそんなに触れないと思う。
 私は自惚れながらも、新海監督の古参ファンと言えるほうだろうだと自負している。幼い誕生日プレゼントとして、昔三島でやっていた監督の展示会も行ったことがある。そんな私が初めてこの作品を鑑賞したのは、9年前の中学2年生の時だ。
 あの頃は、東京と栃木の距離のふたりの年に近くて、ふたりの恋に憧れを抱いた。同じ年なのにそんなに好きな人がいて、遠くに1人で行けてすごいな、そんな夜に1人で待ててすごいな、夜に家に帰らないなんてすごいな。
ただ絵の綺麗さに圧倒されて、純粋な恋物語として受け取ったと思う。

 さて、現在。
 23歳の女性に成長した私は、秒速を見た時何を思うのだろう。自分でも不思議に思って、鑑賞したら何か書き留めておこ〜と考えた結果、これを書いている。
 あの頃よりは知っていることが増えた頭で、大きなスクリーンで見たこの映画は、昔より格段に思うことが増え、ずっと頭が動いていた。田舎にいたあの頃は知らなかった、新宿駅の構造。いくつもの路線があって初の新宿駅で遠出は厳しいこと。(上京5年目でやっとすいすい動けるようになった)タクシー乗り場の場所や、いろんな角度から描かれているドコモタワーは、どこから見える景色なのか。小田急線豪徳寺なんていいところに住んでるんだな、とか。
 それを、今の私は知っている。

人を好きになるって純粋だったな

  23歳ともなると結婚も考える。そして、経験から好きになるための前提ラインが定まっている。相手が接客業の人に優しいか。身長は私より大きい人だと嬉しいし体系もがっしりしている人が好きだ。ただ優しいだけでは好きになれなくて、時々どきっとするような言動もしてくれて、なおかつ自立していてしっかり話し合いができる人。以上のような最低限の好きラインが決まってしまった。(書き出すとなんて贅沢なんだ)
 でも、中学生の頃は違った。お前って言われても「なんだこいつ」とはならなかったし、からかいはコミュニケーションの1つだった。経済力や自立なんて関係ないし、姿形はあまり関係なく、彼自身の性格だけから好きになれていた。遠野はその残像を追いかけている。そう思った。純粋な恋がいつまでも忘れられなくて、なにか不純物が少しでも混ざったと感じると余計にあの頃の恋が忘れられなくて、さらに残像ばかりを思い出す。その気持ちはすごく分かる。何も関係なかったからこそ純粋だったし、鮮明な恋。昔のことなんていいことばかり思い出すし。でも端からそんな遠野を見ていると、すごく気持ち悪いなと感じだ。この男はダメだ。いつまでも思い出の女に浸る男で、たぶんまだ篠原も心のどこかには自分のことがいるだろう、俺と一緒で…という気持ちが自分をつくっている。
 急に話は私の経験談になるが、中学時代の同級生に告白されたことがある。卒業して7年後、全く会っていない状態でだ。ずっとあの頃から好きだった。だから付き合ってほしい。「ずっと好きだった。」なんて素敵な言葉だろう。そんなに自分を長年好いてくれる人が他にいるだろうか、そうとも思えるだろう。
 でも、私は違った。この7年間の私をなんにも知らないのに、あの頃の私はもうどこにもいないのに、顔も体も違って、性格なんてもっと違う。それなのに、まだ中学生の私のままでいると思っているのか、成長していないと思っているのか、と思ったのだ。あとから友人に、あっけらかんと飲み会の罰ゲームだったんじゃない?と言われた。確かに、何をこんなに考えてしまったんだと思ったが、秒速を改めてみて、もしかして遠野状態だったのか…?と思い出したのだ。
 ほらね、篠原ももしかしたらこう思うかもしれないよ。

映画で見れた喜び

 新海誠監督作品は、曲が流れる瞬間が絶妙だ。今回はエンディング曲のタイミングが忘れられない。
 コンビニに遠野が入り、雑誌を眺める後ろで山崎まさよしの「One more time, One more chance」がBGMが流れている。そして、中学生時代のふたりの語りが終わり、いきなり新宿の夜景と「秒速5センチメートル」と題名が浮かぶ。鳥肌が立った。静から動へのタイミング、音のボリュームの差。「One more time, One more chance」実はエンディング曲だったんだよ~!的なサプライズ。なんとおしゃれ!なんと巧みなタイミング!しかし、なんと言っても音のボリューム差でこんなに感動が違うなんて。音を体全体で感じられる映画館ならではでないだろうか。中学生の私はTUTAYAで借りたDVDをテレビで再生して、見ていたからこんなことにも気づかず、あ~もうエンディング曲じゃん~早~良い~としか感じていなかった。

 他にも書きたいことはたくさんあった気がするが、鑑賞時に急いで書いたメモがもうないのでもう書けない。実はこれを書いている今は鑑賞から数か月経ってしまっている。その時の勢いで全て書きたかったな。
 最後に、中学生の時に見たとはいえさすがに内容は覚えてますよとどっすり席に座っていたが、気づいたら山崎まさよしが歌っていて、え⁉もう終わり⁉と、まだほんのり暖かいミルクティーを飲み干そうと急いだことに、驚きを隠せなかったことを書いておきます。
あ〜新海誠監督、最高!


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