見出し画像

【ジム・ジャームッシュ③】コーヒー&シガレッツ 「珈琲、煙草」そして「人、顔」

2/11(金・祝)公開の映画『ちょっと思い出しただけ』。ジム・ジャームッシュ『ナイト・オン・ザ・プラネット』から着想を得たクリープハイプの新曲をもとに、『くれなずめ』の松居大悟監督が書き上げた、初の完全オリジナルラブストーリー作品です。intoxicateでは1/31(月)に特別試写会を開催します。この機会に、intoxicateのバックナンバーからジャームッシュ関連の記事をnoteで公開いたします!

***

画像3

JIM JARMUSCH  ©Sara Driver

「珈琲、煙草」そして「人、顔」

text:中島ノブユキ
*2005年8月号 vol.57掲載


  嫌煙家の方! けっしてタバコを格好良く吸っている人ばかりが出て来る映画ではございません。喫煙家の方! 映画からタバコの吸い方なんて指南されたくないよ、なんて思っていませんか? この映画のタイトルはすごく単純。『コーヒー&シガレッツ』。何だか見る前に内容が分かってしまうな、と思っていました。きっと喫茶店やカフェーでぐだぐだ会話してる人々の映画なのではないかしらと思ってました。でもそのパッケージの表面に現れていたイメージとは裏腹にこの映画、“人生”なんて言うと大袈裟ですね、なんというか人間の営みの中の人知れぬ悲しみ、本人ですら気付いていないような人を妬む気持ちや思いもかけない言葉の交差、そこから匂い立つ小さな喜び、そんな事をふとした会話や散りばめられた細かいディティールで紡ぎだしたステキな短編集なのです。

 この映画、見る人によっていろんな切り口がありそう。僕は何よりアルフレッド・モリーナの出て来るエピソードが好き。A・モリーナのファンだという事もあるのだけど(映画『ブギーナイツ』のちょっと気の触れた薬の売人役はハマり過ぎ。)この話にはきちんとオチがあるし、人の気持ちの危うい所をさりげなくしかもたたみかける話術の巧みさで一気にみせている。

 監督であるジャームッシュがこの作品の冒頭を飾る短編を撮ったのが10年前。その後ライフワークのように撮り進め、全部で11の短編作品によって構成。全作品白黒でしかもシチュエーションは全て室内。この構造のストイックさ。これは作品に統一感を持たす為なのか。たまには外に出て吸おうよ、と突っ込みを入れたくなりますがそんな単調さは出演者の多彩さでカバー。トム・ウェイツ、イギー・ポップ、ロベルト・ベニーニ、先ほどのアルフレッド・モリーナ、スティーヴ・クーガン、GZA、RZA、ビル・マーレイ、ケイト・ブランシェット、ルネ・フレンチ、E・J・ロドリゲス、スティーヴン・ライト、ジョイ・リー、サンキ・リー、スティーヴ・ブシェミ、ジョー・リガノ、ヴィニー・ヴェラ、他。もう俳優からミュージシャンまで交差している様が結構楽しい。そしてジャームッシュ映画の重要な要素である音楽は思いの他さり気なくて好印象。音楽の意外性で聴かせる/魅せる、というよりしっとりと映画の内容にとけ込んでいて後からじんわり効いて来る。あそこでかかっていた音楽はなんだったっけなぁ、と思わせる感じ。冒頭にも書いたのですがこの映画見終わった後に意外な程コーヒーとタバコの印象が残らない。なぜなら全てのエピソードで登場人物が飲んだり吸ったりしていて程よく背景に沈んでいるから。そのかわり登場人物達の顔、顔、顔、そして一瞬画面を横切る煙と湯気が何故か印象に残る。



コーヒー

© Smokescreen Inc.2003 All Rights Reserved

『コーヒー&シガレッツ 』
監督:ジム・ジャームッシュ 
出演:ロベルト・ベニーニ/ジョイ・リー/ケイト・ブランシェット/トム・ウェイツ/イギー・ポップ 他
ロングライド TCBD-1147

ゴースト

©️ 1999 PLYWOOD PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

『ゴースト・ドッグ』
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:フォレスト・ウィテカー/ジョン・トーメイ/ クリフ・ゴーマン他
ロングライド TCBD-1146

コーヒー2

© Smokescreen Inc.2003 All Rights Reserved
©️ 1999 PLYWOOD PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

『ゴースト・ドッグ』+『コーヒー&シガレッツ』 Blu-rayツインパック
ロングライド TCBD-1145


【試写会情報はこちら】


画像5

★「JIM JARMUSCH Retrospective 2021」関連グッズなどはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?